ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

78/52

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もちろんヒッチコックでドキュメンタリーが撮れるのは理解できるし、入れ替えで人を待たせるとかで社会現象になったくらいは知っているので『サイコ』で解説をつくれるのも分かるんだけど、いやー、まさかあのシャワーシーンで一本撮っちゃいます? 多少はその他の点についても触れられてはいるけれども、映画のメインは例のシャワーシーンで、後半はもう延々あの短いシーンを分析分析分析しまくるだけの内容。自分はオリジナルを観ていて「これが例のシャワーシーンか。なんかすげえカット割りが細かいな。すごく君が悪くて混乱する編集だな。瞳のアップからのグルグル回転はめまいっぽくて恐いな」くらいの印象しかなかったんだけど、いやーここまで掘り下げますか。

もうさー、何より面白いのがインタビューを受けている面々で、ジャネット・リーの裸替え玉やギレルモ・デル・トロとかはよくわかる。イライジャ・ウッドも「なんで?」とは思うけど知名度はあるし、『インビテーション』監督、『ソウ』の脚本家、『ホステル』監督、『アメリカン・サイコ』の著者、えーとだんだん怪しくなってきたぞ。『D.N.A./ドクター・モローの島』の監督とか『フロム・ダスク・ティル・ドーン2』の監督とか『サイコ4』の監督とか、えーとなんなんですかこのメンツ? 挙げ句1998年版の『サイコ』スタッフまで集まっちゃってギャー!!

でもまあ当たり前なんだけどみなさん映画が大好きな人ばっかりで、3分間のシャワーシーンについて語る語る語る。あの編集はヒッチコックではなくあの監督が先だとかこのイメージは同時期のこの監督と比較されるとかそういったトリビアを交えつつ、しかし語られる視点とか語彙とかがやっぱりプロだなーと感じさせられるものばかりで、こういうドキュメンタリーを見る幸せってこういう語り口の拡充にあるよなー。あと『レイジング・ブル』にシャワーシーンのオマージュがあると知って大爆笑。いやー、やっぱスコセッシって映画好きなんだなあ。

10 クローバーフィールド・レーン

 

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こういうのって大抵「人間のほうが恐いよね」ってなる気がするんだけれどもこの作品も例に漏れないよね。終盤で突然出てくる謎の宇宙人よりジョン・グッドマンの方が全然恐い。っつーかホラーお約束で屋根を走るとか丸口表現とかどっかでみたなーという異星人描写が咄嗟の火炎瓶で倒せてしまって、いやこれどう考えてもあそこのパートやる気ないでしょ? ジョン・グッドマンを倒したと思ったらもっとスゴイのキター! とならなきゃならないところのはずだよなあ構造的には。謎の宇宙服ライクな衣装でのアクションは良かったけどね。あの衣装が謎の展開の謎の加速を大いに手助けしていると思う。

まあしかし密室パートのデキが良いかというと、うーん、はっきり良いとも言い切れないのが辛いところだよなあ。最低限の仕事はしているとは言え、「この密室シチュエーションがすごいんだよ!!」と言えるとこまではいけてない感じ。彼の言葉が本当なのか嘘なのかというあれやこれやでもうちょっと極端なことはさせても良かった気がするし、娘の嘘バレとかももうちょっとゾクゾクさせられたんじゃないのかしら。なんだかんだいっても怪しい人なのは部屋のつくり見りゃ一目で分かるしなあ。

サイダーハウス・ルール

 

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マイケル・ケインとトビー・マグワイアがズルい。ってかマイケル・ケインが死にそうで死にそうで、もう動いてるのみるだけでハラハラドキドキだもん。死に目にあえないなんてなんて残酷なんだ!

しかし脚本のつくりがちょっと見え見えすぎて、もうちょいこう奥ゆかしい感じにできなかったのかしらん。形骸化したルールとそれを踏み越えることの対立って、もう少し根深い問題のはずで、そんな簡単に結論を出されても自分は嘘くささしか感じなくてなー。っていうかこの映画にとって大変重要なモチーフである姦淫の問題についてはルール的にどのような対処をするわけでしょうか? 不倫も近親相姦もサイダーハウスのルールならオッケーなワケ? 自分で決着をつければ良い私的な問題で公的な権力の介入する場ではないと? いやまあそれもひとつの考え方だけどね。他にもそのために仕組まれたとしか思えないカバン送られて来るエピソードとか、『キングコング』と『嵐が丘』の対立とか、もうちょっとスマートにできなかったのかなあ脚本、というところがちらほら。

なんてビミョーに据わりのわるい感じはあるものの、ラストのおやすみの一言は強烈で、アレで「まあいっか」とかなってしまうのはズルい。孤児が家に帰り継承するという矛盾した結論のもつ美しさが、あの一言で見事に示されちゃうんだもんなあ。感動的でございました。

特攻サンダーボルト作戦

 

フランスが負けたりフランスがらみで飛行機トラブルだったりする映画が立て続けにやってくるのだった。ここしばらくヌーベルバーグ的な映画もちょこちょこ見ているので、フランスって面白い国だなーと思い始めている。

さて、特攻サンダーボルト作戦なんだけれども、いやーこれ時流がマジで感覚がわからん。パレスチナとイスラエルのなんやかんやはまあ一応押さえているつもりだけれど、パレスチナ解放人民戦線がハイジャックがテロがというので結構怪しくなんでドイツ人が犯行に及ぶのか全然分からんし、さらにウガンダへと到着して頭が大混乱。そもそもフランス人とイスラエル人の区別もつかないから、チャールズ・ブロンソンが何人で出てきてんのかもさーっぱりわからず混乱の極みなのだった。

