ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

バスキア

 

バスキア(字幕版)

バスキア(字幕版)

 

画は見たことがあるけれど、実際どんな人かはあんまりよくわかってない。というかアンディ・ウォーホルさえろくに知らない美術素人なんでしょうがないよね。

実在の人物を描くとき、どこまで脚色して物語としてのわかりやすさを担保するかどうかはかなり重要な問題だと思うんだけど、自分はどうもボーッと見てしまったなあ。そういやこの監督は『潜水服は蝶の夢を見る』の監督なのね。なるほどなんとなくわかる気がする。

でまあ、あんまりストーリーの筋がわかんない代わり、その代わり豪華キャストの芝居を延々見続ける。っつーかなんでこんな有名な役者ばっかり出てくるんだ。謎。謎だけどすごい面白顔役者が揃ってるのでそれだけで楽しい。

あとこういう作品はアート界隈とドラッグがどういう空気感でどこまで密接に関わっているのか、もわかんねーからどうも細部が抜け落ちているような気がしてならないなあ。

新宿鮫1

 

新宿鮫 新装版: 新宿鮫1 (光文社文庫)

新宿鮫 新装版: 新宿鮫1 (光文社文庫)

 

不夜城』が劇的に良かったので、じゃあその近辺の……ってことで読み始めたんだけど、うーん、思ったよりもピンとこない。『不夜城』は新宿という街そのものの裏側に根を張っている目に見えない力関係とその仕組みが興味深くて、キャラクターが必然性で動かされていく感じが大変面白かったんだけど、この小説においてその役割を果たすのが警察組織のアレやコレやなんだろう、というのはわかる。で、そこら辺の雰囲気がかなり頑張って描かれていて、好きな人は好きなんだろうなあ、でもオレ全然興味ないんだなあ。

あとは結構ストーリーの語り口の問題もたぶんあって、主人公の行動がラストになって返ってくる辺りとかかなり理知的な脚本で、ヒロインのライブがクライマックスになるようなお行儀の良さがどうも気に入らないなあ、ということなのかもしれない。アウトローを描く小説であるならば、脚本の線も思いっきりブン回して欲しい。いかにも伏線の狂言回しというような警察マニア君の描写も、いかにも遊びという範囲を出ないままに作品を的確に彩っていて、想像の範囲内にピッタリ収まってしまっている感じ。

続きを見たいと思える魅力が主人公にあるかと言われると、うーん、微妙だなあ。シリーズも長いし、こっから先どうしよう……迷う。

醜聞

 

<あの頃映画> 醜聞(スキャンダル) [DVD]

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骨太黒沢ヒューマンドラマ! なんだけれども、この話の骨太さはいくら何でも骨太すぎませんか? 途中で真の主役が弁護士である辺りの意外性は「おっ!」って感じだけど、全体的にストーリーに捻りがなさ過ぎるように感じるのは、法廷もののドラマになれすぎてるからなのかなあ。ラストの告白一発でひっくり返る話って、いくら何でもシンプルすぎるような……

しかしまあそんなシンプルな筋書きで殴り来る黒沢明の演出の冴えったらないわけで、まずもってストーリーには直接的な関与のない娘の描き方が堪らん。結核美女の襖を開けたらそこには花嫁衣装が、って悪魔か! なんてあくどい演出! いつぞやの「ハッピーバースデー」を彷彿とさせる「きよしこの夜」もキレキレで素晴らしき哉、人生! いやはやあのツリー持ち出しをバイク運びカットから地べたに寝そべり星を見上げるシークエンスの素晴らしさったら溜息しか出ませんね。法廷劇はできるだけシンプルにシンプルに、弁護士にだけ物語の焦点が当たるように焦らして焦らしてお話を盛り上げて、ラストで地上の星が生まれる瞬間を見つけちゃうわけでしょ? もー、なんなんだよあの「台詞を用意していました!(ドヤ)」みたいな名言。もうこんな力業されたら屈服するしかありません。

エスケープ・フロム・L.A.

