ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

新宿鮫7 灰夜

 

灰夜 新装版: 新宿鮫7 (光文社文庫)

灰夜 新装版: 新宿鮫7 (光文社文庫)

 

はい傑作。2017年ラストの記事を飾るにふさわしい傑作ですね。

もちろん今までの作品も面白かったけど、ぶっちゃけ三人称で視点があっち行ったりこっち行ったりするのって、そんな好きじゃないんですよね。もちろん色々趣向があるなーとかほうほうこういう描写をするのかーとか技術を堪能する側面はあるんだけど、一方情報量の配分とか謎解きの楽しみとかは大幅に減じられてしまっている感があって、正直物足りなさを感じてました。まー犯罪小説に対してそこまで真面目に謎解きを求める? みたいな問いかけももちろんあるんですけど、でも視点があっちこっち飛ぶことで、全体のプロットを俯瞰してみてしまうみたいな冷静な意図を感じちゃうわけです。

ところがどっこい、この巻ですよ。今まで封印してきた完全主人公視点の展開ですよ。物語はタイムリミットつきのリアルタイム経過で、新宿を離れた新宿鮫が、ワケもわからないままにわけのわからない都市のわけのわからない事件に巻き込まれるわけですよ。ブン回されるわけですよ。いやー、素晴らしい。これぞハードボイルド。これが読みたかった。最高。最高。最高。まあ入りがちょっと大きな物語の転機を匂わせすぎていて、最後にワリとスケールの小さな(といっても規模的にはかなり大規模ですが)事件に収束してしまったのは残念といえば残念。

だけど全然いいんです。急激で呆気にとられる収束さえもハードボイルド。うーん、まさかこの巻でこんな変貌を見せられるとは思わなかったなあ……最高です。

死刑台のエレベーター

 

死刑台のエレベーター ブルーレイ版 [Blu-ray]

死刑台のエレベーター ブルーレイ版 [Blu-ray]

 

はい、正直告白しますと『死刑台のメロディ』と混同してました。どっちも名作ではあるけどテンションが全然違うよね。

ということでサスペンスなつくりと意外なプロットで大変楽しい作品でありました。出のドアップの会話(その詳細はもうほとんど語られない!!)からしていかにもサスペンス! でヒッチコック好きなの私としましては大変よろしい。それぞれの犯罪計画やら人物の取り違えやら意外な偶然やらが渾然一体となって息つく暇もない展開もナイス。オマケにエレベーターでのドキドキアクションなんかもやっちゃうんだもんなあ。まあオチなんかはワリと容易に読めたりするわけではありますが、それで何かが損なわれるものでもないよね。

にしても面白いのはあの若者カップルだよなあ。あのふたりの計画性のなさがストーリー全体を俄然生き生きとさせていて、挙げ句自殺しようとして未遂とか、もうどこまで行き当たりばったりなんだよ! 映画全体があのふたりの思いつきに思いっきり振り回されてるみたいで私大変感心させられます。

しかしどーにも気になるのはラストの写真誰が撮ったかだよ。それが気になって全然ラストに集中できなかったもん。別に三脚立てたわけでもないでしょ? うーん。

暗号大全 原理とその世界

 

暗号大全 原理とその世界 (講談社学術文庫)

暗号大全 原理とその世界 (講談社学術文庫)

 

うおー思った以上に話が数学的な方向に行かなくてビックリ。まあこれ原本が出た時代が時代だからコンピューターで暗号をどうだこうだいうのはあんまりしないのはわかる。わかるけど、いきなり短歌とか言葉遊びとか延々繰り返すのにはマジびびった。広義での暗号、と言われれば確かにそうなんだろうけど、いやなんというか半分前提知識に下支えされた謎解きとかそういうレベルで、あーつまりそのなんだ話半分に読み飛ばしていた清涼院流水のアレは言葉遊びというよりもむしろ由緒正しき暗号の系譜なんだなーってそんな認識で良いのか。いいか。良くないか。

中盤以降のテクニカルな暗号の作り方は、ふむふむそういうやり方が、とつらつら文字面なぞるだけで実際細かく理解したわけではないけれども、なるほどそういう仕組みなのかーとなんとなくなぞった感じ。むしろ面白かったのはどうやって暗号が洗練されていったかの歴史的バックグラウンドとかのほうで、あーそうかー外交の概念が出た辺りからみたいな話を聞いてうおーなるほどなーとなる。シヴィライゼーションでスパイも導入されるしね!! そこら辺の状況を説明しておいてから、主に第2次世界大戦中の日本海軍の暗号を例に詳細な説明が入るとうわーと思いますね。でもって『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』でも使われたあの大ネタが触れられていて、ああやっぱり切り札ってのは持っていることを悟られちゃいかんのだねーと思いました。

エド・ウッド

 

エド・ウッド (字幕版)

エド・ウッド (字幕版)

 

エド・ウッドの映画は全然観てなくて、ギリギリ掠ってるのは脚本やってた『死霊の盆踊り』だけなんだけど、あー、アメージング・クリズウェルって映画に出てたあの人かー。まあ別にB級映画とかカルト映画とかが特別に好きなわけじゃないから、この映画を観ても進んで見に行こうって気にはならないけどね!

