ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

英仏百年戦争

 

英仏百年戦争 (集英社新書)

英仏百年戦争 (集英社新書)

 

佐藤賢一と言えば反射的に『傭兵ピエール』を思い出してしまうわけですが、そんな筆者が百年戦争を題材にあれやこれやを解説してくれるのだから面白い。フランスの○○公とかって場所も良くイメージが湧かないし名前も馴染みなくて憶えづらいしそもそも何世ってなんだよとか記憶力が薄弱なワタクシでありますが、それでも大変愉快に読めました。

イギリスがフランスから見れば大した価値のない一地方にしか過ぎずイングランド王もフランス語を話していたりした時代から、三部会で金銭の問題をクリアして傭兵を用いた常備軍の先駆けが始まり、またジャンヌ・ダルクのエピソードも通じて国家という概念が生まれていく……という語り口は大変鮮やかで、というか余りに鮮やかでペテンっぽくも聞こえたものだからんー確か常備軍って絶対王政であったヤツじゃなかったっけ? という自分の曖昧な知識を再確認させられることになりました。っつか常備軍徴兵制の関係とかを確認するために『傭兵の二千年史』をわざわざひっくり返すのだった。

シメの文章ではっきり纏められているけど、現在当たり前になっている国家という概念の発明は劇的で、世界のあり方を変化させてしまったのだろうなあと思う。冒頭のシェイクスピア寓話的エピソードを我々は笑ってみているけれども、国家という枠組みでそれ以前の世界を都合の良い解釈で纏めてしまっているという意味で、自分たちのやっていることはそれと大差なかったりするんだろうなあ。