ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

最強同士がお見合いした結果

 

最強同士がお見合いした結果 (GA文庫)

最強同士がお見合いした結果 (GA文庫)

 

あーそうそう、こういうのでいいんだよこういうので、という言葉がつい脳裏をよぎってしまう。ラノベに何も求めなすぎであろーか? こういうちゃんとしたコメディがあると私安心してしまいますわ。

最強である男女を対称の位置に置いて、それぞれの視点を切り替えながらふたりがいかに勘違いをしていかに非常識を振りまいて、でもお互いがきちんと好感を持てる常識を持っていて、というのをきちんと描写できているだけでもう私は大変満足でございます。最強というキーワードをちゃんと中心に据えてストーリーが展開するのも良心的でよろしい。妹と最強メイドというサブキャラクターも役割とキャラがしっかりしていて安堵してしまいますわ。

難癖をつけるならさすがに最後の悪役がダメで、「いやあ私を油断させると思っているでしょうでも油断しないよ無駄だよ」と自身に言わせておいて、でもやっぱり油断しているという展開はちょっと難易度高いですよね。自身の証言だけじゃその信憑性は上がらないので、もっと具体的に主人公側が困難にぶち当たるところを描かなきゃならないはずだけど、そこはスルーしてやっぱり主人公側が最強でした! おまえの見積もりが甘かったよ! という展開で、結果として敵が小物になって困難のハードルが下がってる。良くない。

とはいえその他はミスリード含めてふむふむなるほどなあと感心させられる内容で、いやあとても心穏やかに読めました。しかしこっから先はどうやって話を展開してゆくのだろーか。必然的にもっとエロにも振っていくことになりそうだけれども、ヒロインの視点がある分都合のいいコメディにはできなそうだよなあ。

柳生一族の陰謀

 

柳生一族の陰謀

柳生一族の陰謀

 

まずはこの文字がかっこいい。この時代の邦画の字ってなんでこんなにカッコいいのか。このフォントで名前が書かれてるのをみるだけでもう満足してしまう。一体誰が書いてるんだろうこの文字は。

タランティーノ回りのインタビューとかでよく名前が出て来るので名前は知っていたけど、いやあこんな内容とは思わなかった。ラストの「えーっ!?」な展開は『イングロリアス・バスターズ』とか連想しちゃうよね。

しかしまあ絵に描いたような皆殺し映画で、こんなに皆殺ししても良いものだろうかとビックリしてしまう。群像劇で陰謀ものでという図式はわかるのだけど、仁義なき戦いでも一応こうもっと感情移入の対象はあったわけじゃないですか。馴染みのない時代劇で人物の立ち位置がパッとわかりづらいこともあって、かなーり俯瞰した視点で残虐な殺し合いを眺める感じになったのだった。それはそれでこの映画のテイストになっているのか。

大物キャスト満載のなか、もちろん印象に残るのは萬屋錦之介。その芝居の質も関係しているのだろうけど、ほかの登場人物に比べると役者が違うって感じがしますね。松方弘樹も大変気合いの入った演技をしておりますが、この映画のラストの狂いっぷりを見せられるとなあ……今まで散々時代がかった演技をしてきた萬屋の崩れ落ちっぷりは、下手に殺されたりするよりも余程スカッとしますね。

ナイスガイズ!

 

ナイスガイズ! [Blu-ray]

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おーまたロサンゼルスの探偵モノか、と思ったらこの監督『キスキス,バンバン』の人かよ! あーなんかこう色々納得しましたわ。あの作品ではちょっと引っかかるところがあったけど、今回は文句なくあーおもしろいなーたのしいなーとなった。

作品のブン回し方が相変わらず快くて、適度に複雑で適度にわかりやすく適度に奇妙な人間たちが微妙にへっぽこなアクションで事件の謎の周囲を右往左往する様子がまあよろしい。特に主役ふたりと子役のキャラが良いですね。ラッセル・クロウは普段この人何やってんの? 大丈夫? 生活できるの? という感じもするので、もし続きがあるんだったらもうちょいコメディっぽく見せてあげても良いんでは? とも思う。でも子役が成長したらこの感じも出なくなっちゃうんだろうなあ。

