ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

オデッセイ


いやね、面白いよ。エンタメとして面白い。うん、面白い。「アポロ13」 的な知的パズルの解法はやっぱり心地良いし、頭がいい人同士の気の利いたジョークもすごく素敵だし、何より科学への信仰をバックグラウンドにして絶対に諦めない姿勢、広報の文句にもなってるけどすごくいいと思うよ。あの難しい序盤をビデオへのモノローグを軸に展開して、視聴者に通信が通じた時の感動を追体験させる構成は、良くできてるなあと思った。
思ったけど、でもね、やっぱりちょっとがっかりもしてしまうのね。例えば「ホット・スタッフ」が臆面もなく出てくるあの感じ。あるいは、70億人が純粋に帰りを待ってしまうあの下り。あるいは、中国が笑顔でアメリカに協力を申し入れするあの展開。エンターテインメントとしてそういう方法がとられえるのは重々承知しているけど、でもやっぱり、この方法論が現在のエンタメに通用するリアリティを持っているか? というとそれはちょっと難しいんじゃないのかなあと思う。
主人公が独身、というのが気になるのよね。「なぜ地球に帰らなければならないのか?」という問いに対して、普通は「家族」だの「愛」だのを立てるわけじゃないですか。でも、この映画での主人公の行動指針って、純粋に「宇宙に対する科学の挑戦」みたいな所に視点があって、まあそれは大変オタク的でオレはすげー好きなんだけど、でもやっぱり、そこと70億人の応援を繋げるのには違和感があって、国家レベルの協力だって、信じ切れないワケですよ。きっと地球ではネットでプライバシーが丸裸にされて、米中国家間ではすげえ水面下の取引が行われて行われてると思っちゃうわけですよ。国民があれほど笑顔で迎え入れるには、時代に応じた情報拡散の仕組みがカマされないとおかしくない? とか思ってしまうわけですよ。
もしもこれが、無限の宇宙に挑戦して旅立つ話、だったらきっと上手く消化できたと思うんだけど、主人公は結局地球に帰って科学に準じてしまうわけだしなあ。そこら辺の着地点が、奇妙に甘く感じてしまうというか。
それはオレが大きくなってしまったということなのかなあ……