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ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

 

村上春樹の小説は久々に読む。以前よりちゃんと読めるようになったんじゃないかなあなんて思いながら読み始めて、相変わらず面白いなあと思うが読めている自信がない。ので読めないながらに感じたことを書く。

 

大変な謎が冒頭から投げかけられ、その謎だけでもう小説を読み進めたくて仕方なくなるのだが、最後までたどり着いたところで謎の中心点は未解明で宙に投げ出されたままだ。読者に明確に受け渡されるのは、多崎つくるが想像の中で導き出した謎の解明とは到底言いようのない解釈に過ぎない。

この小説にはその他にもたくさんの問いかけがあり、思わせぶりなフリがあり、オチのない話が並んでいる。小説を読んでいる以上、欠落があればそれに対する明快な解答があることを期待してしまうのは、仕方のないことなのだと思う。だがそれらの多くには明確な解答がないまま、読者の自分は宙に放り出される。

その切実さは大いに違っているけれど、それはもしかしたら、突然暗い海の中に放り出された多崎つくると似たような境遇なのかも知れないなあ、と感じる。最初にこの本を読み始めたとき、仲間から切り離されただけでなぜ主人公が死の危機に襲われられなければならなかったのか、いまいちピンとこなかった。でも一冊を読み終えて、彼は何と暗く冷たい海を泳ぎ切ったのだろうと、死に瀕した外見まで変わってしまった彼の苦難に、素直に納得することができた。

彼が手にした謎の解釈は、客観的でも何でもなくて、理屈は通っておらずになんの必然性もないけれど、それでも、彼がその解釈にたどり着いたということそのものが、感動的なことに思えた。

 

うーん、ちゃんと精読をする力を身につけねばならんなあ……