ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

戦時下 女性たちは動いた (1939-1945)

www.netflix.com

第1次世界大戦の前作に続き、第2次世界大戦の話。

相変わらずたくさんの名もなき女性が出てきて、それぞれ戦争に押し潰された女性にスポットを当てる、というつくりの意図は大変よくわかる。工作員に偽情報渡して攪乱させるイギリス、マジ鬼畜だなーとか、あとロシアの女性兵のエピソードだーとか、まあ色々面白い点もある。あ、この人ミケランジェロ・プロジェクトのモデルになった人だ! とか色々知識が繋がっておもしろいなーとは正直思う。

だけど、うーん、例えばアウシュビッツにフランスのユダヤ人が収容されたエピソードとか、なんでそんなに女性を強調する必要があるの? というのは感じてしまう。アウシュビッツが男性のみの悲劇として捉えられた側面ってあるの?

もちろん戦争が男性のものとして捉えられがちで、女性が歴史上果たした役割が見過ごされがちである、というのはまあわかる。パルチザンとかスパイなんかで女性が果たした役割を強調するのもわからんでもない。でも、戦争中の悲劇を女性であるが故に悲劇を引き受けてしまったのだ、みたいに語られると、うーんでも男性には男性の悲劇もあったのではないかなあ、余りにも語り口が政治的だよなあ、とそのスタンスにひいてしまうところはある。っていうか、個人のエピソードを並べるにしても、もう少し効果的に説得力のある語り方はできるんじゃないのかなー。

日本侠客伝

 

日本侠客伝

日本侠客伝

  • 発売日: 2017/02/10
  • メディア: Prime Video
 

いよっ! 健さん!! と思わず声が出てしまうのはやっぱり中島らものエッセイの影響か。エッセイの中に何度か、政治信条にかかわらず健さんの活躍には声援が上がっててそれでいいんかーい! みたいな話があったと思うんだけど、まあ確かにこりゃ声援あげちゃいますよね。我慢して我慢して爆発するいかにも日本人好みな感じの脚本。

最初は「あーそういうヤクザものねー」と思って舐めてたら、身請けのエピソードで突然キャラが立ちだしてびっくりしたよ。「あーここで別れちゃったら死ぬわーこれ死ぬしかないわー」と思ったら本当に死ぬこの欲望に忠実な展開最高ですね。その後も殴られ役が手を上げたり食客が特攻したりと見せ場満載、というか見せ場だけでこんなにストーリーを展開できるんだなーこういうエスカレートのさせかたはいいよなー。そしてやっぱりクライマックスの祭りの揃いの衣装。クライマックスにふさわしい盛り上がりで大変よろしい。

まあしかし、なんといっても高倉健の所作だよなあ。1枚羽織って小頭受けるところとかもうそれだけで最高だし、ラストの殺陣も決してスマートじゃないけれども、泥臭い迫力があってヨシ! 健さんカッコいいですわほんと。

戦時下 女性たちは動いた (1914-1918)

www.netflix.com

『未来を花束にして』のラストで、意外とフランスが女性参政権遅い感じでその理由が知りたかったんだけど、あーなるほどこういう流れがあったのね。普通歴史的には戦争によって参政権が得られるって流れかと思ったら全然そうじゃねーんだなー。いやーこういうことってあるんですねー。

第1次世界大戦中に、赤十字とかNGOっぽいものが、女性の力を原動力にして走り出したんだなーというのがなるほど納得という感じ。キュリー夫人とかレントゲン車で戦場に赴くとかなるほど偉人だなーと思った。

あと軍需工場で女工が生まれたよ、ってのは東西を問わずなのね……福利厚生しっかりしてるかと思えばそうでもないんだなあ。紡績とか軍需産業がそのまま現代の自動車産業に繋がる流れも同じなのなー。

しかしそれにしても映像の世紀って感じ。これだけ映像的な資料が残っているからこういう映画が作れるわけだよなー。動く映像で登場人物がこっちを見ているだけで全然説得力が違うワケで……改めて、記録って大変重要だと思いました。

そしてフランスはほんと不憫な子やなー。ナポレオンはいったいなんだったんだろーか。見れば見るほどフランス史を知りたくなるぜ。

マーシャル 法廷を変えた男

 

マーシャル 法廷を変えた男 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

マーシャル 法廷を変えた男 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2018/07/04
  • メディア: Blu-ray
 

公民権運動でがんばった黒人弁護士の法廷劇といういかにもアメリカ映画で撮ってそうな話。こういう出来事を物語として語り直しているのは本当にすごいなーと思う。

面白いのはマーシャルが単純なヒーローじゃなくて、見ようによってはいけ好かない傲慢な男として描かれているところ。というかこの話、どう考えても相棒のユダヤ人に感情移入するようなつくりだよねー。教会で偏見を喰らうかドキドキしているときの、見知らぬ男からのカンパだったり家族からの尊敬だったり、そういう「普通の人々の世間に抑圧される良心」のほうに焦点が当たっているのが大変よろしゅうございますね。

