ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

リップヴァンウィンクルの花嫁

 

リップヴァンウィンクルの花嫁 [Blu-ray]

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あー、そういえば岩井俊二ってストーリー上手いんだった、って時々思い出させられるよね。『花とアリス』とか『Love Letter』とかでもそんな風に感じた気がする。逆にいうとこの監督の映画観るとストーリーよりも別のところが印象に残っちゃってるんだろうなあ。

しかしまあ脚本が凝りまくっているかというと全然そういうわけでもないんだよね。最初の辺りの仕掛けはまあまあ簡単に予想がつくし、後半のCoccoあたりのネタもそこまで奇抜な感じでもなくあーふむふむ納得という感じ。むしろそんなストーリーを適切な肌間隔で適切にポンポンポンと並べていけるその手管がすごいのでは。

っていうかアムロみたいな難しい立ち位置のキャラクターをちゃんと人間味持たせて共感みたいなものさえ抱くことを可能にさせちゃうそのテクニックはほんとうめえよなあ。ラブホでバトンタッチする辺りの情報公開はすげえ良い塩梅で緊張感植え付けるし、電話を受けるときのシチュエーションがいちいちキャラ立てになってるし……この立ち位置のキャラがラストで脱いでちゃんと映画にマジックが発生してるのは並の監督じゃ絶対無理だよね。

一方Coccoはドストレートを投げ込むわけで、いやーそんなベッタベタなキャラで大丈夫なんですか? というのをあのキャラ一発でオッケーにしてしまうのがおかしい。家とか一瞬探して見せちゃったりするのは卑怯すぎる。そして結婚式の下りがさらにズルい。ズルいズルいズルいズルい。世の中からちょっとだけズレてドロップアウトしたふたりがウェディングドレスで向き合って決定的なやりとりをするのをあのきゃらでーあのカメラでーあのながまわしでーあーもうほんとウメーなー。

うーん3時間堪能。良き映画でございました。大満足。

地上より永遠に

 

地上より永遠に [Blu-ray]

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エンディングの味わいが53年の映画って感じがしないのはなんでじゃろ。悲劇のエンディングがあまりドラマティックというかヒロイックじゃないからかしらねえ。いかにもドラマティックなラストではなくて、別に戻らなくていい戻り方で必然性もなく殺されてしまったから? ちょっと不条理っぽいのかしら。

まあ何はともあれシナトラがおいしすぎる。そもそもポジション的にとてもおいしい役柄のところに、突然襲いかかる理不尽な悲劇。それまでワリとまったり話が進んでどうすんだろ? と思ったけど、死亡後のラッパ吹き含めてあのエピソードで全体がぎゅっと締まった感じがする。

かーらーのー、パールハーバー。現実の映像も使われているけれども、日本兵が直接出てきたりするわけでもなく、むしろストーリーはそんな混乱した戦況を背景として主人公の悲劇を紡ぐ。ラストの船のエピソードはちょっと笑っちゃうくらいに決まってる。

しかしなんなんだろうなあ軍隊って。なんでそんなに軍隊に命を懸けるのか、イマイチよくわかんないや。ハードボイルドに己の善を貫こうとする人間がなんで自明のこととして軍に身を投じることができるのか。戦後まだ間もない時期だからリアリティがあったのかなあ。そもそも日本じゃあ軍隊がピンとこないのが原因? あんなナチュラルに不倫しちゃう辺りとかも含めて、うーんやっぱ価値観違うわ……と思わされました。

八甲田山

 

八甲田山 HDリマスター [Blu-ray]

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『デルス・ウザーラ』と『野火』を見たあとに『八甲田山』という流れが神がかってて笑う。足して二で割った感じとはこのことか。そしてまたどの映画にもなんとなーく戦争の香りが漂っているのがなんともね。っていうかデルス・ウザーラって日露戦争中の話かあ。やっぱりこの時代の監督の作品には戦争の記憶が色濃く影響していそうだよなあ。

にしても八甲田山、ストーリーはかなり単純で、後半でビックリ演出はあるけれども、基本的にはこんなんで3時間近い内容ホントに持つの? って疑問を抱く内容。なんだけれども、なんかこう仰々しい音楽流されて大自然を撮られて名優たちの男と男のセリフを聞かされて、で気付くと映画が終わってるこの感じはなんなんだろうなあ。ザ・橋本忍って感じ。あのなんかよくわからない案内役の女性のパートとかちょっと意味がわかんない説得力があってすごいよね。

まあとにもかくにも延々雪の中を歩く映画であって、漠然となんとなく事件の概要を知っているからショックはそんなにないけれど、いやあそれも逆にしんどいか。もちろん組織の失敗には辛口で、馬鹿げた思いつきで末端が苦労するいかにも日本らしい定型だけど、最後にわざわざ指揮官を生還させてから殺させるのはすごいよなあ。あれも史実を下敷きにしているのかしら。

PeakDesign エブリデイスリング10L の間仕切りが壊れた話

 

【国内正規品】PeakDesign ピークデザイン エブリデイスリング10L チャコール BSL-10-BL-1

【国内正規品】PeakDesign ピークデザイン エブリデイスリング10L チャコール BSL-10-BL-1

 

いつもこのバッグを愛用していてすごく便利。ノートPC+ミラーレスカメラ+弁当箱+諸々小物が肩掛け鞄で持ち運べて大変機能的。ベルトの長さ調節が容易で簡単に身体にフィットするのと、バッグをくるっと回してカメラを取り出すときにジッパー付きのフタがこちら側でなくあちら側にパタンと開くのが最高によろしい。あまりによろしくて年に半分以上の日はこの鞄を肩にかけている……のだけれども、酷使しすぎたのかディバイダーが壊れた。

peakdesignのカバンの最大の特徴はたぶんディバイダーこと間仕切りで、これが折れたり重なったり色んな角度に色んなトランスフォームをすることで、カメラ+カメラだったりカメラ+レンズ+レンズだったりカメラ+弁当箱だったり様々な荷物を運用することが可能。その可能性を追求すべく使って使って使いまくったら糸がほつれてその折り目がバラバラになってしまったのだった。

