ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち

 

ちゃんと調べてあって興味深いけど、時間のない人は最後の方のまとめを読めばOKって感じだな。そのくらいキッチリ看取り図が示してあって良い。

20世紀において農業は飛躍的に進歩したのは良く言われるし、ハーバー・ボッシュ法が食料供給を大きく変えた、というのもいくつかの文献であたったけど、それと並行してトラクターの導入が農業の大量生産の象徴だったという視点はなかなか抜け落ちがちなので楽しかった。直近で読んだ「カムイ伝」でも、堆肥の回収がひとつのテーマになっていたけれども、牛の糞尿がそのまま土壌に栄養を与えていた、みたいな視点は全然なかったので、なるほどなーって感じ。草の代わりにガソリンを動力源とする、だけじゃなかったのね。そしてその延長線上に帯水層を使った持続不可能な農業もあるわけか……

あとは、同じ大量生産への舵切りについても、資本主義と共産主義の下で全然進歩の仕方が違ったんだなーというのも大変面白い。やっぱり20世紀は冷戦の世紀だったんだなー。東西に分かれたドイツの状況が触れられているのもなかなか面白い所だよねえ。そして日本のヤンマーが世界で戦えているというのも大変面白い状況だよな。世界は大規模な農業できる場所ばかりじゃないもんねえ。

あとまあ難しいところだけれども、土壌圧縮とその解消についてのあたりは、もうちょっと科学的な観点からの補足が欲しかったかなーとは思う。ま、そこは贅沢かな。