いろいろ良いシーンはあるけれども、やはり便所で銃を突きつけるシーンがとても良い。ああいうアクションでちゃんと面白く見せられるシーンはそれがあるだけでもう貴重でございますね。ラストのフィルムが転がることを利用したアクションもなるほどなーって感じだし、贋札が詰まっていることが明示されるところの流れもやや唐突だけど小粋だし、うーんやっぱりこの映画好きだなあ。

しかしどう考えても『ビック・リボウスキ』を見たくなってしまう作品ではある。ちゃんと気が利いてはいたのだけれども、もうちょい過剰にいっても良いんだよなー。やっぱあのボウリングシーンのバカバカしさまで跳ねるのってすげーことなんだなあ。

スノーデン

 

スノーデン(字幕版)

スノーデン(字幕版)

 

あーオリバーストーンか。言われてみれば確かにオリバーストーンっぽい題材であるな。ほんとアメリカ人監督は自分の国に関しての映画を撮るのが好きよねえ。

なんだかんだハッカーとか国家補償とかは好きなこともあり色々見ているのだけれども、情報としては今更驚くようなこともない話ではある。情報戦においてはどれだけカードを伏せておけるか、存在そのものに勘づかれないかが重要であるからして、まあアメリカレベルの国家であれば当然そのくらいのことはしてるだろうなーという思いがある。

「情報を明かして判断を委ねるべき」というのは確かに民主主義として正しい意見にみえるけれども、まあしかし情報を明かしたときに全体として利益が生まれるかというと必ずしもそうとは言えないわけで、だからNSA側の行動原理も理解できなくはない。オリバーストーンの世界の見方はちょっと片方に寄りすぎじゃない? とも思わなくはないので多少はさっ引く必要があるのかしら。安全のために自分の情報をどれだけ預けるか個人が判断するようになってるのも、そこら辺の影響なのかしらん。しかしハッカーに秘密と統制を求めるってそもそもなんか色々矛盾しているような感じがするなあ。逆によくもまあ情報漏れなかったもんだ。

映画の中身としては、いやあ良い彼女を持ったもんだなーってかモスクワまで来るのかすげーなーとか、ルービックキューブのエピソードはやっぱり気が利いてるなーとか、あとニコラス・ケイジかよ! とか?

ナイトクローラー

 

ナイトクローラー [Blu-ray]

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うーんいいですね。やはり最後の大ネタというか、隠しておいた証拠を用いてのドタバタシーンがとても良い。カーチェイスのシーンなんて今まで散々色々取られているワケだけれども、そこにカメラを撮る人間を入れ込んで追跡劇させるとアレだけ手に汗握るものになるのかーって感心しました。それまでの上司部下の関係も、1度条件を呑む辺りの意外性はとても良いし、あとアレだけ色々あった後だから都合良く片が付きすぎるのもまあ良いかって感じになる。なにより「自分は悪いことをしていません」って言い訳がきちんと用意してあるあの塩梅が素晴らしい。

にしても主人公が本性を現していくシーンの説得力がすごくいいよなあ。中でも中盤の女ディレクターを追い込んでいくあたりが屈指で、インターネットの情報を駆使しつつ、えーあの年増に性的関係を強要しちゃうんですかマジですか熟女趣味なんですか? という困惑が妙なリアリティを生んじゃうのが超面白い。

こういう作品って主人公の狂気が伝染して最終的にしっぺ返しをくらう形を期待しちゃったりするものだけれども、あまりにも主人公の生き方というか牙の剥き方が一貫していて、むしろ彼に共感してしまうものだから大変困る。見方を変えれば社会のはみだし者がようやく自分の居場所を見つけて成功していく物語になってるもんなあ。

カメラを止めるな!

kametome.net

「いいからさっさともっと面白いものを見せてくれよ」が7割くらい続く辛い映画であった。世の中の反応を見ていたからもあるけれども、まさかこんなに期待値を下回られるとは夢にも思わなかったぜ。

最初のクソ眠たいカメラの振り方から監督出てきて質が変わって、うーんこれは嫌な予感がするぞと思うわけですよ。どうやらこの作品は長回しをするようだ、しかし待てよ長回しと言ってもヒッチコック『ロープ』のような「カメラの存在を極力隠す撮り方」と、いわゆるPOVな「カメラが実際にあることを前提とした撮り方」で全然意味が違ってくるぞ、と。もしも前者の撮り方でやろうとするならあまりにもカメラマンの存在を意識させすぎる撮り方になっていて単純に下手くそで、うーんそうじゃないと良いなー意図していてくれよーと思ったら序盤で早々右上に水滴がついて、あーこれはカメラマンの存在を示唆するためにわざと入れたのね、カメラマンは存在するワケね、とちょっとだけホッとするわけです。

