ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

男たちの挽歌Ⅱ

 

男たちの挽歌?(字幕版)
 

これも以前に観たけどすっかり内容忘れてたのでもう一度見たヤツ。なんでこのクッソ濃い映画の内容を忘れられたのか自分でもわけがわからん。ラストシーンの襲撃は眠い目を擦りながら観てた記憶があるんだけど、いやー当時のオレ見る目なさ過ぎじゃないですかね。

なんというか続編にあたってキャラクターの人気がこんだけ全面に出るのもものすごく、まあ有名なあんだけ印象的な死に方したキャラクターをあっさり双子で蘇らせる展開にビックリだが弟リストラにもビビります。挙げ句タクシー会社の経営者もまっとうな道を踏み外しちゃうんだからなー、いやー、すごいなあ。

にしても双子みたいなトンデモ設定を持ち込んでおきながら、それをどうやって作品に馴染ませるか、って手管がものすごいなー。料理人という属性を与えて、「米に謝れ!」とか「飯食え!」あたりのエピソードで「美味しそうな料理をつくる人だ」って語感を揺さぶる格好で親近感を抱かせていく辺り、本当にうまい。

潜入捜査ものとしてはまだこなれてなくていきなりクライマックス持ち込んだり、弟くんが撃たれては治り撃たれては死にとかプロットが明らかに整理できてなかったり、まあ色々問題点はありますが、しかしそういうストーリーの傷を遥か置き去りにしてそれまで敵の用心棒と無言で全く意味のない殺し合いでなぜか痺れるんだから、うーん堪りませんねコレ。

フラッシュダンス

 

OP。OP。何がともあれOP。有名曲がガツンと流れて当たり前の日々の朝が流れて映画が始まる、というまあなんというか暴力。全力で正面から殴られた感じ。いやー、色んな映画のOPを観てきたけど、結局こういうごくごく当たり前の入りが一番ピンとくるのかもしれねぇなあ。

何にせよ曲が暴力的で、コレもコレもコレも聞いたことあるじゃん! って曲が大盤振る舞いで、いやー時代を変えて影響を残した作品なんだなあってのがよくわかる。「アイ・ラブ・ロックンロール」さえどうでも良いところで流しちゃうあの大盤振る舞いったらないよね。

にしてもストーリーはもうちょっとどうにかならなかったのかなあ、とは正直思う。この映画、女性が社会進出を強く印象づけていると同時に、ブレイクダンスみたいなポップカルチャーを称える役割を担ってる……んだけど、どうもこう権威であるバレエの描き方が薄っぺらすぎやしませんでしょうか。さすがにあのラストのダンス一発で審査員がリズムを取って合格通知出しちゃう流れ、いやまあ音楽の暴力でなんとなく形にはしてますけど、でもやっぱりあんまり良くないんじゃないかなあ。そもそもバレエの方が格上であることを認めるラストにもなってるし、もうちょっとなんとかなんなかったのかなあ……

嗤う分身

 

嗤う分身 [Blu-ray]
 

最初は「あーこれ絶対嫌いな奴だ」と思ってアクビ堪えながら観てたんだけど、いやー、良い意味で裏切られました。オレこういう世界観の衣装って気取りすぎてて好きじゃないし、物語が牽引してくれないとあまり興味が持てないのよね……と思っていたところにやってくる分身。Doubleが現れた途端に物語が急激に加速して、分身でしか表現できない展開がバンバン飛んで来るので大変痺れた。最初は「なんだかなー」と思っていた日本歌謡演出も、レストランに花片待ってキスシーンで「ふええええええ……」降参してしまいましたよ。いやー、素晴らしい。

しかしこれを単なる解離性障害とか言ってしまうのは俺にはどーも納得がいかんなあ。もちろんそうやって説明すれば映像的な整合性の取れ無さも理性的な解釈ができるのかもしれないけれども、しかしなんでそこまで理性的に物語を解釈しなければならないのか、むしろそんな安易な解釈に落とし込まずに、わけのわからないものをわけのわからないもののまま受け取る姿勢でも、この映画では楽しめるんじゃないの? なんて思いました。

男たちの挽歌

 

男たちの挽歌(字幕版)
 

一応随分前に見てはいたんだけど、どうも記憶が曖昧なのでもう一度。

序盤からまあテンポが良く、前のめりな音楽もあって微笑ましい。ジョン・ウーの外連味を求める演出に映像的なハッタリが追いついてない感じ。まあその軽さがあるからこそ、後半のあのテイストも生きるんだろうけど。

様々なすれ違いを含んで徐々に重たくなっていく物語で、やはりラストの銃撃戦の描き方が大変によろしく感動する。冷静に考えればなんであそこで弟が味方になるのか説得力足りてねーよなーとかも思うんだけど、それまでの物語の積み重ねがあの行動を正当化している感じが逆に大変良い。それまでも何回か銃撃戦はあったけれども、この戦いに乗ってる物語的意味は段違いだし、それを待っていたかのように巻き起こる爆発・炎上に「あー演出ってこういうもんだよなあ」と心震えるのでした。

