ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ヴィンセントが教えてくれたこと

 

ヴィンセントが教えてくれたこと [Blu-ray]

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なんだよこの邦題! 聖人ヴィンセントのニュアンスをこんなほっこりヒューマンドラマにしてんじゃねーよ! ってか例の『ドリーム』の監督かよ! なんなんだよこの監督の邦画タイトルひどい率は! いやまあ僕はアポロ計画の邦題はセーフなんじゃないかなーとか思いつつも見ていないのでなんとも言えないんだけど、少なくともこの映画は狙うべきターゲットが邦題と大きくズレてるよなー。良くないよなー。

予告はたぶん映画館かなんかで観たことがあって、ビル・マーレイ推しのちょっと面白コメディのようなイメージでいたけど、いやー全然これそういう話じゃないじゃないですか。隣家の子どもに教えたこともなくはないけど、でもそれって映画の中でそんなに印象に残んなくて、メインは「家族いなくなる」「金がねえ」「死にそう」ばっかりを色んなレイヤーで延々やっているすげーしんどい話じゃないですか。こんな映画をあんな見せかけで宣伝するのは良くないと思いますマジで。

ってかケネディの新聞切り抜きとか各所にちらっと映る星条旗とかで序盤から伏線は張られてるけど、コレ完璧にアメリカの映画じゃないですか。たぶんベトナム戦争って文言が出てきたときズガーン! そうかそーゆーことか! とボンヤリしていた空白がバンバン埋まってきちゃうタイプの映画よねコレ。信仰によって主人公が救われるところまでかなりザ・アメリカンな作品のはずなんだけど、そもそもあの街並みですぐ「あーブルックリンの老人かー」とか文脈読めないといかんのは日本人とか俺とかにはフツーにハイコンテクストよねえ。ブルックリン言われてもトム・クルーズが宇宙戦争で済んでたなーとか『ワンス・アポン・ア・タイム・アメリカ』の舞台だよなーとかそういう点の印象しかなくて、場所の意味合いとか全然読めねーもんなあ。

それはさておき演出があんまり好きになれないなーこの作品。ダンスシーンのライティングの暗さとかマジでそれで良いの? って感じだし、子ども復讐シーンの音楽の空回りっぷりは最高に厳しいし、時々出てくる正対のアングルもなんかイマイチうまく決まってない感じ。いやビル・マーレイであのアングルだとどうしてもウェス・アンダーソン思い出しちゃうからかもしれないのでそれはちょっと難癖のつけすぎか。ラストのストーリーの持っていきかたも大変雑に思えるし、うーん、あまり好感が持てる作品ではないなあ、と思います。

 

ショーガール

 

SHOWGIRLS

SHOWGIRLS

 

えーこれラジー賞なの? マジで? そんなに悪い映画ですかねコレ?

もちろん主人公はひでーやつだってのはわかるよ。そのひでーヤツがなんでこんなろくなしっぺ返しも受けずにのうのうとあんなエンディング迎えたのかって気に食わないのはまあわかる。わかるけどそういう映画じゃないよねコレ。

成功物語だと主人公に成功の過程で感情移入させつつ「あーそうそうその立場だったらどうしようもないよねえ」みたいな気の迷いとかで失敗しちゃって転落していくというのがまあ良くある形だけど、この映画の場合は成功の過程をろくに感情移入させることはしない、というか常にゲロ吐き主人公は嫌なヤツだよね。そんな極端に嫌な奴いたら嫌だなーと思うくらい嫌なヤツ。そういう風に一見定型的なストーリーをなぞっているように思えて、えーという所で外すことが繰り返され、いやあこれってすごくエキサイティングじゃありませんか? あの「俺だけはお前のダンスの良さを知ってる!」君が突然結婚で里帰りなんてあまりの急展開に「うひゃー!!」と叫んじゃうよね。昔の職場の上司が親みたいに様子を見に来るあのパート映画としては全く不要というかわざわざこんなところまで追っかけてきておっぱいポーン!までしちゃうのは全く意味がわからない。それを雑とみりゃあみれるんだけど、でもねえ、この映画の強烈なキャラクター群からはなんかそういう物語の提携からはみ出さざるを得ない勢いを感じてしまってねえ。あー、まあこの世界じゃあこう行動してもしょうがないよねーと思わせられる何かがある、気がする。OPとEDを繋いで映画をなんとなく閉じた感じにするあの定型とかを使ってたりして、それがかえってこの映画の破天荒さを際立たせている感じもしますね。すげえなバーホーベン。

まあそれが極まるとあの爆笑必至のプールセックスになるんだろうけど。アレさすがにギャグのつもりだよねえ?

