ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アンセム:アメリカ国歌の軌跡

www.disneyplus.com

いやー、愛国心について色々考えさせられる映画だなあ。

まず冒頭から、第二次世界大戦のナショナリズムが話の起点になってるのよねえ。確かに現代アメリカを語るには、そこがターニングポイントだろうし、そこからの物語で国を肯定的に語ることができるのはよくわかる。特にこの話は黒人が中心人物だから、そこから公民権運動を経て今のアメリカが存在する、というストーリーは、彼らにとって誇らしいものだろうし、愛国心を肯定的に語ることができるんだなーということを改めて思い知らされた。戦後そういうストーリーが存在しない日本に住んでいると、「愛国心」をそういう感触で捉えることはできないよなあ……

いやまあ、それにしたって「新しい国家を作る」というときに、ここまで有色人種に視点が寄るとは思わなかったけど。ひとり、カントリー代表で白人女性が参加しているけれども、ある意味でアリバイ作りって感じで、そこまで視点をコッチ側に傾けて良いのだろうか……というヒヤヒヤ感に襲われる。そしてまあ、この状況だと活動家のメキシコ系は、そりゃまあ文句言いたくなりますわよね。

色々考えさせられるないようだったけれども、一番印象に残ったのはミシシッピ州の州旗の話かな……まさか南部国旗がああいう形で利用されているとは知らなかった。そりゃまあ、人種問題を取り上げる映画で良く舞台になるわなあ。

トイ・ストーリー4

 

んー、日本じゃ評価割れてんのか。なんか、それもわかる気がするなあ。

なんつーかこれ、「他者から嫌われることへの恐れ」の話だよなあ。基本的に、オモチャは子どもに愛情を受けるものという前提でストーリーが作られていたけれども、まあでも実際は「愛されない」こともあるわけで、そういう時に人はどうやって生きて行けばいいか……という話ではあるよね。確かに他者の愛情によりかかって自我が成立するというのは大変不健全な状況ではあるし、そういう意味で4はテーマをきちんと押し進めた内容であるのだろう、とは思った。

思ったんだが、まあそれをオモチャでやるってどうなの? という意見があるのもわからんでもない。努力は愛となって報われるべきという価値観を、フィクションがどう扱うべきか、みたいなレベルの話であってそりゃまあ賛否が分かれて当然だし、日本と海外じゃそこら辺の捉え方が違うのかもしれねーなーと思った。

ただまあ、そういう意味で今回のストーリーが上手く機能しているかというと、うーん、イマイチそんな気はしないなあ。もちろんウッディの内面にフォーカスを当てているのはわかるんだけれども、それがストーリーの盛り上がりと上手くマッチングしているようには思えない。ステージの設計と心理描写・ストーリー展開に解離がある感じ。まあ、それでもキッチリ動きで面白い内容にはしていると思うんだけどね。

マイティ・ソー

 

ケネス・ブラナー監督作が続いたな……

いやー、合わない合わない。まあ作風みたいなのもあるんだろうけれども、全体的にマーベルの他の作品に比べてテンポ感もストーリー内容もタル過ぎじゃないですか? アベンジャーズのシリーズは見てて、酒浸りのどうしようもない中年みたいな印象だったもんで、ここまでお行儀の良いよい子ちゃんのソーを見せられても「え……誰これ?」となってしまうよ。いやまあ、北欧神話ベースで作ったら、こういうドストレートな話になるのかもしれないけどさー、それにしたって、あんまり話にひねりがなさ過ぎない?

例えば、せめてロキの動機が、同族を殺す事によって、父親の真の信頼を得るため、みたいな話だったら、またちょっと感触が違ったと思うんだよなあ。「父からの真の信頼がなかったのは、自分が裏切るという恐れを抱かれていたからだ」という気付きを得た、みたいなアングルにしたら、これもう一段面白いストーリーになったんじゃ? と妄想した。

あとまあ、地球パートももう一声! という感じだよねえ。まあ、ソーのキャラクターとしての魅力にも関わってくるところだけれども、なんかこう、もう少し、ちゃんと恋愛関係を描けても良かったんじゃないかなあ。全体的に場当たり的な感じでしたわ。

ナイル殺人事件

 

ナイル殺人事件 ブルーレイ+DVDセット

ナイル殺人事件 ブルーレイ+DVDセット

  • ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
Amazon

共犯の可能性はまあ普通に有り得るわけで、それを前提として考えたらあの鎮痛剤の投与はいかにも怪しすぎるよねえ。で、「遺産相続」って動機はまず真っ先に疑って然るべきでしょ? いやはや、「計画的犯行」って言うけれども、殺そうとするなら普通にもっと怪しまれないようなやりようがあるでしょ、とは思うよね。あそこで殺さなければ何かのチャンスを逃す……というわけでもないでしょ。ま、そこら辺がいかにもクラシックという感じ。解決法も、絶対動かぬ証拠があると言うよりは、むしろ一番合理的で納得のいく仮説に同意する、という感じなので、ガチの推理モノと言うよりは、作品の雰囲気を楽しむものなんだろうなあ、と思った。