なんといってもベラ・ルゴシが大変印象深い映画ですね。薬漬けになりながらも、深夜の冷たい池で演技をするプロ根性には脱帽だし、その後の監督の謝罪も感涙モノ。映画を作ることへの業やら信頼やらがごちゃ混ぜになっていて、うーんたまらんなあ。かつてのハリウッドスターが老いてドラッグ漬けでひとりぼっちでという境遇は、背後にホラー映画の凋落も当然敷かれているわけで、ティム・バートンはホント好きだったんだろうなあと思います。

一方ベラに対してエド・ウッドも、ジョニー・デップがエクセントリックな役を大変うまく演じていて全然負けていないぞって感じ。テンションが高まって女装で監督する下りとか、わけのわからんリアリティが溢れていて良いよね。結局映画はろくでもなくてヒットもしなかったわけだけれども、とにもかくにも何かを作ろうとして行動するその向こう見ずなエネルギーはすげー伝わってくるし、それを描く監督の視線が大変味わい深い作品でありました。いやまあ、これを冷笑して切り捨てるのは簡単だけどね……

栄光の彼方に

 

栄光の彼方に [Blu-ray]

栄光の彼方に [Blu-ray]

 

うーん全然面白くないなー。

やっぱ親近感が持てないのが一番問題なのだろうか。どこにも行けないアメリカの地方都市の高校生が、フットボールをテコに街を抜け出そうとする話、という状況がそもそも実感湧かねーもんなー。いや理屈ではわかるんだけどさー。日本で高校野球で実績残して大学にワンチャン、みたいなの全然絵空事なワケじゃないですか。アメフト部がチアリーダーと付き合うのがヒエラルキー的に当たり前とか全然わかんないわけじゃないですか。地域の期待を一身に背負って対抗戦へGO! みたいなの基本よくわからないわけじゃないですか。地方都市出ようと思えばワリと簡単に出られるわけじゃないですか。うーん、実感が湧かねーなー。

とはいえそれを抜いたとしてもストーリー詰まんないよねコレ。コーチが嫌なヤツっぽくてなんか色々あったけど結局上手く行きました終わり、みたいな。細部の実感があればこのストーリーも「うんうんあるある」で気にならないのかなー。

一番衝撃を受けるのはトム・クルーズが178cm役をやるというところで、思わず身長を調べ直してしまったよ。170cm。いやー、もちろん筋肉はついてるけど、改めてこの体格でアクション俳優やって第一線が続いているのはすごいよなー、と妙なところで感心。

ゾンビ・ファイト・クラブ

 

ゾンビ・ファイト・クラブ(字幕版)
 

こういう映画を観ると自分にはB級映画を楽しむ回路が備わってないんだなーと心底思わされます。詰まらん。っつーかどんな動機でこんな映画撮ったの? ロメロだって毎回「○○オブザデッド」するわけじゃないですか。○○の部分がいわゆるその映画の趣向になるわけじゃないですか。この映画のオリジナリティって何? っていうかこのジャケットは何? 何を表現してるの? ヒロインこんな巨乳だっけ? っていうか舞台が台湾な感じをここまで隠すのって意図的だよなー。

いやー、せめて『ザ・レイド』をゾンビモノでパクろう! くらいの志はあってほしいよなー。マフィアだらけのマンション! ゾンビで封鎖! リビングデッドVSマフィアVS特殊部隊の生き残りを賭けたバトル! みたいな図式作った方が全然作劇しやすいじゃないですか。なのになんで雑にテキトーに人がバンバン死んでいく話にするわけ? なんでジジイがパワードスーツで発信しちゃうわけ? なんで突然パパが娘のために覚醒しちゃったりするわけ? こどもの思いつきかな?

で、時間が飛んで地下コミュニティの話とか、もうテキトーすぎて笑うわ。せめてそこは、主人公がそこに捉えられるみたいな所からきちんとやれよー。あーこの世界では全く異なる秩序が構築されてるんだってショックが与えられるの、ゾンビモノで一番おいしいところじゃん。雑なつくりすぎて、うーん、ほんとなんでこんな映画撮ったの?

アドレナリン

 

アドレナリン(字幕版)

アドレナリン(字幕版)

 

うーん負けましたわって感じ。正直こういうテレビっぽい造りの映像はそれだけでどーもなーとなっちゃうんだけど、この映画はしょーがないよなー。ド頭のFPSによって薬で視界がおかしくなった人間という定義づけをガツンとやりつつ、ストーリーまで含めた映画全体を徹底してコミカルなトーンで仕上げれたら、そりゃまあ必然性のある絵作りってことになるわけで。雑なCGとか早回しでごまかす映像とか雑なストーリーとかも全然オッケーむしろプラス。心臓ドクンドクンして死にかけるたびに「次はどんなアドレナリンドバドバテクニックが!?」と画面に釘付け。半ケツで街中を疾走するジェイソン・ステイサムとか中華街でヒロインと衆人環視セックスとか、そういうあほくささの極まった展開が最高に輝いてますね。っていうかこのジャケットの「即、死亡。」ってコピーがこの作品のバカっぽさを最高に適切に表現してますね。

でもタクシー兄ちゃんからもらった謎のドラッグは何だったんだ。アレ後にもなにも繋がってないよねー。謎。

あとこれ2ってどう創るの? そこだけすげー疑問。過去回想でもやるのだろーか。