うーん、単品で売ってたりしないものだろうか、とAmazonで検索しても引っかからず、日本の代理販売店の銀一を覗いたけどやっぱりなくて、あー絶望かと思ったら

Replacement Flexfold Divider | Peak Design Official Site

わわ、本家で売ってる! で試しにカートに入れてみたら送料が4.99ドル。あー、思ったより全然安いじゃんそりゃ買うわ! とポチったらなんと翌々日に家に届いたfrom香港。早い。早すぎる。いやー、海外通販ってホント便利になったんですね……

 

野火

 

野火

野火

 

市川崑の方。塚本晋也版は映像が全然会わなくて正直全く内容が頭に入ってこなかったのだけれども、市川崑版はまるっきり逆で最高に面白かった。自分本当に画がダメだと映画観られないんだなーと再認識。このスーパーコントラスト高くてスタイリッシュなこの絵作りがこの題材に合ってるかはまあこの際置いておこう。基本的に同じ筋書きのはずなのに、もう集中力の切れなさが全く違ったもん。いやほんと、ひとつのカットの情報量とか作り込みとかが全然違うよなあ。しかしテロップが流れるだけで「うひょー!」となっちゃうこの感覚はなんなんだろう。タイトルの小ささも最高にカッコいい。っていうかオレ市川崑がすげえ合うのじゃないのかもしや。

とはいえ塚本晋也版を見たあとだとちょっとスッキリしすぎかなあと思わなくもない。あのグロ描写が良いか悪いかは別として、人肉食を行うか避けるかではだいぶ質感が変わってくるからなあ。まあたぶんそれは時代の問題もあって、まだ戦後の記憶が鮮明な頃に必要以上に残酷な描写を行う必要もなかったと言うことなのかも知れない。スッキリ超明快なラストシーンの結末も、帰還した兵士にとっては必要な語りなおしだったのかもしれないなあ、などと思う。

デルス・ウザーラ

 

デルス・ウザーラ(字幕版)

デルス・ウザーラ(字幕版)

 

な、なんでこんなに画面がチカチカするの? 緑の森を撮ったときの画面のちらつきが気になって気になってしょうがない。フィルムの問題? それとも保存状態? っていうか黒沢的にはコレはオッケーだったのだろうか? リマスターでちゃんと修正したバージョンで観たいよなあコレ。

まあしかし映画の内容は最高に面白くて最高だった。「カピタン!」真似せざるを得ない。自然を相手にサバイバルして、そこに異文化の交流を持ち込んで友情させるだけで、こんなに面白い映画になるんだなあ。いやあ、巨匠のドストレートをズガンと投げ込まれた感じ。

まあ何はともあれ湖の一夜のエピソードで、今まで映画を観ていてあんなにハラハラドキドキしたシーンはないですよ。氷の上で迷うシーンの絵作りの不気味さだとか、緯度が高くてなかなか沈まないんだかわからない夕陽逆光の草刈りシーンの長さだとか、横殴りに容赦なく吹き付ける風雪の勢いだとか、あんなにじっくりにじり寄る「死」を意識させることができるだなんて……うーん、参りました。

しかし『ドクトル・ジバゴ』でも思ったけれど、雪原を歩くシーンの叙情ってすげーなー。画面一杯が白に覆われて、その中でポツンと歩く人影は死と隣接しているみたいな感じ。線路を見つけた時の感動も、まあなんとなくわかる気がします。

ギャラクシー街道

 

ギャラクシー街道 Blu-ray スペシャル・エディション

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あれ? これ舞台原作とかじゃないの? 脚本のつくりがあまりにも舞台っぽいよねえ。ところどころでダダ滑りのしょーもないギャグも、きっと舞台だったら笑っちゃうだろうなあと延々思っておりました。最後の宇宙遊泳をクライマックスにする辺りとか背景にプロジェクションするんだろうなーとか想像しちゃったもん。っていうかコレを最初から映画で創ろうと考えたんだったら、三谷幸喜はやっぱり映画監督じゃないよなあ。いやまあそもそも三谷幸喜が映画監督だとは基本思わないほうがいいのだろうなあ。『清須会議』も全然だったもんなあ。

三谷幸喜は今までも群像劇を上手いこと捌いているけれども、それが機能したのってもしかしたら物語の背骨がちゃんとしていたからなのかしらねえ。『ラジオの時間』も『THE 有頂天ホテル』も、タイムリミットやら目的やらがこれ以上なく明確に設定されていたからこそ、それぞれのエピソードが緊張感を持って展開されるという感じ。今回のは個別のエピソードがもうどうしようもないくらいバラバラに展開していて、それが散漫に並べ立てられるだけで、まあタルい。もちろんそういう作品のつくりがあるのはわかっているけれども、んじゃあその作品のつくりに即した映画の撮り方になってるかっつーとまあ全然ダメだよね。アメリカンダイナーをこのライティングでこのキャラの濃さで撮ったら、そりゃあもっとドラマティックなストーリーの繋がりを期待しちゃうわけで。オムニバスっぽくやるのであればもっとオムニバスっぽいつくりにせねばならんし、個別のエピソードも完成度上げなきゃダメだよなあ。

うーん、低評価も納得の映画であった。