ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

SRサイタマノラッパー2女子ラッパー☆傷だらけのライム

 

SRサイタマノラッパー2女子ラッパー☆傷だらけのライム [DVD]

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な……なんやこの傑作映画……いやまあ1もまあまあ良かったし3には度肝を抜かれたんだけど、まさか2がこんなに素晴らしい内容だったとは……。映画としての構造の強固さというか仕掛けの素晴らしさはこれが一番好きだなあ。

このシリーズ、どの作品も地方都市から出られない人間の悲しみを上手いことすくい上げているのだけれども、今作品の主人公は一度夢を失った女性というのが抜群に強い。コンニャクを洗って原付で配達をしているシーンだけで、シリーズの他の作品に比べて抜群に「どこにも行けない」感がある。他の2作は辛うじて微かな微かな「彼らがどこかに行ける感」を見出すことは可能だが、母を失い父と共に祖母の介護をするこの作品の主人公はマジで「どこにも行けない」。そんな絶望的にどこにも行けないヒロインが、十年前の学生時代のラップを思い出して再起を図ろうと決意するとか、もう本当にTKD先輩が罪作りすぎる。どんだけ悪魔的なトラックメイカーだったんだ。

でまあ、その圧倒的に強固なヒロインの閉塞感を、あのクライマックスに誘導する構成が溜まらん。離散パートで自分たちが過去へと逃避していたことが明示されTKD先輩の写真を葬る、というのは普通の話。問題はそこから歌詞を書き換えヒップホップによって現状を肯定するにはどう話をもっていくかってところで、SHOGUNのふたり組がトラック持って再臨するのが呼び水だってのはまあ予想の範囲内。

でもクライマックスを母親の三周忌の親戚のハラスメントみたいなところに絡めるのは上手すぎません? 「そろそろ結婚しないの?」とかのナチュラルに首を絞める感じで現在が主人公を圧迫しているのをこれ以上なく強く印象づけて、そこから縋る希望としてのラップが現れて、現在進行形に書き換えられたエンディングまで一気に繋がるわけでしょ? 完璧に一点の曇りもなく正しすぎるわ。でまあ、その圧倒的に正しい構成を、ものの見事に爆発させる役者の演技。いやあ、なんなんですかねコレ。傑作すぎて拍手が止まらなかったよ。すげえ。

そしてあの最後のカットなー。コンニャク作りの日常に戻って行くのなー。そして父とラップで繋がるのなー。最初から「どこかに行くこと」が目的ではないことがしっかり明示されるのなー。うーん、脚本が強烈に自覚的だよなあコレ。