ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール

皇帝暗殺のため女装して後宮に潜り込む、というわかりやすい筋立てでも1本話は書けそうなところを、野球を混ぜ込むことでなんだかよくわからないがとんでもない化学変化が起こっている。傑作。
そもそも後宮ものをライトノベルで表現するという困難(単純にエロの問題ではなく異世界のヒエラルキー描写の意味も含めて)を、野球という日本人にとても身近なスポーツを流用してわかりやすく説明しつつ、更に少女達の儚い夢を球場で白球を追いかける姿と重ね合わせることで、いやあ、とんでもない尊さが創出されている。チームシャッフルという装置も含めて、後宮という組織の無慈悲さを世界観全体がここまで有無を言わせず表現してる辺りの手管は、ホントにすごいなあと思う。
イラストには不満を持っているが、これは「世界観を表現すること」が重要な作品とのミスマッチと言うべきだろう。無論ライトノベルにおけるキャラクター、肌色の重要さは承知しているが、本作品は小物や背景や構図できちんと世界観を伝えていくことが重要だったのではないかと考えている。想像力を歓喜するお色気シーンにイラストが挟まっているのも逆効果のような気がしてならない。そもそも作中であれだけ尊いものとして描かれる野球の空気感が描かれていないのは致命的だ。
にしても後宮小説が読みたくなる本である。