でもその一方で、もしこの登場人物のアクションのリアリティでPOVであるならば、どう考えたって作中作であるわけで、あーそれってつまり序盤のゾンビの茶番はマジでどうでも良い茶番ね、あーあーRECラストなカメラまでやっちゃって、そのズームはデジタルじゃないっすか? あークレーンももっと普通にやりゃ良いじゃんそこまでしてカメラマンの存在を意識させたいの? とかいちいちゲンナリしてしまうのです。ってかこの長回しを「やってみたかった」以外にどうやって説明つけて、このクソ意図が鼻につく茶番に対してどう感情的に納得のいくオチをつけるの? いいからさっさとこの先の展開を見せてくれよ、と。

で、そんな私の愚にもつかない心配を、あの女社長の思いつきからコメディで回収するというアイディアが、とにもかくにも素晴らしいワケです。作中作の茶番という大変扱いづらい題材と、いちいち鼻についた長回しの引っかかりが、いっぺんに反転して作品の超強い武器になる。この作品はこのアイディア一点でも大変価値がある事をしていると思います。

 

ががががが、問題なのはこっから先で、「あーここで編集点入れられそうだなー」くらいには集中して長回しを見ていると、その中で不自然に思っていたパートを大体全部憶えているわけです。で、その不自然パートに、そこから先の日常パートが延々伏線設置していくのが丸見えになる。「あーはいはいあのRECカメラで腰痛めて、あーその後これ見よがしにズームするわけね」みたいな感じで。いやまあ伏線を見える格好で敷いていくのは別に良いんですけど、その見え見えの伏線から想像した以上のハプニングが本番で全く起こらない。いちいち生真面目にひとつの種でひとつの実を採取で、伏線回収のたびにえー普通もっとそこ頑張るでしょ? と落胆。それぞれのキャラクターと伏線が絡み合って予想以上のドタバタを生み出してくれないと、単なる答え合わせじゃないですか。

ってかなんなんですかあのラストクレーン。確かに内面的なドラマで言えば写真で肩車アイディア回収は悪くないと思うんですけど、そもそも外面的なアクションとして人間ピラミッドで肩車ってその解決安易すぎません? せめて酔っ払い嘔吐マーライオンと下痢便我慢できない神経質君の下で、主演少年がうおおおおおと役者根性を見せるとか、最低そのくらいの伏線を組み合わせたドタバタからの打ち上げ花火やらなきゃダメじゃないですか? なんであんなキャラを使い捨てにしてるの? ってたぶん時間がないのだと思うけれど。これを120分でそれぞれのキャラクターの彫り込みをちゃんとしたら、『ラヂオの時間』的な傑作コメディになれたと思うんだけどなー。

プロレススーパースター列伝

 

前に「こんなところで終わるのかよ!!」と叫んだ記憶があるのだけれども、ようやく全巻セットで読むことができた。

何はさておきタイガーマスクが面白い。プロレス自体が登場人物の組み合わせでいかにして物語を生み出すかみたいな側面があるかと思うんだけど、マンガの後追いのキャラクターがその出自をマンガによって追いかけられるというのは今読んでも最高にエキサイティングな内容だ。リアルタイムでタイガーマスクの情報がどう明かされていたのかが、ちょこちょこ挟まれるのがいい。そして笑顔antonの一言が(談)でマンガのうさんくささに謎の粉をかけているのがさらに良い。最高。「この技ができるのは私とタイガーマスクと○○」の記述が出るたびに微笑みを禁じ得ません。

後半に行って出てくるのも一応名前を知っているレベルのレスラーではあるけれども、やっぱり前半に比べるとパワーダウンしている感じはするよなあ。ちょこちょこ引き抜き合戦の舞台裏とかが正当化されているのがなんともなあという感じ。

の中で、アブドーラ・ザ・ブッチャーのキャラは相変わらず強烈でちょっと笑ってしまう。ヒールだけれどもちゃんとマンガの中でおいしい役割持っていくもんなー。この書影の第1巻を飾るにふさわしい説得力があると思います。