一方でマーシャルにもちゃんと彫り込みがあって、物語的にはあんまり意味のない流産エピソードとかが、ちゃんとキャラの弱さを描いているのがいいよねー。決して多くはないんだけれども、家族との関わりのシーンってこうやって効果的に機能させるんだなーとだいぶ納得しました。

しかし法廷劇としてはだいぶ食い足りないよなー。最後にもうひとつくらいどんでん返しがあるのかと思ったよ。いやまあそのくらいの地に足ついたリアリティでやって、むしろドラマはふたりの弁護士の方に置いてるんだろうけどねえ……

ゴリラ

 

ひでー邦題。シュワルツェネッガー全然ゴリラじゃないじゃん。めちゃくちゃスマートじゃん。スマートゴリラじゃん。いやまあ確かにそのスマートでジゴロな感じがシュワルツェネッガーに似合っているかというとそういう感じもしないけど。

面白かったのはシュワルツェネッガーが潜入捜査ってことで肉体美とかを極力隠す感じの見せ方になっているところで、バトルアクションも大男がマッスルでハッスル! って感じじゃないのにはびっくりした。びっくりしただけでそれがいいかどーかというと別だけど。これを見ると『コマンドー』って台詞回しなんか含めてシュワルツェネッガーの特長を生かすべくできてるんだなーと思いました。

っていうか一番の見所のはずの女性関係の作り方がちょーつれーよなあ。「こんな女別れちまえよ!」って入りからの二股で抱かないってあーた。いやまあ潜入捜査官だからそういう感じにしたのかもしんないけどさー、そんなん視聴者全然望まないと思うけどなー。

あとラストのあの謎感動シーンはなんだったんだろう。アレ要る?

ニュースの真相

 

ニュースの真相(字幕版)

ニュースの真相(字幕版)

  • 発売日: 2017/04/18
  • メディア: Prime Video
 

いやーすげーなーアメリカ。ジャーナリズムについてちゃんとこうやって定期的にロールモデルを示すんだもんなー。そしてそこに「ペンタゴン・ペーパーズ」みたいな単語が錦の御旗でバシッと突きつけられるんだもんなー。いやー、やっぱりすげーなー。

そしてこの事件が起こった当時は今みたいにフェイクニュースがガンガン流れるようなことはなかったのだろうけど、しかしインターネットによってそういう時代は先取りされていたんだなーというのがよくわかる。炎上で叩かれる側のしんどさみたいなのはまあ普通にきちんと拾われていてとても良いなあ。

あと「60ミニッツ」が金になって、報道がどんどん金になる番組に流れていったという流れも、まあきちんと明言されているのは良いなーと思った。公共の電波を使っているのだから、公共に奉仕しなければならない、みたいなちょー基本的なところから振り返るのはとても大事だと思う。

と、まあその作品が示す方向性みたいなのには大変感心させられるんだけれども、映画としてはうーん、だいぶ説教臭くてゲンナリしちゃうところもあるよねー。フェイクニュースやら取り沙汰されてる現在に、あんなストレートな「ドヤ!」みたいな論理展開で溜飲下げようたって無理、というかそういうわかりやすい感情的な慰撫を極大化させたのが大衆に向けたフェイクニュースでしょう。TLで流れていくコピペやマンガじゃないんだから、もっとじっくり腰を落ち着けて複雑な問題を複雑なまま提示するやり方じゃいかんかったのかなーとは正直思う。

博士と彼女のセオリー

 

『万物理論』でいーじゃんなんでこんなタイトルなの? と最初は感じたけど、見終えたらまあ確かにこういうタイトルにしたくなる気持ちもわかる。天才側を掘るのかと思ったらそっちはほどほどにして障害者とその介護みたいな大変デリケートなテーマをガンガン掘っていくのだからいやまあすごいですよね。セックスの問題にもちゃんと切り込んでいて、うーんとても良い映画でありますよねコレ。だってホーキングがALSにかかったことを明示して、それでも愛が故に結婚した女性が、長年の介護の末に別居して他の男性と家庭を築くとか、まあ本当に覚悟のいる題材だよなあ。

しかしまあ、そんなふたりの選んだ人生が尊重しなければならないものに見えるのは、やっぱりその描写が彼らの悩みをちゃんと見せているからだろうなあ。っていうか少しずつ筋力を失っていくホーキングの芝居がすげー。もちろん妻の芝居もすごいですけどね。積み重ねの末にやってきた別れのシーンはズシーンと来ちゃいますよね。

でもって車椅子に乗ったホーキングがいちいちチャーミングなのがとても良い。ギャグシーンがいちいち大爆笑だもんなあ。デイジーデイジーやられたらそれ笑うでしょ。

ラストもペン拾いから逆回転で鮮やか一本って感じ。いやーほんとイイ映画を見させていただきました。