ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

starwars.disney.co.jp

「なんでデス・スターってあんな呆気なくやられちゃうの?」という疑問に対する解答を後付けかなんかしらないけれども説明する、というアイディアは満点なんだけど、その他の場所にこれっぽっちもエキサイティングな場所がなくてゲンナリ。去年もだいぶ「エピソード7」でアレコレ言ったけど、映像的に新しいところがないなりに、隅から隅までしっかり意識の張られたファンサービスの映画になっていて、脚本上にも色々と工夫があった。でも、本作品の志の低さというか、「とりあえずスター・ウォーズっぽいものを撮ってみました」「ストーリーを盛り上げるために色々なものを引っ張ってきました」感は異常。

前半はたるいけど後半がイイ、みたいな前評判は聞いていたけど、前半ダメなら後半もダメだよねやっぱり。ってか各キャラクターへのエピソードの練り込みが足りなさすぎて、なんでこいつら一緒に行動してんのかサッパリわからん。後半のお涙ちょうだいエピソードも、彼らがどういう行動原理で行動しているかの掘り下げ(というか細かなエピソードの積み重ね)がないから「ストーリーの盛り上がりのために殺されている」という感じが半端なく、いやーあの無理矢理ストーリーにはちょっと騙されきれないよなあ。

ってかさ、この話って基本的に「目の前に爆発の余波が! ヤバイ! ギリギリ逃げ切れ!」みたいなザ・形式的エンターテインメントなんだから、ラストでわざとらしく人を殺してもエンターテインメントにしかならんでしょう。エンタメで生かせる人間を殺すって展開には何らかのエクスキューズというか工夫が必要なわけで、そこら辺のリアリティレベルのコントロールに失敗しているのが本当にきついっす。

俺たちニュースキャスター

 

Amazon検索して貼り付けようとしたら「ジャック・ブラック」って書いてあって「え?」と思ったけど、あー、バイカーの男役かよ! ダニー・トレホも出てるしなんか端役がおもろいなーとか思ってたけど一番ビビったのは監督これ「マネー・ショート」の人ですか。わーお。

見始めはもう全然のれなくて、たぶんこれコメディなんだよね? でも何が面白いのか全然わからん。やっぱり言語の理解力が足りないのがマズいの? とかかなり不安だったんだけど、チューニングが徐々に合ってくるというか、後半になると4人のやり取りで終始爆笑しているような感じ。お天気おじさんの理解度が高まるほどおもしろい。笑えるようになったのは中盤の大乱闘シーンからで、そこでやっと「あーうんこうやって見れば良いんだよね」という見方がはっきり定まった感じなんだけど、あーやっぱり遅すぎ? クライマックスの過剰演出なんかは笑いが止まらなかった。

でもなー、これって主役のバックグラウンドの理解度に依存している気もするよなあ。あのオープニングで女性進出の立て付けで、どのように見れば良いのか全然わかんなくて前半損した気がします。

りゅうおうのおしごと!

 

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

 

どうもこんにちは。将棋警察です。

かなり勉強していて普通に読む分には全然問題ないし、例えば盤外戦術の細部とか、当事者視点からしか見えない描写がきちんと入れ込んであって、「さすが白鳥先生取材してるなあ」と感心する。いや本当に良く書けていると思う。

がだからこそポリス的には微妙な差違に突っ込みたくなってしまい、いやいやそこはまーいーじゃん矢倉という戦型をどう捉えるかはそれぞれだし、相懸かりも浮き飛車vs引き飛車の定跡は整備されてるとか超野暮な言い様だし、振り飛車と矢倉の穴熊の概念の微妙な差違を指摘できるほど棋力はねーし、とか色々自分を脳内説得する必要が出てきて、まあ普通に楽しめずに困る。序盤で強調しているネットスラングに親しむ棋士という描写も、まあ今ならきちんとその生っぽさを出さなきゃいけないのはわかるし、「いやーそのネタはあんまり棋士へのリスペクトがなさ過ぎでは?」「金玉ネタとか笑ってるの小学生だけだと思うんですけど」みたいな反感も別に人それぞれだし別に良いじゃん! みたいな?

けどさー、竜王の対局描写ははっきり失敗しているよね。素人に伝わりづらい内容を文字媒体でどうやって伝えるか、というのは音楽ものでも料理ものでもジャンルものの宿命だと思うんだけど、台詞の応酬の中一人称で素人に説明する体で進むあのやり方ははっきり悪手だと思う。弟子のラスト対局は、そこに両親を引き入れて解説者の立場だったので上手く回っただけに、うーんこれから高度な内容をどうやって表現して行ってるんだろう、と大いに疑問。『月下の棋士』を引き合いに出すのはアレだけど、「駒が光ると強い!」みたいな描写って将棋の内容から飛躍したところで説得力が生まれるわけで。ある程度将棋内容を伝えることを無視してても、表現そのものの感情移入を高めていった方が、良い結果が出るんじゃないかなあ。

カルト

 

カルト [DVD]

カルト [DVD]

 

ノロイ」の全体のコントロールが素晴らしかっただけに、それを見た後だとかなりきついなあ。フェイク・ドキュメンタリーはちょっとした質感・細部の詰めでこんなにも感触が違ってしまうのかあ、と愕然とする。

