ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

レーニンをミイラにした男

レーニンをミイラにした男 (文春文庫)

レーニンをミイラにした男 (文春文庫)

実際のエンバーミングの手順はほとんど描かれていないのでやや拍子抜けした所もあったが、第一次世界大戦からロシアに暮らしていた人間の視点が大変生々しく描かれており、それだけでもう超面白い。
そもそもレーニンの死体を傷つけるのを恐れて技術を持った科学者が尻込みしたとか、権力者が手術するとどんどん粛正されちゃうとか、アメリカと宇宙競争を競っていた大国の科学会が一党独裁の影響で歪められていたとかが、ソ連時代を生き抜いた科学者の視点で実直に語られており大変面白い。ラストの「民主化によってレーニン廟への国からの保護が大幅減額され、結果ロシアンマフィアの死体をエンバーミングすることで資金を得る」下りとか、まるで作ったような皮肉だ。