あとは音楽ですね音楽。ドラマとして重要な箇所にはメインテーマを出し惜しみしない。最初はイマイチピンとこなかったそれも、アレだけガンガン回されると、最後には「ううっ、なんて名曲なんだ……!」となってしまいます。

テディーズ・アワー 戦時下海外放送の真実

 

【文庫】 テディーズ・アワー 戦時下海外放送の真実 (文芸社文庫)

【文庫】 テディーズ・アワー 戦時下海外放送の真実 (文芸社文庫)

 

何が一番ビックリしたかってそりゃラストで作者が息子であることがわかるところだよ。なるほどなー息子だからこそできる描写なんだなーと最後の最後で納得させられてしまった感じ。

終始感心させられるのはカナダに移住した日系人の心情で、当時カナダで日本からの移住者がどのように扱われていたか、また日本に戻ってきた日系人がどのように扱われたか、そこらへんの事情が武士道やら英語やらの具体例を挙げて述べられていて、大変説得力がある。こういう出自の二重性を巡る問題は、漠然とした想像では届かないところがあるんだなー、なんて思うのは『不夜城』に衝撃を受けたばっかりだからかもしれないけれど。

あと効いているのがテディと対になってる万城の存在。テディが一種成人めいているというか、いわゆる光の主人公で危なっかしいのと対置されて、汚れ役で現実的で人間らしい欲望を持つ万城が、大変効果的に機能している。弁舌がたつこともあって、彼の説得にテディが丸め込まれていく辺りが、この作品のリアリティを支えてるよなあ、と思う。

にしても完全なノンフィクションではないのね。どこら辺が創作に依らなければならない部分だったんだろーなー。

貞子vs伽椰子

 

貞子 vs 伽椰子 プレミアム・エディション [Blu-ray]

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白石監督のPOV以外の作品を観るのは初めてで、正直不安だったんだけどまあ不安は的中したよねー。POV視点だから許容されていた部分のアラがどうしても目についてしまってどーもねえ。序盤は一応ホラーとしての体裁を整えた方が良いパートなので、どうもこうフラットな感じの画面作りやテンポの良すぎる編集にはションボリしてしまう。もうすこしじっくりと映画を作り込んでも良いと思うんだけど、貞子でもそういう現場じゃなかったのかしらねえ。

なんて思う一方で、最後まで見終わっての感想は結局「白石監督は本当に信頼できるなあ」ってことで、結局大満足な作品ではあるのだった。この監督らしい鋭いアイディアといかにもな飛躍に加えて、「vs」の名にふさわしい両者の対決をしっかり押さえてあるわけで、まあそれらの利点に比べれば足りないところなんて些細なものだよね。CGのクオリティ上げたところで、この作品が面白くなるわけじゃないもん。こういう「vs」なお祭り企画で、それぞれの必須要件をきちんと満たした上で、「そこまでやっちゃうのかー!」というラストを成立させてしまっている以上、監督を褒め称えるしかありませんよコレはマジで。

にしてもさあ、構成で言うと『フロム・ダスク・ティル・ドーン』とかを思い出さなくもないけれど、どっちかっつーと同じ監督の『カルト』だよなあコレ。中盤以降でガツンとギアチェンジしていく展開は、vsのアイディア含めて『カルト』よりも良かったけれども、霊能力者のインパクトは大きく劣るよなあ。ネオさんの力はPOVだからこそ説得力が出たのだろうけれども、決して良作とは思えなかった『カルト』が観たくて観たくてたまらなくなる内容でした。

ゾンゲリア

 

ゾンゲリア [Blu-ray]

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いやー、すごいタイトルだよねえコレ。「ゾン」はわかるし「リア」もまあわかるけど「ゲ」ってどこからやってきたの? 原題「DEAD & BURIED」ってこれ印象思いっきしかけ離れてるじゃんよー。

でまあ、強烈なタイトルですげースプラッタめいたものを想像して見始めたら、意外に上品な内容でビックリする。ってかむしろボディ・スナッチャー。ゾンビものって「ゾンビよりもむしろ人間の方が怖いよね」って結論に行くのが常道だけど、まさか田舎の人間関係をブチ込んで「ゾンビ=人間って怖いよね」見たいな話にするとは思わなかった。暗闇でフラッシュたかれるのは正直映像的にしんどいけれども、まあみんながカメラで被害者を撮ることで生まれる暴力的な視線がバッチリ効いていて、それはそれでなかなか良い表現になっているなあと思った。

とはいえ映画として面白いかと言われるとあんまり……というのが正直な所で、もうちょい作品に引っ張り込まれるような展開が欲しかったよなあ。突然記録映像まみれになるパートは、葬儀屋の性格も相まってなかなか素敵なシーンになっているけれども、その他は案外予定調和な感じ。ラストのオチも、まあそうだよねーってところに落ち着いて、もう半捻り欲しい内容でありました。