ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ファイト・クラブ

 

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

ファイト・クラブ〔新版〕 (ハヤカワ文庫NV)

 

映画の内容なんてとっくに忘れている今あえて読む。といっても映画の大ネタはもちろんおぼえているわけで、するとまあ当然最初の読書からこの作者が文章の中で何を狙っていてどういう効果が生まれていくかをかなりしっかり読むことになりますよね。特に序盤の映画リールにポルノコマを差し込む辺りの描写がもうめちゃくちゃ秀逸で、この作品のふたりの男の視点が細切れになって互い違いに挟まってというのが、お互いのエピソードが強烈であるが故に全然違和感なくクロスカッティングされているのがうへーという感じ、なんだけどそれが映画のリールの入れ替えの暗喩でもあるのがうーんたまらんですね。もうあの章だけでもお腹いっぱいという感じ。『サバイバー』でも変なことをやっていたけれども、技法がこんなにわかりやすくストーリーと相互作用を起こすんだなあ、と納得感が大変高いです。

でもまあ、読み終わって思うのは、こんなテクニカルなシーンが大変印象に残る小説を、よくもまあ映画にして、しかもあんなに面白くしたよなあと言うところだよねえ。もちろん個別のエピソードの質は高くて、しかも「ファイト・クラブ」という大変暴力的で魅力的なアイディアの秀逸さはあるのだけれども、でもさあ、こんな叙述をメインにした小説をよくもまあ映像にしたよなあデヴィッド・フィンチャー。『虐殺器官』は悪い意味で原作を読み直したくなる映画であったけれども、こっちは良い意味で映画を見直したくなる小説であった。