ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

哀愁

 

哀愁 [DVD]

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いやあ、どうすんのこの話全然救われない展開なんですけどどうやったら……と思ったらマジでひどく救われない話でビビる。いやまあわかる、わかるんだけどさあそういうのがある種の感情を喚起するのは。でもさー、あんなミラクルが起こるような御守りまで持たせ解いて、哀しい話でしたはい終わり、さあ泣きなさい感動しなさいみたいなのは、だいぶ悪意を感じてしまってどうもねえ。例えば戦死のくだりなんて、もう偶然に偶然を重ねてまでああいう悲劇の舞台を整えちゃってるわけじゃないですか。そういうつくりで悲劇を演出されても、どうもこう作者の都合が見え過ぎちゃってなあ。

なんて思いながらもガッツリ見入ってしまうのは、まず何よりもビビアン・リーだよなあ。さすがにこの時代の映画って飛び飛びでしか見てないので、ビビアン・リー主演の作品ってたぶん『風と共に去りぬ』くらいしか見てないんだけど、説得力がやべーやべー。時間経過があってガラッと性格が変わって、さらにそこから希望を抱き希望を失い……という変遷をバッチリ演じていらっしゃいますね。ラストの橋の上のシーンなんかはその演出と合わせて恐ろしい迫力を感じざるを得ませんよ。

あ、あと「蛍の光」バックの蝋燭消しシーンとか、すげえ印象に残りますね。モノクロ映画だからこそかもしれないけど、ライティングってこんなこともできるのかーと感心させられます。

アメリカン・グラフィティ

 

アメリカン・グラフィティ [Blu-ray]

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教科書に載っている系だから一応見ておこうかーと思ったんだけど、いやまあさすがにすごいですねこれ。車を手に入れることイコール彼女をつくることっていうアメリカ映画にちょくちょく出てくるテーマがこれでもかと凝縮された感じ。しかもメチャクチャ説得力がある。っていうかあのカフェのライティングと車体への照り返しのかっこよさがズルいよね。あんなん見せられたらそりゃ参っちゃうよ。

一晩で様々な登場人物の視点を並列して走らせて、あるところでは交わりあるところではすれ違い、という構成も決まってるよなあ。こういうのって奇をてらった感じがしたりとか小洒落すぎたりするようなイメージがあるけれど、それぞれの視点が全く異なることもあって大変真っ当に面白い。

そして何より音楽・音楽・音楽。有名曲のオンパレードでそれだけでも幸せなんだけれども、それぞれの視点を縦横無尽に繋ぐラジオDJが主人公の最後の願いにミラクルを起こしちゃったりなんかして、いやーなんかホントに演出を見越した構成が素晴らしいなあ。ってかウルフマンって実在の人物だったのね。

にしてもすげー豪華メンバーだなあ。ジョージ・ルーカスにコッポラで、ハリソン・フォードっぽい人だなーと思ったらハリソン・フォードだったし。挙げ句なんですか、ロン・ハワードも役者として出てるんですか? いやあ、すげえなあ。

アタック・ナンバーハーフ

 

アタック・ナンバーハーフ〈デラックス版〉 [DVD]

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タイの話はちょくちょく聞くけど果たしてゲイとかトランスセクシャルがどのような意識で受け入れられているのかが全然わかんないので序盤から結構混乱する。両親が普通にゲイの息子を受け入れていてそれが全く当たり前のこととして言い訳無しで描かれるもんで結構ビビるよなー。描き方があまりにも逞しくて逆にひいてしまうところはある。

ストーリーとか映画としてのつくりは結構逆で、あーこれちょっと演出し損なってるよなーと言うところが多々ある。時間の経過はわかりづらいし監督は全く謎の存在だしギャグはまあてきとーだし、色々もっとやりようはあるでしょうという感じが終始する。ドラマとして唯一わかりやすい親へのカミングアウト話はまあ悪くないんだけどあれで一気に主人公っぽくなっちゃうのはなんともなー。逆にセンターのひとの謎の妄想シーンのどうでも良さがヤバイね。

でもこの映画で一番印象に残ったのは間違いなくラストで、おいおいコレ実話かよ! スタッフロールで実際の映像がガンガン流れるんだけど、いや映画よりも完璧に事実の方が面白いでしょうコレ。なによりちょっとだけ挟まれるバレー中の映像が素晴らしい説得力。そうだよなー映画内のバレー描写、やっぱりヌルかったよなーと気づかされてしまうよね。

フィル・ザ・ヴォイド

 

フィル・ザ・ヴォイド [DVD]

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イスラエル! のユダヤ人一家の話! わーお!

