ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ミスター・ノーボディ

 

セルジオ・レオーネは大好きな監督なんだけど、この映画は抜けていたぜ……

とはいえ、なんか変な映画だよねコレ。セルジオ・レオーネっぽさも所々にあるんだけれども、それだけではちょっと乗り切れないところがある。っていうか、レオーネの映画ってやっぱり顔の汚さがめちゃくちゃ大事なんだなあって思ったよ。顔が汚れてるってことはその分映像に情報量があるってことで、不思議とその顔に見入って、キャラクターに感情移入しちゃうんだよね……あのクッソ長尺の顔のドアップは、その感情移入があってこそのものなんだなあ、なんてことを思いながら見たよ。

全体的に色々どーなの? というところもある映画ではあるけれども、その珍妙な味があればこそ、モリコーネの音楽が光っちゃうのめちゃくちゃ面白い。ワイルド・バンチでワルキューレの騎行が流れる度に、理屈じゃない昂ぶりとどうしようもない失笑が湧き上がっちゃうのは、いやほんと変な感覚だよなー。

あとコレ、「ウエスタン」の後にヘンリー・フォンダを迎えて撮った西部劇なのね。「ウエスタン」もだいぶ歴史の中に取り残されていく男たちの話ではあったけれども、今回は生き延びて船でヨーロッパに向かうのがなかなか面白いところだよなあ。滅びの美学……ではなく、伝説を伝説にして、しかし男は生き続ける、というのは、レオーネの意向がどれだけ入ってるのかなあ、なんてことは考えるよな。

アステロイド・シティ

 

相変わらずけったいな映画を撮るなー。いやまあ表面上だけでも面白いは面白いんだけど、メタ構造とかわざわざテレビを採用したところとかどー考えていいのかわからんといえばわからん。1950年代とか核とか科学への信奉とか、そこら辺のニュアンスは読めば色々読めそうなところではあるよなーと思うが、しかしメソッド演技がどーのこーのみたいな芝居のことをいわれると、うーんやっぱ読み方がわからんなーとは思う。

そういうのをそこまで気にし過ぎずに楽しく見られてしまうのがさらにどーなのかって感じだよな。まあ大きな話としては、死をどうやって受け入れるかって喪の仕事なワケだけれども、それがキッチリとした埋葬ではなくてユルユルと解消されてしまうのがこの監督って感じ。それがメタ構造での芝居へのスタンスに対応してたりするんやろうけど、うーん、まだ整理しきれずに頭の中でゴチャゴチャ考えてみたい感じはする。

それにしても、現実世界に出てきた役者の豪華面子に爆笑した。あの3人に指導されるとかちょっとすごすぎてむしろドン引きでしょ……

金の糸

 

金の糸(字幕版)

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  • ナナ・ジョルジャゼ
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なんか旧共産圏の国なのはわかるんだが、ジョージアって言われてもいまいちイメージが湧かないんでピンとこなかった。グルジアだとなんとなくソ連って感じはするか。ちゃんと土地のイメージを持っているのは大事だなあと思った。

しかし「金の糸」が金継ぎの話だとは思わなかったなあ。急に日本が出てきてそりゃまあビックリするよ。よく考えたら陶器自体がオリエンタルなものってこと?

あとまあ、なんとなく金の糸で過去と現在を接げないことが、アルツハイマーと関連付けられて語られるのは、ちょっと怖いなあとも思った。いやまあ、主人公も似たような年齢だし現実の認知も危ういところ有り得るのだろうし、だからふたりを隔てるのが人々との繋がり、みたいなストーリーでもあるのかもしれないけれども。

っていうか、えー!? この映画の監督、91でこれを撮ったの? いやー、すごいなあ。となるとかなり自身の経験が反映されているのだろうし、もっと国の歴史について知識があった方が面白く見られるんだろうなあ……

地獄のヒーロー

 

地獄のヒーロー

地獄のヒーロー

  • チャック・ノリス
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「チャック・ノリス vs 共産主義」を見てへーおもしれーとは思ってたんだけど、肝心のチャック・ノリスの映画ってそんなに見てないのよね。スティーブン・セガールとかもほとんど見てないので、一応押さえておかなきゃ、とは思うんだけど……

ほいでこの映画はチャック・ノリスの代名詞なワケね。 キャノン・フィルムズのドキュメンタリーもちょうど見ていたから、あーなるほどこういうノリで作品がつくられていたんだねーと納得。