まずなにより、主演3人の芝居がツラい。いやまあ普通の作品だったらあの芝居で成立するんだろうけど、でもこの映画って芝居をしないことを演じなきゃいけないわけで、最初の会話からモロに失敗してるよなあ。3人組の会話のわずかなわざとらしさに、「あーこりゃダメだ」といきなりゲンナリしてしまうのが、自分でも意外。

脚本は中盤以降の霊能力者ネオが面白すぎて「わっはっは面白い」となるんだけど、それまでの脚本の展開をどう読めば良いのかわからないのも苦しかったなあ。CGが馴染まずに「え? 何コレ?」と作品中から感覚的に放り出されてしまう。どこまでリアルなものとして作品を受け取れば良いか、という感覚が定まるまでが結構長くてもったいないよなあ。

あとはなー、ディレクターの存在感の薄さもちょっともったいないよなー。人物の役割の整理がうまくいってないんじゃないかなあと感じる場面が多々ある。

後半の超展開はそれなりに楽しめただけに、「アレで終わり!?」感はやはりある。あそこまでぶっちぎってくれるとそれはそれで良いんだけどね。

ヒットの崩壊

 

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

 

あ、これ面白い。内容は「音楽業界」の出来事を描いているけど、もっと広い意味で様々なジャンルにおける「ヒット」に援用できるよね。Webがスマホと連動でどのように商売の構造を変えたのかとか、例えばアニメとか小説とか、色んなジャンルに応用が効く話なんだと思う。

ただ個人的には日本固有の音楽を探る歴史なんかのパートが一番興味深かったりするんだよなあ。過去と断絶された今、自分にしか表現できない作品を世の中に送り出すことの意義もよくわかるんだけど、自分はむしろそこをある程度体系的に把握していくことに好感を抱くので、こういう歴史的なバックグラウンドをどうやって蓄積させていくのか、というのは課題なんだろうなあ。いや全然違う話なんだろうけど。

でも面白いのが「国民的ヒット」が出ない理由と対照的に、国際的な「モンスターヘッド」が生まれてきた状況をきちんと描いているのが大変示唆的。ピコ太郎の話はちょっと間に合わなかったなあ。でもピコ太郎のPPAPが英語歌詞でヒットしたのはやっぱり示唆的かも。Webという媒体を生かすためには、言語の壁を乗り越えることが急務なんだろうなあ。オリンピック間近なこともあって結構身につまされる話だぜ。

英語やろう、英語…

ダラス・バイヤーズクラブ

 

ダラス・バイヤーズクラブ [Blu-ray]

ダラス・バイヤーズクラブ [Blu-ray]

 

あーもうこれズルい。本当にズルい。

メキシコでのHIV臨死体験を経て生まれ変わった薬中アル中カウボーイが有能さを発揮して新たな商売を始めるんだけど、それは利益度外視で自分のように死を目前にした人間に人間らしく余生を送る術をサポートするためで、相手は巨大な製薬会社と政府で、みたいな枠組みを事実を下敷きにされてやる時点ですいません参りました、って感じなんだけれども、それより なによりカウボーイとゲイの関係をこんな風に描かれたらもうそれズルすぎてダメでしょう。だってどーしたって思い出すもん最初のカードのエピソードとか。ベッドの上でカードがあんなに美しく記憶に残るんだもん。すごいよ。たまんないよ。このジャケット見ただけでもう涙浮かべちゃうよ。

主役の芝居も良いけど、体型が輪をかけてすごいよなあ。メキシコでのベッドでのほっそりとした体つきは思わず自分の目を伺ってしまった。体調不良と回復を繰り返すその芝居に、もう私かぶりつきでございますよ。

あとは構成が大変気が利いていて、余命を字幕で刻むあの演出がここまで機能している映画はなかなか無いんじゃないかなあ。

誰よりも狙われた男

 

誰よりも狙われた男 スペシャル・プライス [Blu-ray]

誰よりも狙われた男 スペシャル・プライス [Blu-ray]

 

あーこれなんか『裏切りのサーカス』思い出すなーと思ってたけれどもやっぱり原作者同じなのね。けどそれに較べるとずいぶん話がわかりやすいというか、ボーッと観てても楽しいくらいの脚本難易度に収まっている感じがしました。

けどなー、こういうスパイ映画の面白さってやっぱりブン回され感にあるんじゃないか、という気もするわけで、ここまで懇切丁寧にやられると逆にこう不安になる。もっとワケわかんなくしてもらっても良いんじゃないですか、とか。グルグル話が回らない分、むしろフィリップ・シーモア・ホフマンの人間的苦悩とかに焦点が当たるつくりなんだと思うし、その意味でラストの叫びとヨロヨロフレームアウトしていく様は確かに強烈に心に残るけど、しかし全編を通してそこまで感情移入したか、といわれると全然そういうことはないわけだしなあ。

っていうのも、なんかあまりにも救われない話だったもんで、なんか納得のいく落としどころを見つけたいなあと思う自分の我が儘な欲求なのかもしれない。がしかし、やっぱりもう少し見せ場というか「これぞ」という何かが叫び以外にもあっても良かったんじゃないかなあ、とは思いました。

やっぱ『裏切りのサーカス』のラストのスーパー外連味はションベンちびったもんなあ。