でまあ、そう考えるとなんか不思議なくらいポアロが糾弾されているというか、人間としての欠陥の部分に焦点が当てられてしまっていて、うーんそれってなんで? とは思ってしまう。尋問が礼を失している、というのはまあ確かにその通りなんだけれども、それってこの事件の解決に必要なものかしら? 彼が殺人を防げなかったことを責められる展開も、いやいやそれってなんも意味ないでしょ、と思うし。作品中では愛する人を失うカップルが続出して、ポアロもまたそういったバックグラウンドを持つキャラクターであることが、物凄く強調されるけれども、それが上手く生きてるかっていうと全然そんな気もしないし……『オリエント急行殺人事件』であった、地の利を活かした情緒もイマイチ弱いように思えて、なんだか引っかかりなく見終えてしまったなあ、という感じです。

Somewhere

 

OPからソフィア・コッポラ炸裂! という画で笑ってしまう。いやー、なんだろうなあこの決まりっぷり。ソフィア・コッポラの映画はまあまあ見ている気がするけれども、こんなにキメキメの映像を撮る監督だったっけ? 『ロスト・イン・トランスレーション』とか今見直すとまた違って見えるのかしら……

ソフィア・コッポラの経験も生きてるんだろうなーと思わされる内容であるけれども、いやしかしよくもまあこんな男性の弱さを巡る話を描けるよなー。いや、むしろ女性の視点だからこういう男性の弱さを描けるのか? 例えば、あのポールダンスのグロテスクさとか、男が描こうとするとさすがに……とブレーキ踏んでしまいそうだもんなあ。固定カメラで、女性をちょっと突き放すことで、逆に彼女たちのコケティッシュな素振りが逆に強調されるのも、確かに女性ならではって感じがするもんなあ。

印象に残る画はたくさんあるけれども、やっぱり一番面白かったのはあの型取りの長回しかな。彼が強制的に内面と向き合わされるシーンを、自然な活動の一環として描くのは、本当に上手いなあと思いました。そしてそこから自分の「老い」に向き合わされたときの、あの驚きの表情。いやー、本当に映画が上手いよなあ。

殺しの分け前/ポイント・ブランク

 

これ、原作が『ペイバック』の映画になってるヤツなのか。向こうを見てなかった気がするので、見てみよう。

まあわざとやってるのはわかるんだけれども、編集がちょっとややこしいというか、その時系列をそうやって弄る必要ある? みたいなシーンが結構ある。まあ、フィルム・ノワール的なニュアンスを出すんだったら一人称的な混乱はそれっぽいのかもしれないけれども、しかし人物もよくわからんうちにそういうことやられても混乱するというか。まして、アルカトラズが一時期閉鎖されていたという状況がよくわかっていなかったので、「え? ここは刑務所の中?」「時系列はどこ?」「アルカトラズ?」みたいな混乱に襲われてしまうのだった。

ウォーカーが一流の殺し屋、という設定はわかるんだけれども、あんまりそこに説得力を感じられないのも問題だったのかしらねえ。リー・マーヴィンにタフガイ、という印象を持っていなかったのが問題だったのかも知れぬ。これがリーアム・ニーソンだったらまあ乗れた気もするもんなあ。

特に冒頭なんかの乾いた絵作りは大変好きでした。あの辺りのトーンは、古さを感じさせないというか、むしろ今でも真似したい気持ちになるよね。

レディ・バード

 

レディ・バード [Blu-ray]

レディ・バード [Blu-ray]

  • シアーシャ・ローナン
Amazon

ここまでくると解説読まないとちょっと文脈がわかりづれーな。

そもそもサクラメントという地名が「秘蹟」であることが今調べるまで抜けていたので、あーなるほどそういうことか……という納得感がやっと出た。その含意を知ってみるか知らずに見るかで、彼女の地域への関心の捉え方もまた全然違ってくるよねえ。また、母からの手紙の意味も一段と強くなるわけだし。

まあそういう抽象的な意味を抜いても、サクラメントという地域がどのくらいの田舎で、どのくらい信仰が厚い土地なのかがイマイチよくわからんしなあ。カリフォルニア州って基本的にはリベラルな地域ってイメージだけれども、この映画だとサクラメントがだいぶ保守的な地域として描かれている感じがするし……いや、彼女の学校の環境が際立って保守的な感じもするしなあ。うーん、わからん。

とまあ、そんなこんなわからんところもあるけれども、いやー面白い映画だった。っていうか、これだけ異なる文化の、しかも母と娘の関係を、リアルに描いた映画なんだから、わからんところがあって当然よねえ。母子での服選びのシーンのやり取りとか、いやーあんなのまじでよく書けますわ。最高。

あとまあ、父・先生・元恋人と、男性の弱さが繰り返し描かれているのも、なかなか印象に残りますね。そしてその弱さを受け止めるだけの器があるのが、全て女性というのもなかなか示唆的。そこら辺は、バービーとはちょっと違った描き方になってるよなーと思いました。