- 作者: 石川ユウヤ,シロガネヒナ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/08
- メディア: 文庫
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あとがきの謝辞に友人が「語りつづけろよ」と言ってくれたことへの感謝が書かれていたけれども、オレは面識もなく義理もなく偏見もない(たぶん)いちライトノベル読者として言う。
「語りつづけない方がいいと思うよ」
この作品、主人公とヒロインが愉快な行動はするけど、好感を抱けるような点ってほとんどないよね?
極端なアクションを起こすキャラクターにも、その行動原理がはっきりしていれば一定の理解は示せるものだけれども、その場しのぎの動機しか用意できていないよね?
「キャラクターが愛せない」ということに、たぶん作者は気づいていないよね?
気づかせてきちんとフォローすべき編集もその仕事を果たせていないよね?
そんな環境にいて、しかもその環境に問題意識を抱かないまま、このまま継続して小説を書き続けても、いい作品は書けないと思うし、ライトノベル作家として成功できるとも思えない。
デビューの5年後に生き残ってる作家って、いったい新人の何パーセントだろう?
もちろんこれはいち読者にしか過ぎない自分の感想で、自分の感想が人と違うことは良くある。
たとえば桜庭一樹の『GOSICK』は、キャラクターが良く書けているものの、内容は正直ひどいと今でも思っている。その桜庭一樹が数年後にあんな傑作群を書いて、直木賞までとっちゃうんだから、未来に何が起こるかはわからないだろう。
未来に保証はない。それでも賭け続ける勇気はある?
「語りつづけろよ」と友人がかけてくれた言葉って、きっと大切なものだったんだと思う。しらふの冗談で口にできるような言葉じゃ絶対にない。
でもあとがきに書かれていたその言葉が、オレにはまるであとがきに自己陶酔した格好つけの言葉のように受け取れてしまった。それって、誰にとっても不幸なことじゃない?
以下雑感。
・金持ちヒロインがニートになりたい動機がすっきりしない。
・やきそばエピソード、「このキャラクターはツンデレです」って言葉で説明しているだけで、特別な魅力に結びついてない。
・主人公、いきなり屈服しすぎ。あそこを貫き通そうと努力して、さんざん手を尽くした後、ヒロインが主人公の努力を認めて初めて彼に謝る、とかいう手続きをとるべき。キャラクターに好感を抱かせるためにはごく当然の展開だと思う。
・殺し屋かわいい。でもこれはSMマインドのある人だけかもなあ。
・「ハローワーク」の聞き間違いはもう少し工夫してください。流石にやりすぎです。
・信念の動機がおざなりなので、もっと意外だったり納得ができたりする説明を考えるべき。
・「5万円」の真相はせめてもう少し伏線を張らないと、なんのカタルシスもない。「ああそうですか」で終わってしまう。