ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アメリカン・アナーキスト

American Anarchist | Netflix

『アナーキスト・クックブック』っていう武器やら爆発物やらのレシピ&革命指南本があって、アメリカのテロリストやら銃乱射犯やらが参考にしてるらしいんだけど、その著者のインタビュー。本が出た時代の背景もあって、反戦運動的なアレやらヒッピー文化やらなんやらの印象が強くて、オレはてっきり情報を拡散することの不可避性とかそういうもうちょっと公的な問題に踏み込むのかと思ったら、意外や意外インタビューを受ける著者の内面にすげー深く切り込む内容で、それがメチャクチャ面白い。

というのも革命思想に傾倒していた著者はその後『アナーキスト・クックブック』と距離を取って結婚し子どもをつくりなんと今や世界中を股にかけて学習障害のある子どもの教育者として生活しているのだという。かたやコロンバインで子どもが『アナーキスト・クックブック』に影響を受け銃乱射事件を起こしているのに、である。

この映画はもう容赦なくその矛盾に切り込んでいく。編集がかなり強力なのもあるけれど、こっちが心配になってしまうくらいはっきりと踏み込む。でもって大変心を打つのは、著者もその踏み込みを受け止めようと努力しているところだ。教育者としての彼は、自分のかつて犯した罪をきちんと償わなければならないと理解している。しかし、彼は過去の自分の過ちを、どのように解釈し受け止めれば良いのか今だわからない。革命思想に傾倒していたどこの誰ともしれない若者が衝動に突き動かされて書いた一冊の本が、世界中で大量の人間の命を奪うテロリズムに利用され世界を変えてしまうなんて、一体誰が想像できるだろう? 想像できたとして、その事実をどのように自分の人生に位置づければ良いのだろう?

あまりに巨大な自分の罪に向き合えない著者の困惑が画面越しに伝わってきて、目が離せない。彼が抱いている困惑は、規模は違えどたぶんインターネットで日々目の当たりにする「過ちを認めることの難しさ」と繋がっているよなあ。