ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

モモ

 

モモ (岩波少年文庫(127))

モモ (岩波少年文庫(127))

 

今更読むシリーズ。そしてさすがの名作。

こういうのはもっと早く読むべきだった、と思う一方であまり早くてもどーせわかんなかっただろうなあ、というのも確かに感じる。少なくとも『「ものづくり」の科学史』読む前は「あーはいはい金を時間に置き換えてファンタジックな見え方にしちゃったワケね」とひねた見方とかしてみちゃって全然ピンとこなかっただろうなあ。規格の標準化と「科学的管理法」で、それまで当たり前だった職人の時間の使い方がどのように変化していったかをなんとなく知っていたからこそ、この物語の比喩が単なるレトリックではなく、もっと根本的なレベルで世界の変化を捉えようとしているのかが察せられる。

それにしても文章が素敵でビックリしてしまう。読みやすく想像力を刺激しやすくそして美しい。クライマックスの花が舞うシーンのイメージなんてもう本当に溜息もの。いやー、よく時間なんて目に見えないものをアレだけ印象深く描けたもんだ。自分は小説を読むときに情景描写をなんとなく雰囲気で飛ばし気味なのだけれども、この本に限って言うと一字一句咀嚼して堪能する感じで読みました。

あとは作者の物語への信頼がとても良い。ジジは物語を裏切ることでエンディングからも消え去るとても寂しい結末を迎えるが、逆に考えれば人間性を手に入れるために必要なのは物語を語りつづけることであるとも言えるのではなかろーか。だから進み行く列車の中で「未来に起こる出来事かも知れない」と物語るあとがきが、一際味わい深いものになるのであった。