グエムル-漢江の怪物-

 

グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション [DVD]

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わーすげー変な映画ー! 想像していたより全然変な映画だった。

まあある種の怪獣モノといって良いとは思うんだけど、怪獣を中心に置くはずの話を家族中心で語っちゃうのがマジで意味わからん。自分とかはこういうフィクションの存在が定義されるとある種象徴的に見てしまって、公害? とは言わないけれども科学の進歩とそれによる犠牲を強いる者? みたいな捉え方をしてもいい生物だよねグムエル。でもなんでそのグムエルに家族総出で対決しなきゃいけないの? っていうかドラマはむしろ組織によって絆を引き裂かれる家族ってところに焦点が当たって、ワリと怪獣どうでも良いよね。変な映画。

いやでもそういうつくりの映画なんだよなーこれ。アレだけお父ちゃんがスーパーアクションしたにもかかわらず娘は助からず怪物を倒したのはどっちかっていうと用意されたスーパー兵器で、だからそういう普通のエンターテインメントとしてのつくりじゃないよねー。米軍のなんだか良くわかんない組織が家族の絆を勝手な都合でメチャクチャにしちゃってて、グムエルも元を正せばアメリカ人のスーパー雑な行為によって生み出された悲劇の存在であったという。そういう風に考えると、とってつけたようなスローモーションクライマックスシーンも、ちょっと違った風に見えるのかなあ。

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち

 

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)

 

最初は知識足りるかすげー不安だったけど、同じ著者の『金融の世界史』読んでいたおかげでまあなんとかついて行けたかなあ。本の中軸には数字がダーって並ぶけど、それと日露戦争の状況と世界情勢がどのように結びつくかみたいなところをちゃんと説明してもらえるので、普通に面白く読めました。タイトルに「高橋是清」の文字が入っているけど、伝記と言うよりもむしろ日露戦争の日本の歴史を追いかける本って感じ。

かつて金本位制がとられていたのはもちろん知っているし、ニクソン・ショックとかやっぱワケわかんねーなーと思うけど、でも具体的に金本位制でどんな国際金融活動が行われていたのかはサッパリイメージできなかったので大変面白かった。そうだよなー輸入するのにはまず金がいるんだよなー当たり前だけど。

でもって当然日露戦争あたりは日本が産業革命で先進国に追いつこうとしていた時代なワケで、それが国債を追っていくと数字でわかるというのは大変面白い。日露戦争がすげえターニングポイントって話は世界史で何度も聞いているけど、ここまではっきり数で示されると納得感が半端ないよなあ。

そしてまた当時の国債のヤバさを示しながら、対比して現在のヤバさが示されるのが大変身につまされる。国の経済活動を一般市民の金銭感覚で捉えるのは間違ってるのはわかるけどさー、それにしたって後先考えずお金を借りすぎだよねえ。その後の日本の歴史を知っているからこそ、翻って現在の状況を考えてしまうつくりで、いやあ……

復讐は俺に任せろ

 

復讐は俺に任せろ [DVD]

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おー、フリッツ・ラングなのか。戦後はフィルム・ノワールとかも撮ってたのね。

フィルム・ノワールはまあカッコいい画が多いけど、この作品もまた随所がカッコいい。ラストの打ち合いとかもやってることはそんなにすげー内容ではないと思うんだけど、手に汗握ってしまうなあ。しかしホテルで打ち合い最終決戦というのは様式美か何かなのかしら。観てる本数少ないけど、フィルム・ノワールって良くそういうクライマックスの盛り上げ方するイメージ。