しかしまあ、映画自体はそんなに特筆すべきところあるか? という感じはするかなあ。アクションもそんなに洗練されているようには思わないし、キャラクター造形も魅力的か? というとよくわからん。まあ時期的に、アメリカはベトナム戦争の傷が癒えていなかっただろうし、そういう中でこういう愛国心に訴える作品がヒットしたというのは、理屈としてはわかるけれども。

まあ、筋書きとしてはそりゃあランボーとか思い出さざるを得ないよね。ロッキーもガンガン愛国心に舵切りするわけで、やっぱり80年代のアメリカの空気ってこういう感じだったんだなーという印象で作品を見終えたのだった。

さらば、わが愛/覇王別姫

 

なんだこれ。傑作すぎるだろ。

まず同性愛を描いた作品として演出がキレキレなのがあって、随所に男根のメタファがズガンと描かれてて参っちゃうよね。煙管を口に突っ込まれるところで血が出たり、スッポンの首を斬って微笑んだりと、いやこれさすがにやり過ぎだろ!? と思っちゃいそうなシーンも、その直球の演出にただただ打ちのめされるしかない感じ。

ただすごいのは同性愛だけじゃなくて、ふたりとその周囲を巡る人間関係のドラマになっているとこだよなあ。師匠の呼び出しのやり取りはもう面白すぎて仰け反った。菊仙と蝶衣の関係の変化だけでも、ラストの破局含めて、ほんと最高に良くできてるよなあ。

またその人間関係が、中国の激動の歴史と大きく相互に関連して動いているのがめちゃくちゃ良くできている。こういうのはちゃんと歴史が頭に入っていてよかったなーって感じ。日本軍に占領された時、敵の大将を「芸術を理解する者」として描いていたところも印象深いよなあ。それと対比して文革の体制が芸術を弾圧する側になっていたのは、当事者の強い意思を感じさせられる。

で、それがさらに京劇をテーマとしたメタ構造に収まってるわけでしょ? あのラストなワケでしょ? いやー、なんだよこの神がかった脚本は……今まで見ていなかったことを激しく後悔しましたよ。すごい。

実録ブルース・リー/ドラゴンと呼ばれた男

 

これは映画なのか? テレビっぽいつくりではある。

なんか最近、世界サブカルチャー史で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」がわりと批判的な視点で語られていたのもあって、ブルース・リーのドキュメンタリーを見ると、タランティーノの演出がますます「うーん」って感じに思えてしまうな。世界サブカルチャー史では、ヒッピーが悪として描かれていたことに対する批判だったけど、ブルース・リーのこういう背景を見ると、やっぱりもうちょっと描き方はあったんじゃねーのかなあ、って感じはするよなあ。まあそもそも、ガンガン路上で道場破り仕掛けられる状況だった、というのがちょっと想像の斜め上過ぎるわけではあるけれども。

しかしまあ、迫害されていたマイノリティが夢を掴むが、その反動で精神に負担がかかり薬物で命を落とす……というストーリーにどうしてもなってしまうよなあこれは。武術を嗜んで精神修養しても、そうなってしまうんだなあ。幼い頃からショウビズの世界にいたっていう状況も、うーんいかにもスターって感じ。息子が不慮の事故で命を失ってしまうところも含めて、なんかちょっとできすぎていて怖いよねえ。

処刑人

 

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  • ショーン・パトリック・フラナリー
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わはははは、そんなのアリか。いやー、なかなか小洒落てて面白い話よねえ。時間軸をパンと飛ばして、検証の回想で事件を見せるというのは、時間軸の省略ができるし、意外なキャラクターも出せるしで、かなりイイカンジに機能していると思う。このくらいの塩梅で興味を引けたら最高よなー。

と思ったら、ラストで急にこっちに問いを投げかけてくる形になるのもなかなか気が利いていて、まあああいうのがあると「名作」の括りに入りやすそうだなあ、と謎の納得をしてしまう。あんな直接的に、視聴者に物語の結論を投げ込まれると、そりゃまあ考え込まずにはいられないよねえ。露骨だけど効く。

ノーマン・リーダスってデスストで認知して、他にあんまり印象ないなーと思ってたんだけど、なるほどこの映画を見たら印象に残るかも。他になんか見てたっけ? とおもったら、あー、ヘルヴァ・ボスにも出てたのね。さすがに声だけだとわからんわ。

まあでも役者で言えば、ウィレム・デフォーがおいしいところを持って行きすぎではあるんだけど。謎のクラシック推理からの同性愛からの女装って、いやまあ今見るとかなりステレオタイプで危なそうな感じもするけどね。まあ、FBIウィレム・デフォーならしょうがないか、という感じはある。