ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

リプレイ

 

リプレイ (新潮文庫)

リプレイ (新潮文庫)

 

いやあ歴史に残る傑作でタイムリープと言えば、と名前があがるのも大変よくわかる。

なんといってもこいつは構造が大変ロジカルに構成されている。ループを繰り返す事で一度の人生の重要度が相対的に低下するのはこのジャンルの根本的な問題なのだが、この作品はそれぞれの回における「主人公の動機」を巧みにコントロールしている。というか、ループの仕組みがファンタジーとして語られるこの作品においては、その主人公の動機の変遷こそがこの物語の根幹を支えている。繰り返される人生の中で、テーマとなった「愛」という感情は様々にその性質を変え、作品そのものがまるで愛という感情を巡る探求のようにさえ思える。同等の超越者を出すタイミングも必然性から導き出されている。最初の妻への愛情が中途半端な形に終わってしまったのはやや不満が残るが、同じく超越した視点を持つ人間を用意してしまった時点で避けがたい展開なのだろう。

そしてまあ、なんといっても最終周でのどんでん返し! 「超越者」と「非超越者」というループものを巡る重要テーマのひとつを、こんなに鮮やかに(そして決定的に!)描くとは!

あの瞬間を体験することができただけで、読んで良かったと思える本だった。