おー、そこに目をつけるのかー。ちょっと扱いが難しそうなテクノロジーのトピックスを題材に序盤の物語を転がしていくのもかなり良い。大きな力を手に入れてしまった主人公が、それゆえに困難に巻き込まれるというのはヒーローもののテーマと共通するところがあるよねえ。良かれと思って行ったことが炎上のきっかけになってしまったりとか、そういうコントロールできないネット社会の恐ろしさみたいなのは良い感じに出ていたと思う。
ただまあ中盤以降の展開はずいぶん食い足りないかなあ。キャラクターの内面にコンフリクトがなくて、作者があらかじめ用意していた正解に葛藤なくたどり着いていく感じが物足りない。これだけ大きな力を手に入れたら、外的な障害だけではなく、内的にも何かに苦しんだり見方が変わったりして欲しい。主人公君がちょっとお行儀が良すぎて、作者の代弁者みたいなイメージが強すぎる。
あとまあアサンジウィキリークスとか、マインドハッキングとか、あそこら編の本を読んだ後だと、日本の公安が味方になって、しかも日本の草の根的メディアが告発の先頭に立つ……という後半の筋書きは、まーちょっとリアリティがなさ過ぎる感じはする。「内部告発よりも公益が優先する」みたいな言説、日本じゃ全然真摯に受け止められないでしょ。前半はまあ現実の出来事に沿ったなんやかんやを引っ張ってきたのに、後半からストーリーを上手く落とし込むためにだいぶ甘めにつくっちゃったなーという感じがするなあ。
もうちょっとギリギリ対立させて緊張感高めて物語を盛り上げて行って欲しかったぜ。