 

うーんどうしようもねえな。この顔ぶれでカーペンターでどうしようもない映画。うーん、大変な味わい深さである。冒頭のCGで「おっ!?」と思わせてからのしょーもなさだもんな。ラストの「わっはっはそんなしょーもないオチですか」って展開も含めて、うん、大好きです。

しかし『ニューヨーク1999』の記憶が彼方であんまり覚えてないんだけれども、さすがに突然バスケットし出すような話じゃなかったよね? 歳を取ったスネークがいったい何を見せてくれるのか!? と思ったらバスケットはじめて爆笑した。いいなあスネーク。もう何したって面白いもんなあ。

うーんと、なんだろう、この映画。特に付け加えて感想いうようなことあったっけ? 別にないよなあ。いつもボーッと見ててももう少し言いたいことが出てくるんだけど、この作品に対してはもう想像したラインのダメさが想像通りに出てきて、うん、特に書くことないです。もーね、ジャケット見ただけで面白いもんね。ずるいよなあ。

ハリーの災難

 

こりゃまたどーしょーもない話だな。ヒッチコックの話って、『北北西に進路を取れ』みたいなスペクタクルもないわけじゃないけれど、個人的にはこういうこじんまりとした話が好きです。いやそれにしたってこの話の(オチまで含めた)どーしょーもなさは、ほんとどーしょーもないと思うけど。

ということで何度も埋葬される男の話。大きなストーリーがない、というか全部お約束の上で話が進んでいくもんだから、いかにもヒッチコックな小技を堪能するような作品になっているよなあ。普通に考えたら、掘ったり埋めたりの繰り返しこそこの脚本のキモなんだし、そこでどのような会話やユーモアを発揮するか、というのがテーマになりそうなもんだけれど、今回はそこまでたっぷりそれはやらない。むしろ編集でカッ飛ばしちゃったりする。まあ、ヒッチコックらしいといえばらしいよね。

それにしても驚いたのは冒頭の自然の美しさで、いやー、ヒッチコックの映画ってスタジオで撮ってる印象が強くて、あんな綺麗な自然の画とかない印象だったので、一瞬ヒッチコックの話であることを忘れてしまったよ。そのあとすぐに例の足裏カットで「ヒッチコックだ!」って安心したけどね。

しかしなー、機会があれば全力で見てるヒッチコックだけど、まだまだ観てない映画が多いなあ。もう少しモノクロ時代の作品に触れたい。

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

 

前の『アベンジャーズ』って一応見たけどマーベルシリーズ追ってなかったものだからだいぶ話の内容がわかんなくて「うーん派手だけどあんまり良くわかんねーなー」というのが正直なところだった。トール・ハンマーの人がなぞだしキャプテン・アメリカって全然強そうじゃなくてなんであの立ち位置なのかよくわからない。っていうか目的とか敵とかもイマイチピンとこないなーでもNYはやられかけるのね、みたいな感じ。

その点『エイジ・オブ・ウルトロン』は筋書きがシンプルで、AIの恐怖を描くというのは大変今風なテーマだし双子の能力者はなるほど強さと目的がわかりやすいしハルクのドラマってすげーシンプルだけどその分なんの文句のつけようもないし、とまあ徹底的にストーリーが面倒臭くなくてよろしい。単純に「いいAI」「わるいAI」として割りきってしまうことにSF的な不満がないわけじゃないけど、まあそれはエンタメな映画に落とし込むときに多少はコントロールしなきゃいけない部分だからしょうがないよなー。

まあ何にせよ、起爆装置を守るカメラグルグル勢揃いカット、あれを表現できただけでもこの映画は価値があるという。作品を一言で説明できるカットが、しかもきちんとアレだけ見栄えのする手のかけ方で存在するというのは、エンタメ映画にとって幸福なことだよなあ、と思います。

ヒックとドラゴン

 

これトリコじゃん! 『人喰いの大鷲トリコ』をスケールアップさせつつ誠実に物語を追い求めた作品だよ! あのゲームに足りなかった要素が全てここにある! というとたぶん大嘘で、むしろトリコはむしろ要素を削ぎ落とした部分に作品としての面白味を見いださせようとしたのはわかる。わかるけど、ここまでウェルメイドなストーリーで短い尺でドラゴンにも感情移入出来るような作品を創られてしまうと、あー、やっぱり物語って強力だなあと思わされる。

いやまあとにかくちゃんとできている。オチコボレが異世界からの他者と出会うことで変化して、その変化が自分をオチコボレと見做していたコミュニティまで変えてしまうという、圧倒的に正しい物語の骨子。と、それをきちんと成立させる演出。はい、もうそれだけで好きです最高です。あの短いモンタージュシーンで仲間たちの性格を手際よく説明して印象づける辺りとか、まさに職人芸といった感じ。

何より素晴らしいのは相棒のドラゴンの描写で、彼の持つ強力な特殊能力を冒頭できちんと示しつつ、しかしコミュニケーションをとり愛情を抱きやすいスケールで物語を薦めたのが本当に素晴らしい。サイズがあの2倍だったら、冒頭の親密度上げるエピソードの説得力がだいぶ違っていたよねえ。エサから自作尻尾でお互いを理解していくあたりのアイディアも素晴らしく、いやー、トリコもそこら辺をもう少しハッとする感じでできなかったのかなー、なんて悔しく思ったり思わなかったり。