そもそも前提としてイスラエル人の暮らしとかわからんからラビってあんな重要な立ち居ちなんだーとかあんな風に金もらったりするの? とかそもそもみんな金持ってそうだよなーとか色々ある。細部があまりにも想像の外側過ぎて、画面を見ているだけでまあ大変楽しい。

楽しいのだが、基本的な話の大筋は結構クラシック、というかとんでもない見合いの話で、あーそうかーイスラエルの婚姻制度はまだ見合いに寄ってたりするのかーというのがまあ楽しい。女性が配偶者を見つけるべき存在であることがこんなに強烈に描かれている作品今時見せられると、いやービックリしちゃうよね。いやあ、世界は広いし文化は多様であるよなあ。

でまあ、この映画はそんな見合いの話に姉の存在を重ねて描くんだから、さらにエグいよね。ストーリー自体は二人の心理描写を中心に進むし、恋愛を育む様を描写しているように見せつつも、状況としてはどうしても家だのなんだのがゼロってワケにはいかないわけで。ラストの対照的なライティングの切り返しの婚姻シーンを終えてからのあの表情とか、そりゃあ思わず変な声出てしまうですよ。

ATOM

 

ATOM [Blu-ray]

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いやー、色味とかもイマイチだなーとはずっと思ってたけど、まずそもそも脚本も演出もダメだよなー。アトムの原作をちゃんと読んだことないのでどれだけ現実に忠実かは全然わかんないんだけど、アレだけわかりやすく空飛ぶユートピアと地上の人とか、人間とロボットとか、上下に人物を断絶させるポイントがあって、なおかつその間にいるアトムという大変語りやすい構造があるにもかかわらず、そこが全然これっぽっちも生きてこないんだもんなあ。子ども三人組が車でアトムを助けにやってきたときは「普通に帰れるじゃん!!」って悲鳴をあげちゃったよ。挙げ句ロボット3匹がマジで何もしてないことにメタ言及が行われたときは、オレ思わず画面に向かって「そうだよお前ら無価値だよ!」と怒鳴っちゃったもん。ピクサーとかがクソ上手い脇のキャラクターの切れ味鋭い単発ギャグを狙って、それがことごとく滑っているあの感じは、映画本編見ないと伝わらないよねえ。

っつーかさ、初めて空を飛んだときのあの描き方がまず最悪だよ。落下で自重コントロールに苦闘するのは漫画チックな動きでおっと思ったけどさ、ビルと高速の間をデススター特攻ライクに危機一髪で描かないのはマジであり得ないでしょう。あとユートピアを俯瞰する必須ショットもないしさあ……そういう映画として必要な画がひどく抜け落ちている感じ。

 

フォーリング・ダウン

 

フォーリング・ダウン [Blu-ray]

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オープニングの長回しが素晴らしくうおーすげーなーこの状況説明と思ったけど、そこから突然始まるブチギレ旅の導入がかなり素晴らしい。釣り銭をくれという導入からの私有地逆ギレと滑り出しが本当に良くできていると思う。

しかしまあ変な映画だなあ。「オレはただ家に帰りたいんだ」って動機だと普通いい話になりそうなのに、コレは完璧サイコパスの話だもんなあ。愛する子を失い妻を失い職を失った男の話、という展開は同情の余地もありそうなもんだけれどもそこら辺の共感をバッサリ切ってあっち側に行ってしまった男をほとんど共感なく描くそのスタンスがやべーな。この映画をどのポジションでどうやって観ればいいのか全然わからない感じ。

映画のもう一方には退職間際の警官のハッスルがあるわけだけれども、ラスト含めてハッピーエンドにはほど遠く、いやーなんというかそのやっぱりどうやって見れば良いのかわかんないや! ストリッパーがやってきたところで一応ちゃんと時間を割いて説明するあのキャラクターになりきれなさは、大変共感を呼びはするけれども、この映画のカウンターの重しとしてはちょっと力不足だよなあ。ってか銃を持ってない伏線をヌルッと回避してストーリーが展開したのは爆笑した。マジかあれいいのか。

いやー、ホント変な映画でした。

ピーター・ダニングの複雑な人生

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なんでこんなタイトルにしちゃったんだろ。作品の内容に迫ることを放棄して、上っ面だけをなぞってつけた邦題に見える。まあ確かに、どうやってアピールするかが難しい作品だとは思うけどさあ。っつーかなんでコレマイリスに入ってたのか自分もよくわからんし。

ピーター・ダニングという農場経営者を追いかけたドキュメンタリーなんだけど、色々あって今はひとりで人生も終わりを迎えようとしている。でまあ、農場のノウハウとか家族が家を去った下りとか事故で左手が工作機械に巻き込まれた話とかをしてピーターの一生をなんとなーく窺える内容……なんだけど、別に饒舌でもなく筋書き立ててあるわけでもないから、なんだろうなあ、ホントにリアルに隣で断片的なエピソードをぽろぽろ拾っていく感じ。

メインは農場。美しい自然。酒。あとはすげえ眠くなるBGM。こんなん寝るでしょ? 見ながら何度かウトウトしてしまったよ。でもねえ、環境映像の中に時々ハッとするような光景とかが挟まってくると、それはそれですげえ印象に残るんだよね。冒頭の羊の解体から「うおー! こうやって解体するのか!」って感じ。あとなんかよくわからないけど途中で地面に頭を擦りつけながら暴れる牛が大変印象に残った。でもアレホントになんなんでしょうか。