三船敏郎のリメイクは見たので、戦時中に撮ったバンツマの方。
映画館の10時からやってるヤツで見たら、冒頭で結構たっぷり解説のドキュメンタリーが流れてたんですよ。それが本当に良くてねえ。三船版を見た時に、ちらっと戦時中の検閲の話は目に入ってたんだけれども、そのバックグラウンドが最高に印象深い。
軍部の検閲に対してどんな思いで作品をつくっていたかとか、突き返されてハサミを自分で入れるときの無念さとか、何重にもディゾルブしたシーンからヒロインの姿を切らなきゃならなかったとか、まあ色々胸を打つパートはあるんだけれども、やっぱり一番印象的なのは園井恵子の手記だよなあ。軍人の寡婦に恋してしまった、無法松の人間らしいシーンがことごとくカットされて封切りされて、「試写で見た時とは違う映画になっていた。これじゃ松さんが可哀想」というのは、映画を見終わった自分にはまさにその通り! という感じだったし、そりゃ三船敏郎でリメイクしたくもなるよなあ、それで海外で賞も取れて良かったよなあ……
いや、それだけ三船敏郎版の『無法松の一生』が面白く、印象に残ってるってことでもあるんだけど。阪東妻三郎も悪くはないんだけれども、あの最高に人間くさい三船敏郎を見たあとでは、どうしても見劣りしちゃうよなあ。あ、あとトーキーになってから、バンツマが声の甲高さで人気が落ちた……みたいな話がドキュメンタリーであったけど、確かにそれもちょっと納得の声色だとは思った。