ストーリーは色んな所に行ったり来たりして結構間延びしてるなーこんなに人いる意味あんまないよなーと思いきや、各所で突然の大事件が起こって油断できない。車爆発は色んなギャング映画で使われてるけどさ、なんであんなにショッキングに感じられるんだろうねーホントに。ラストの「え!? そうやって決着つけるの!!」という展開含めて、なかなか楽しく見せていただきました。まあ言われてみればそうすればああなるけど、いやあまさかそっちにストーリーの主導権握らせるとは思わなかった。

しかしこの映画、なんであんなに主人公がどうでもいいんだろ。役割を完遂する立場なのはわかるんだけど、どうもそれ以上の共感ができないなあ。意外性のあるラストもそれに拍車をかけてるとは思うんだけど。周囲の女性陣は一癖も二癖もあってすげー印象的なのになあ。

嵐が丘

 

嵐が丘 [DVD]

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いつかは観なきゃなーと思ってえいやっと借りたら見たいヤツじゃなかった! モノクロのが観たかったのに! うーがー! いやまあそもそも原作を読めって話なのかもしれないけど。

ということでまあさすがに名作って言われるだけあるなーって筋書きで、いやあ大変な話ですねこれ。身分差で恋愛の悲劇が生まれるというのは古今東西問わない題材かもしれませんけど、まさかそこまで徹底的に復讐を描くとは思わなんだ。中盤でメインヒロインが死んだときはどうするのーという心配なんて杞憂でしたね。

というふうに筋書きは堪能した一方で、映画としてはだいぶ乗り切れない作品だったよなあ。観てるヤツは原作知ってるだろそこら辺の心理の動きはみたいなつくりで、いやー全然ついていけませんでしたわ。時間ジャンプ時のキャラの繋がりのわかりづらさとか全然演出でフォローできるところじゃないですか。いやまあちょっと考えればわかるんだけどさー、その把握に脳を使ってるうちに話がポンポン進むというか。

ヒースクリフが新たに屋敷の主人となって帰ってくるところも大変あっけなさ過ぎて、驚くというよりもむしろ「あーはいはいそういう原作なのね」と思ってしまう。古典の語り直しだからこそそこら辺を新規の人にも感情移入出来るように作るべきだと思うんだけどなあ。終始ヒースクリフがはいはいそう動くのねって感じでどうにものめり込めませんでした。

ジュリー&ジュリア

 

ジュリー&ジュリア [Blu-ray]

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写真撮れよ写真! インスタ映え狙え! とかつい言いたくなってしまうけどブログの創成期でWe blog! って感じでVAIOもでけー文字でびっくりで、写真の進歩ってすごいんだなーiPhoneすげーわ。

ということでインターネットを手に入れたことで自分を磨くアラサーウーマンのお話、とかくとずいぶんアレっぽく聞こえるな。でも実際そこら辺は狙ってるだろうしそういう自己実現の話ではある。ふたつの時代でふたつの物語が並行して走るわけだけど、過去のジュリアが一生懸命玉ねぎの練習して上達して周囲の女性への偏見を跳ね返して、という女性の権利を獲得していく話とも読めるのに対し、現代のジュリーがとりあえず料理はできてて別に上達とか社会の偏見とかは関係なく夫婦関係と自己実現でストーリーが完結している辺りもまあそれっぽくて趣深い。ふつーにメリル・ストリープがすごすぎるって話なのかもしれんけど。

事実をバックグラウンドにしているのはわかるけど、それにしたって締まらないラストだよなあとは思う。なんとか「心の中のジュリア」とか決着はつけた感じになってるラスト、ホントに決着ついてるかなあアレ? スミソニアン博物館にバターを備えて自己完結! とかやられてもあんまりオチがついてるようには思えない。編集者のなんともやり所のない下りも含めて、映画化の差違にもうちょっと脚色しちゃっても良かったんじゃないかなあこのトーンなら。

あとどうでも良いがスミソニアン博物館ってキッチンとかも展示してあんのか。一番の衝撃。