うーん……求めていた内容とはちょっと違ったな……
なんかこう、カスハラの背後にある心理的な働きを、個別の事例を範にとって細かく分析するのがメインかと思ったんだけれども、それよりもむしろ広く全体的な見取り図を示した本って感じで、この前読んだNHKのカスハラ本の延長線上って感じがした。あそこで取り上げられてた当事者のインタビューで、ひとつの類型にクローズアップしすぎてちょっと怖いなあ……と思ってた部分が、もうちょっと違う方もありますよ、というのが触れられていて、その辺りは良かったんだけれども。客観的な事例・分析だけではなくて、実際にその人がどのような思考回路でカスハラを行っているのかが、当事者目線で辿れるような物語が用意されていることは、心の準備をする上で大事なのかもしれないなあ、とは思った。
とはいえ筆者が実際カスハラ問題に取り組んで活動していることもあって、こういう新しい問題に社会で取り組んでいくときにはどのようなことをすれば良いのか、というのが全体的にまとまっていて、その点ではとても面白い。かつてストーカー問題に取り組んでいたということで、経験があるのも大変良い。カスハラを行っている人間の心理を深く読み解いたところでそれが現実の問題解消に直結するとは限らないわけで、当事者としてはこのような本の方がむしろ助かるのかもなあ。