にしてもこの映画、振り返って見るとドラマというドラマが少ないよなあ。顔面の力がある役者たちが断片的なエピソードでハイジャックとその急襲をやるだけ。わかりやすい構造は、飛行機で飛んでるときに議会にやきもきするヤツくらい? それでもなんか普通に面白く観れてしまうのはやっぱり顔面の力の強さだろうか。キャラクターも機長が良いところを見せたくらいでそこまで「うおーっ!」となるエピソードはないんだけどなあ。

まあしかし冷静に考えると他国の空港に無断で飛び込んで人質救出行動で空港をブッ壊して現地の兵士とも戦闘を行うってやべーな。主権の侵害も甚だしいというか。やっぱイスラエルってすげー国だわ。

でまあ、なにをおいてもラストの字幕。ストップモーションでハッピーエンドかと思いきや、圧倒的に後味の悪い字幕の衝撃が、映画の印象を全て持っていった感じがする。

ファイナル・デスティネーション

 

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わっはっはっはアホすぎる。こんなアホな映画が未だかつてあっただろうか。すげーなーたまらんなーこのアホっぷりは。

なんといってもヒロインが全然魅力的じゃなくてびっくりするよね。なんであんなに面長なの? あの感じで不思議ちゃんやられるリアリティはヤバいけど、こんなトンデモ話に突然こういうリアリティ持って来られても困るじゃん? なんか監督はこういう女性に思い入れでもあるんだろうかというくらいの不自然さを感じる。

予知能力を持って飛行機を降りた人間が逆に疑われるという序盤のヒキは大変良くて、周囲の「いやーそれ完璧に逆恨みじゃん」とか「教師としてその振る舞いはあり得ないでしょ」とかそういう不自然さを含めて有無を言わせぬ巻き込み力があって感心。でも一番ビックリしたのは、その後突然超常現象大量殺人が起こる展開で、えーそんな方向に振っていく話だったの!? 確かに突然飛行機内で巻き起こった過剰な大殺戮映像にはビックリこいたけど、こっちにアクセルべた踏みするなんて全く想像がつかなかったぜ! バスタブシーンはまだギリギリリアリティに止まってたけど、そこから先の各シーンの過剰さはギャハハハハと爆笑必至のデキで、いやここまでやってくれればもう何も文句ありません。でもコレやるんだったら敵の姿を見せちゃっても良かったのではないかなあ、と思わなくもない。なんか敵が見えないという形而上学的な設定と、このB級アクションの感じが、ビミョーにマッチング悪く思えるのだった。

突撃

 

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キューブリックは好きな監督なんだけどここら辺が抜けてた。あとは『恐怖と欲望』だけだなあ。

自分はもうとにかく『シャイニング』が好きで、カラーの作品を結構繰り返し見たりするのだけれども、だいぶ映像の作法が違ってておーっとなる。西部戦線突撃シーンの望前ボケ生かしてクレーンでカーク・ダグラス追いかけるあの生々しさったらビックリしちゃうよね。クレーンで奥行きのある戦場を見せるわかりやすいスペクタクル感も「まるでスピルバーグ見てるみたいだ!!」となるし、ってか最近『戦火の馬』見たばっかりだし、普通にオマージュされてそうだよなーと思ったら

とかすぐに見つかってやっぱそうだよなと。いやでもその映像自体はあんまりキューブリックっぽくは感じないよね。冒頭の部屋の対話シーンでのカメラも野心的だけどああいう長回し含みの動くカメラってそんなにこの監督の印象がないし。

逆に広角で塹壕の中を前後移動してスモークたいて、というのはいかにもキューブリックっぽくて笑っちゃったし今すぐステディカムあげたいくらいに思った。あとはなんと言っても銃殺シーンで、それまで極力抑えられていた左右対称の静的なカメラがああいう非人間的なシーンで切り返しでズドンと襲ってくると、いやあそれだけでもうなんか変な回路を刺激されてしまいますね。

あとはストーリーか。正直この監督の映画ってかなり超然としているというか、人間をポンと突き放した神の視点みたいなのを強く感じることが多いのだけれども、そういう意味ではワリと良心的よね。っていうかラストの歌一発でなんかよくわからんけど感動してしまう、みたいないかにもなマジックをこの監督に見せられて、えーこういうこともできるんかってかなりビックリしてしまった。

 

ゼロの未来

 

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テリー・ギリアム。『未来世紀ブラジル』の未来感はおったまげたし、甲冑武者がべかーっとなって「わっはっは最高!」となったもんだけど、それからもうだいぶ時間が経ってるわけで、ちょっとこの想像力で描かれる世界にはついていけないなあというのが正直なところ。たぶん80年代とかではこのディストピアにも説得力があったのだろうけど、2010年代には2010年代のディストピアがあって、そっちの方が余程切実でドラマティックだったりするもんだから、今更こういう問題意識を描かれてもなーという風には、思ってしまうよねえ。例えば唇が警告を発する表現とか、確かに映像的に説得力はあるんだけれども、それで描かれる光景ってやはりレトロな趣を帯びてしまうわけで。あのバーチャル世界の描き方なんかも含めて、意図的な世界のつくりではあるんだろうけど、どうにも無条件には肯定できないよなあ。

それにしても外の世界のホログラム含みの世界を見た時の心の躍らないことといったらなんなんだろう? 普通あの画を見せられたら「うおーすげー!」ってならなきゃいけないところだよねえ。まあ色々な映画ですでにそういう描写を見ていたからかも知れないけど、それにしたってなあ……。