ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ある優しき殺人者の記録

 

全編長回しだけど、いやーよく考えられてるよなあ。導入のスムーズさはまあ本当に素晴らしく、殺人者のバックグラウンドをポスター一発で示したり、あのマンションまでの道のりを電話で乗り切ったり、いやあさすが撮り慣れているなあという感じ。いや、POVと長回しは相性は良いけれどもここまで極端な作品はあまり見ないので、むしろ撮り慣れてないとできないんだろうなあこういう作品は。

ベースはマンションの上昇と共に展開していくお話で、舞台転換の困難さを意外な登場人物で補っていくのも大変良くできている。まあ日本人カップルのキャラづけがちょっと極端すぎて笑ってしまったけど、アレがないと物語を転がせないからなあ。逆に今振り返るとよくアレだけの内容でこの尺を保たせたなーと感心する。

クライマックスで天に通じてから「カメラ視点で」物語が連続していくという大変トリッキーな展開は、しかし物語の詐術にまんまと引っかかって全然不自然に感じない。「記録」がなぜ世界線を超えられるのか、みたいな所に物語的なフォローが用意されていなくても、ラストでしょうがないかーと飲み込めるマジックがあるよなあ。

こういう視点で語り口が用意できるってのは、やっぱりこのジャンルについて深く思索しているからだと思う。作品の善し悪しはとりあえず置いておいても、感心。