
ハチワンダイバー コミック 全35巻完結セット (ヤングジャンプコミックス)
- 作者: 柴田ヨクサル
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/08/20
- メディア: コミック
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変な漫画!! ちょうど前後して小池重明の本を読んでたし、元奨励会員の創作もなんだかんだ触れているので、はてさてどんな話なのかしらねーと読み始めたらあまりにブッ飛んだ内容でまあ笑うよね。今の時代で真剣師をリアリティもって描けやしないのはわかるけどさー、だからといってここまでカッ飛ばしますか? その心意気や良し!
基本的に切れ負けベースの賭け将棋を舞台にすることで、対局中の会話を可能にしつつスピード感を持ち込んだのは素晴らしいよなあ。あのハッタリと勢いがなければこのトンデモなストーリーは成立しないので、そこらへん大変優れた仕掛けだなあと思いました。
しかし全体の強さのコントロールには失敗している感がかなりあって、まあ連載というのはこういうものなのだろうけど、しかしもう少しこう計算があっても良いのではないのかなーとは思う。構成的には中盤のドンドン登場人物が死んでいくパートの絶望感がヤバくて、普通は盛り上がるトーナメントパートのぬるま湯感が異常。キャラクターの死という切り札を使うタイミング、間違ってるよなあやっぱり。
それぞれのキャラクターの強さの見せ方にも問題があって、キャラクターの特殊能力の描き方が甘いよね。将棋の技術的内容に深く踏み込まないのはしょうがないのだろうけど、それならそれでもっと比喩としての表現をキャラクターごとに明確に印象づけるべきだよなあ。主人公は水の比喩を強調するほうがわかりやすいし、受け師の属性も徹底されていないし、ってか色んな人が他のキャラクターの属性をラーニングしすぎだし。無駄な格闘パートはそれはそれで愛情ダダ漏れで面白いことにはなっているけど、将棋の表現としてみたときは全然上手く噛み合ってないよね。プロ棋士の強さの見せ方も混迷を極めていて、師匠の強さがあんまり良くわかんないし、名人の出し方もかなり雑だし。全体的にプロの扱いを持て余している感じ。
でもまあ、そう言った部分の完成度はこの奇妙なライブ感とのトレードオフなんだろうなあ。そういうツッコミも含めて、コレはコレで楽しいのかもしれないと思いました。