最初あまりにも実験的な導入で眠くならないか心配したんだけど、いやあいやあいやあ、話が始まるやいなや面白すぎて眠気が吹っ飛んだ。すげえ面白い。なんだこれ。岩下志麻が二役やってその役柄が超すげえ、のは前提としてある。人形浄瑠璃の芝居をどうやってやるんだろう、と思ったらああそうか演出も合わせてここまで極端にやっちゃって良いんだあ。もう画面から情念が滲む滲む。セリフも昔のアレなんで単語単語は聞き逃しちゃってる気がするんだけれど、それもまあどうでもいいやってくらい言葉そのものが気持ちいい。
でもやっぱりそもそもすごいのは原作近松門左衛門なんだと思う。いやーシンプルだけれどもこんなにグッとくるシナリオが襲いかかってくるなんて全然想像もしていなかった。拘束のしかたやらコタツの使い方やら、あとはもちろん火の用心の扉の開け方や、ああいう演出が最高に気が利いてたけど、アレも原作から引っ張ってきたのかなあ。そういえば『女殺油地獄』の映画も、クライマックスに油シーンを持ってくる辺りとか、もうすげえ演出だよなあ。人形浄瑠璃とか日本史の教科書でしか知らないし全然興味なかったけど、俄然本物を見に行かなきゃなあって感じになるのだった。