- 作者: 宮沢周,久世
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2009/09
- メディア: 文庫
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別に男の娘が嫌いなワケじゃないけど、ってかむしろ好物だけれども、この小説の主人公の恋愛模様にはなんだか納得がいかない。
たぶん人生が完璧に変わる形で性転換を行うこの小説では、なんちゃって性転換魔法少女とは違ってある程度のリアリティが必要で、それが作中でも意図的に描かれている(冒頭のヒロイン血しぶきなんかがそれを宣言してる)。
だがこの作品中、性転換をしたヒロインの描き方にはそれだけの内面的なリアリティが伴っておらず、女になった途端「責任とってくれないと死にます!」とカッターナイフで自称してしまうようなヤンデレキャラクターに変貌してしまう。
この作品で女になることは、そんな類型化した形で描かれていいんだろうか?
男が男を好きになるときに使われる言い訳として、「外見なんて問題じゃない。あなたの内面に恋したんだ」ってのがあると思う。
まあ恋愛の進展は、キャラクターの内面的な魅力に求められるべきだってのは、ごく当然の倫理観じゃないだろうか。
ところがこの作品は、一見それと同じような題材を扱っていながら、そこまで踏み込んでいない。
ってかそもそも、ヒロインの内面を魅力的に見せるエピソードの説得力が、圧倒的に足りないように思える。
ヤンデレメール打っとけば性転換の悩みを表現できるなんて、さすがに短絡的過ぎるだろう。
ストーリーの最大のキーポイントである「責任」の取り方も最後まで自分本位で、「相手が自分に何を望んでいるかというか」っていうところまで考えが及んでいないんだよなあ。
もしヒロインが女じゃなかったら……ってのを考えたとき、両者がお互いに好意を抱くところが想像できず、逆算して「主人公が女性の外見に惹かれている」ように思えてしまう――ってのは、後付けの理屈になっちゃうか。
でもまあ、なんだか困惑させられる作品でした。