おおかみこどもの雨と雪 BD(本編1枚+特典ディスク1枚) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: バップ
- 発売日: 2013/02/20
- メディア: Blu-ray
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でもって花ちゃんは聖母。間違いなく聖母。彼女は周囲がどんなに反対しようとも、信念を曲げずに「笑って」みせ、なんか良くわかんないうちに事態も好転しちゃうわけですね。
例えば、近所のおじいちゃん、えーと、確か声が菅原文太だったから文ちゃんって呼ぶけど、文ちゃんにいくらやめろと言われても花ちゃんは笑い続けるのです。もし文ちゃんが笑いが気に食わないまま野菜の作り方を教えてくれなかったら花ちゃんはどうなっていたのか。家族共々餓死か。それでも花ちゃんの死に顔は笑っているのか。それでいいのか。
でも花ちゃんは聖母なので信念を正しい方法で貫いていれば奇跡が起こる。初めての田舎暮らしで戸惑っていると、なんやかんやで構築されるファンタスティック田舎のファンタスティック人間関係。助かる生活。田舎バンザイ! でで、明かされる真相「全ては文ちゃんの仕組んだ陰謀だった!」ナンダッテー!
そこで花ちゃん、文ちゃんにお礼を言うことに。しかし、意地でも「笑う」というアイデンティティは絶対に曲げようとしないのだった!
いやー、そこなんか違うんじゃねーかなー、と思うんです。
花ちゃんはその信念を曲げて文ちゃんに野菜の作り方教わるべきだったんじゃねーかと。周囲と折り合いをつけるべきだったんじゃねーかと。学生時代からずっとひとりで、側にいてくれたのはおおかみとおおかみこどもだけで、ふたりきりで出産して子育てを相談する相手もいなくて、いやいやそんなの絶対おかしいよ。
文ちゃんはいつもムスッとしてるけど、一声かければきちんと仲間が彼の意見を尊重して、フォローするように動いてくれるわけでしょ? 花ちゃんはいつもニコニコしてるけど、そんな友人はひとりもいない。愛する家族以外には、誰も。そしてその家族も、いずれは彼女の元を旅立っていく。
子離れしてひとり残され亡きおおかみ夫の前ひとりで微笑むあの花ちゃんの笑顔、あんなもん聖母様にはできても、血の通った人間には絶対できない微笑みだ。ホントならきっと、花ちゃんは近所のおじいちゃんに呼ばれて農作業の手伝いでもしてて、そこにふと、彼女にだけ聞こえる遠吠えが届くけど、おばあちゃんの「一服すんべー」みたいな呼び声があって現実に戻るとか、まあ、そういうのが、人間が迎えるべきエンディングじゃねーのかなあ。
だからやっぱり文ちゃんは、原爆窃盗犯逮捕カーチェイスばりのスーパーアクションをカマしてでも、花ちゃんを追い詰めて笑えなくさせるべきだったんだと思う。世の中と折り合いをつける道筋を、立てさせるべきだったんだと思う。それが、なんだか良くわかんないまま途中退場した文ちゃんが本来負うべきだった、「先生」代わりの役割なんじゃねーのかなあ。そして最後、ムス顔ばかりだった文ちゃんが、実は自分が笑える人間である事を見せちゃったりなんかしたら、ステキだったんじゃないかなあと思ったりします。