ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

わたしを離さないで

 

わたしを離さないで [Blu-ray]

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カズオ・イシグロ原作のヤツ。小説は読んでない。

いやーいきなりなんかズドンとSF設定入ってきてビックリした。あれれそんな作家の人だっけ? でもまあ話が進むとSF的な内容って全然深掘りされなくて、主人公たちの振る舞いを際立たせるための一種の状況設定って感じ。っていうかあの本編に直接は関わらない設定がぶち上げられないと、本編のこのトンデモ加減を素直に受け入れることができないよね。

しかしそれにしたってこんなトンデモ設定が素直に受け入れられてしまうのがすごいよなあ。普通「外に出られない」「常識の尺度が間違っている」学校が存在したら、そこを脱出する話になるんだろうなーとか思っちゃうわけじゃないですか。でもこの映画のストーリーではその部分って全然テーマじゃなくて、むしろそういった状況の中で生きる事に向き合う登場人物の話になっていて、観客的にもそれでオッケーなんですよね。でまあ、作品内では特殊な状況に向き合わされている彼らですが、それって結局現実世界で意識しない世界の限界に行動を強要されつつも生きているオレたちとパラレルじゃね? とか思わされしまう。だからこそ嫉妬の略奪なんて手垢にまみれた展開が身に浸みるし、意味のない贖罪を単なる皮肉と冷笑できない。いやー、なんなんだろうなあこの世界そのものの感触は。

しかしまあなんといってもラストショットが美しすぎる。風に吹かれて揺れるビニールの端の、動きがおおよそ同期しながらも微かにブレているその感じ。いやもう問答無用で見入っちゃいます。そういう意図しては発見しづらい細部が作品に組み込まれると、「うおおおおっ!」って感動が襲っちゃいますね。