ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

果てしなきスカーレット

scarlet-movie.jp

いやーきっつい。超キツい。これが日本を代表するアニメ監督の作品なのかーという感じがある。

 

戦を繰り返す支配者と搾取される老人みたいに単純化された地獄(じゃないんだろーけど一応そういう言い方もされてたのでそうしておく)が中東をモチーフにしているのが決定的にヤバい。今現実に争いが起こって人が空襲でバンバン死んでいるその土地を、「憎しみの連鎖が行われている場所」として単純化して描くその感覚。いやそれ憎しみの連鎖とか単純な状況に還元して描いていい場所じゃないんじゃないのマジで。例えば巨大な「壁」を倒して難民と戦士の戦いが起こるみたいなシーンがあるけれども、あの演出だと「分離して争いを防ぐための防壁」としての機能が強調されちゃっているわけで、イスラエルの壁がどのような経緯で作られてそこでどんな悲劇が起こっているか考えると、ちょっとあり得なくないか。(余談だけど、小説の『World War Z』とか思い出しちまうよね)

で、そのヤバさを強調するのがデンマークのお姫様、というかその立ち位置の下敷きになってるらしい『ハムレット』、というかその作者シェイクスピアを生み出した国イギリスだよね。お前の二枚舌だか三枚舌外交のおかげでイスラエルにそんな紛争の種がまかれたワケじゃん? そんな帝国主義的な属性を纏ったお姫様が、復讐の化身となってその場所を「地獄」と認定し、自分の都合のためにガンガン剣を振るっていくの、ヤバいでしょ。絶対ヤバいよ。

でもさらにさらに決定的にヤバいのは、復讐の化身となった姫様を現代人の価値観で啓蒙してしまうのが現代からやってきた日本人ってところだよなあ。それ、マジでそれ厚顔無恥すぎないですか? 平和ボケした日本人が救命技術で「争いはやめよう」「平和が一番」ってジジババの背中に絞ったタオル当ててるレベルのことをしていると、復讐に取り憑かれたが改心して平和の大切さに気づき、紛争に満ちた中東、じゃなくて地獄(っぽいもの)に平和がもたらされるんだぜ!! やったねLOVE&PEACE!! これで姫様も愛を知って正しい道徳に目覚めた!! でも自衛のためなら戦闘も許可します!! さあ平和と安定のために自衛隊を派遣しよう!! 日本スゴイ!!

いや、さすがにこれは現実世界の単純化が過ぎるでしょ。こういう世界感の人間が説く愛だの平和だのを、このレベルの大作にしてしまうの、まじでどーなのよ。

 

この作品におけるあの地獄っぽい場所って、監督の「理想のお芝居」が表現できる世界なんだよなあ。だから姫様に内面はなく装置として復讐を行うし、世界状況やキャラの配置はストーリー展開にめちゃくちゃ都合良くできてるし、正義の執行者としての竜がいる。まー表現の方法としてはそういうのもアリだと思いはするんだけれども、その世界が自分に都合の良い「理想のお芝居」であることに対する自覚や恐れが感じられないの、根本的にやべーと思うんだよな。

もし、ストーリーを通じて現実に異議申し立てをすることの力強さや危うさを作り手側が知っていたら、もっと自分の作っているものに疑問を抱くでしょ。あんな「絶対正義の父親」とか「わかりやすすぎる悪役」とか、あと「美少女の導き手としての自分の化身」みたいなのには、ある種の躊躇があってしかるべきだと思うんだよ。ストーリーの都合のために駆動するキャラクターとして、「美少女ヒロイン」を置くことの罪に、作り手側がもっと向きあうべきだと思うんだよ。「理想のお芝居」に駆動され、主体性を消された状態で、声の限りに叫ぶ芦田愛菜、オレは本当にキモかったよ。

もしくはあのラスト、自我に目覚めた姫様が、操りの糸を断ち切って、出来合いの恋愛によるキスシーン(!)を蹴飛ばして、作品の薄っぺらな道徳的化身であるドラゴンをブチ殺す話が見たかったよ。心の底から見たかったよ。

 

現実に戻った世界で、その「理想のお芝居」体現する存在となった美少女ヒロインが、母親と和解できなかったのが象徴的だよね。男連中は贖罪のように都合良く命を絶たれて、でもたったひとり、自分には全く理解できない「他者」である母親は、放置されるんだよなー。母親との関係を見直すこともできない「理想のお芝居」に何の意味があんの?  ストーリーのコマとしての「美少女」じゃなくて、もうちょっとちゃんと他者としての「女性」に向きあった方が良いんじゃないの? マジで。

うさんくさい国民がいくら称賛の声を上げたところで、それは作り手の妄想にしか見えなかったよ。あるいは逆にラストシーン、あの青空に竜の雲でもあってくれたら納得がいくんだけどなーと、オレは本気で思ってる。