ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

日本建築入門

 

日本建築入門 (ちくま新書)

日本建築入門 (ちくま新書)

 

興味が湧いた原因はやはり先日の国立競技場の問題だ。

1964年のオリンピックが歴史的にどのような位置づけで行われ、また結果的にどのような意味を持ったのかというのは大変わかりやすいわけで、建築なんてろくに知らなくても丹下健三の国立代々木屋内総合競技場がある種の象徴的意味を帯びて傑作とされているのは知っている。そこら辺から鑑みるに2020年のオリンピックは歴史に名を残す一大イベントにもなり得るはずで、そこの中心たる国立競技場は歴史の象徴になってもおかしくなく、なのに一連の騒動ではスタジアムの語られ方が余りにも金銭的な意味に寄りすぎていたのが大変気になった。ザハ案が退けられてからも、選び直された案から根本的な疑問は解消されなかった。今こんな緑スタジアムをオリンピックのシンボルとする必然性はどこにあるんだ? 今回のオリンピック自体に思想的バックボーンが見いだしづらいのは確かだろうけど、そこに建築の立場からはカウンター打っていく緊張関係はないの? っていうか建築の歴史ってどうなってるの?

 

で、読み始めたのだがくっそおもしれー!!!!!!!!! 時代をごと順繰りに語るのではなく、テーマを絞って重要な視点を現代と接続しつつ語るその進め方が、初心者には大層取っつきやすい。また重要な人物・概念は当然テーマを横断して何度も語られるため、強く強く印象に残る。図版も豊富で実物を見たことがなくてもなんとなく感じが掴める。いやー、入門として良い本に当たったなあ。

面白かった点はいくつもあって、まずはなにがなくとも「屋根」についての考察で、各国の建築において屋根こそが最も明快にアイデンティティを表現できる、みたいな視点は今までこれっぽっちもなかったので、いやはやほんと、それだけでも目からウロコ。サマーウォーズで代々木の体育館の屋根のバトルを渇望したオレのカンはそこまで悪くなかったってことか!
『新建築』という雑誌の存在を知ることができたのも非常に大きい。戦後って日本が歴史をどのように捉えるべきか混乱しただろーなーと漠然と考えてたんだけど、まさかそこで過去と未来を積極的に接続する運動があったなんて……建築の概念がそもそも日本にはなく、日本らしさについて考えなければならなかったという文明開化からの流れも含め、日本の建築は歴史への視点が必要とされたんだなあ。
しかしまあ、なんと言っても素晴らしいのは太陽の塔の下りで、祭りのあと伝説の象徴のように語られるあの不気味な像が、なぜこんなにも求心力を持ったのか、その理由をこのように説かれるともう感動するしかない。余りの鮮やかな説明っぷりに、オレ風呂場で読みながら号泣してしまったよ。いやー、まさか建築入門読んで涙するとは思わなかったぜ……