- 作者: 更伊俊介,鍋島テツヒロ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2011/02/28
- メディア: 文庫
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ラノベにおいて対話で物語が転換する展開は大抵クソのクソで、いやまあお前の正論で世の中の理不尽正したいって気持ちはよくわかるんだけれども、対話や正論で物語が正しい結末を迎えるんだったら何の苦労もない、ってか最初から説教しとけや、って話である。上条さんの説教は別に説教したから物語が転換するわけじゃなくて、外的な対立とアクション、その表出である説教が三位一体になっているから機能する。バトルと左手がなきゃ物語は展開しない。あれはただの説教ではない。
対話は物語の展開へは決定的な影響を与えないべき、というかむしろ邪魔で、キロバイト数稼ぐことが至上命題だったエロゲの、いやまあこの本の場合は西尾維新だろうけれどもまあともかく、そこらへんの影響を色濃く受けた今のラノベは、対話とストーリーに構造的な対立がある。
「もうそんな対立取っ払っても良いじゃん」なんてやり方も確かにあって、それはいわゆる単話完結型の学園ラブコメ的メソッドで、ケツの方で対話回とは切り分けて、巻をまたぐストーリー色の色濃い(そして対話の後退した)作品をブチ込む、ってのはまあ理屈としてはよくわかる。何にせよラノベの潮流が続刊を前提とするモノである以上、対話パートはストーリーからキャラクターに作品の比重を移し、シリーズの寿命を延ばす安易で有効な手段なワケだ。
そんな対話が重んじられるラノベの中でストーリーを語ろうとし、そして両者の矛盾を全く消化できていないという印象の作品だった。西尾維新はそもそも物語構造に対する基礎体力があるからああいうトリッキーなことができるわけであって、外面だけ真似したってそりゃ失敗するよなー、という。