色んな意味で年月を感じる作品だった。
前作はかなり若さ溢れる企画で、文字通り体当たりでファーストフード業界に風穴を開けた作品だったけれども、年月を経た監督がそういう企画に自ら飛び込むのは辛かろう――と思っていたら、いやー、まさか自らがファーストフードチェーン店を経営するというアングルで映画を組み立てるとはなあ……
いやまあ、すでに様々なドキュメンタリーで畜産業界のヤバさみたいなのはガンガン告発されていて、この映画で取り上げられたブロイラーの非人道性みたいなのも、大体知っていた内容ではある。でもそれは逆に言うと、あらかじめある程度の反応やらハレーションやらは見込めるということで、いやはや本当に老練なドキュメンタリー映画という感じ。
面白いのはこの映画、自らがチェーンを立ち上げるという点で、コンサル的な視点に踏み込んでいるところだよなあ。敵に挑むようなアングルをつくっていくドキュメンタリー作品も多いけれども、それって敵を過剰に悪魔化しがちなところがあって、しばしば危うさを感じる。それに比べると、自らが資本主義社会の一員として、詐欺紛いの商業活動を行っていくこのアングルは、大変大人っぽくて、逆に色んなことを考えさせられる。そういう意味でも、老練なドキュメンタリーだなーと思いました。