ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ちょっとピンぼけ

ちょっとピンぼけ (文春文庫)

ちょっとピンぼけ (文春文庫)


ロバート・キャパって名前は全く知らなかったのだが、スペイン内乱中に写したとされる「崩れ落ちる兵士」の写真は間違いなく見たことがあった。というかコレ、教科書に載ってたわ。


戦場カメラマンの日々を記しながら、その筆致は軽妙でユーモアが溢れている。死と隣り合わせの日常がわんさかあるわ、ヘミングウェイ他有名人もわんさか出てくるわ、運命的な出会いをした恋人とのロマンスがあるわ、なんというか、ちょっとコレサービスしすぎじゃない? ってくらい愉快なエピソード満載な物語。
であるのだが、そこで写された写真は間違いなく事実である。
読んでいてつい「どこからどこまでがノンフィクションで、どこからどこまでがフィクションだ?」なんて勘ぐってしまう。
で、調べてみるとあの有名な「崩れ落ちる兵士」だって、実は本物ではなく捏造なんじゃないか? なんてことが未だに言われているらしい。

でも待てよ? もし仮に写真が作り物だとしたって、それがなんだって言うんだ?

厳密に中正な報道写真なんてあり得るのか? 報道とは物語であり、写真は現実とピントを合わせる焦点のようなものではないのか? そして人は単なる事実ではなく、物語に強く揺り動かされるんじゃないか?

映画「父親たちの星条旗」は、真実と物語の狭間のギャップに苦しめられる人間たちのドラマだった。
だがもしかしたら、物語なしに人間は生きられないのではないだろうか。真実も所詮、「真実」という物語にしか過ぎないんじゃないのか?


ロバート・キャパが、戦場カメラマンとして残した物語。たとえそれが真実とどれだけかけ離れようとも、それは現実に強く訴えかけたし、それで世界はきっと幾分か変わった。
たぶんそれだけでよくて、どこからどこまでが真実かなんて、きっとたいした問題じゃないんじゃないか? なんてことを、読み終える頃には考えていた。


いやまあ、そこまで言うと極論だけど。