ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

インサイド/アウトサイド

 

インサイド/アウトサイド [DVD]

インサイド/アウトサイド [DVD]

  • 出版社/メーカー: アップリンク
  • 発売日: 2008/07/04
  • メディア: DVD
 

こ、コレがゼウス……!

前に読んだグラフィティの本では、バンクシーを除くとブッチギリでゼウスの「ビジュアル・キッドナッピング」がおもしろかったもんで、縦軸になってどんな面白いものを見せてくれるのかなーと思ったけれども、うーん、正直ちょっと失望の方が大きい。いや、ゼウスひとりの話ではなくて、「アート」の冠を被って行動するにはちょっとお題目がたりなすぎねーか、って感じ。特典でイベントの様子が収録されていたけれども、そこで語られている内容も「えー? そんな程度の理論武装で大丈夫?」って話が多々あって、正直うーんと首を捻るところばかり。いやまあしかしそれだけバンクシーが飛び抜けてレベル高いことやってるってことなのかなー。

あ、でも特典の対談で「リーガル・ウォール」に対する異議が上げられているのがちょーおもしろかった。そもそもグラフィティという行為は法を逸脱しているからこそ表現としての強度があるわけで、もしそれが法律の網の目の中に回収されてしまったら、「社会のルールを破ってまで訴える」というグラフィティの輝きのひとつが失われてしまうのね。なるほどなー。

スタイルウォーズ

 

スタイルウォーズ(日本語版) [DVD]

スタイルウォーズ(日本語版) [DVD]

  • 出版社/メーカー: ナウオンメディア(株)
  • 発売日: 2005/10/21
  • メディア: DVD
 

グラフィティの話なんだけれども、今をときめくバンクシーとかのストリートアートとは全く趣が違って、NYの地下鉄に落書きが可能だった時代を描いたドキュメンタリー。金の匂いみたいなのも多少しだしたくらいで、基本的にはスラムでスプレー缶盗んで目的もなく意味もなくひたすら自分の名前を地下鉄に描くことに没頭している感じ。自分のタグが描かれた地下鉄が、世界の中心の摩天楼を貫いて、ハイソなビジネスマンの意識を釘付けにするー、みたいな。なるほど、『ワイルド・スタイル』に読み取ったあの感じは別に間違っちゃいなかったんだろーなーと思う。

実際三枚組のDVDには、20年とか経ってからの再インタビューなんかも収録されているのだけれども、地下鉄にグラフィティが書けなくなった後、まあ結構な人間がドラッグにはまって刑務所行きになっていて、あーそうなんだろうなーと納得してしまう。グラフィティ書けなかったら、きっとドラッグで捕まって刑務所いきになるような状況で生活してるんだろうなーって。

あとはなー、やっぱりヒップホップという文化を追いかけないとなーと思う。登場人物がことごとくヒップホップという文化に強いアイデンティティを持っているのがなんとなく窺えるのだけれども、ちょっと距離が遠すぎてイメージが掴めない。

アンブロークン 不屈の男

 

アンブロークン 不屈の男 [DVD]

アンブロークン 不屈の男 [DVD]

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2017/04/07
  • メディア: DVD
 

いやー、あのサイコパス所長に描くのに、後ろに国旗をはためかせちゃうのはなー、さすがにちょっとドン引きだよなー。別に右翼とか左翼とか関係なく、あの描写ってたやっぱり「あのキャラクターがあの国の象徴的存在である」って表現になっちゃってるわけじゃん? それってさすがにマズくない?

全体的に、その所長がこの国にとって特異な存在である、みたいなエクスキューズがされていないのが圧倒的にヤバいよなー。もちろん虐待をされた捕虜視点だからしょうがないのかもしれないけれども、しかしある特殊な環境下のサイコパスを、「優秀な家のオチコボレでああなっちまった」みたいな抽象的なフォローのみで、国全体の象徴として描くのは、うーん、よくねーんじゃねぇかなあ。大空襲の跡地を「死体」でしか見せなかったり、明らかに日本人への同情が生まれづらい演出で作られていて、この話ってそんなに構造を単純化して良いものなの? という疑問がすげーある。ってか、所長をもっと人間らしく描いた方が、絶対にテーマが深まると思うんだけどなー。『沈黙』とか持ち出さなくても。ってか拷問だと酒見賢一の『エピクテトス』か。

ラジオの下りは『テディーズ・アワー 戦時下海外放送の真実 -』読んでたのであーなるほどーという感じ。逆に読んでなかったら、なんであんな下りがあるのかちょっと理解できなかったかもしれないなー。

あ、映画としてはちょっとタルいかも。特にラストの石炭運びの下りは、本当に主人公を苦しめるだけの薄っぺらな板担ぎふくめて、もうちょっとなんとかならんのかーいって感じがしました。

リュミエール!

 

リュミエール!(字幕版)

リュミエール!(字幕版)

  • 発売日: 2018/04/13
  • メディア: Prime Video
 

そりゃまあ汽車のエピソードは知ってますし、あと工場から出て来るヤツもみた記憶がありますけれど、しかし作品は全然見たことがなかった。っていうかそこら辺全然よくわかってなくてメリエスとかと混じっているのだった。良くない。

最初に映像を記録できる機械を発明したときに何を撮るのか、という点について大変納得感があって面白かった。最初はもちろん家族を撮ったりもするけれども、最終的にカメラマンを各地に派遣して珍しい景色撮らせるよねーそれは。日本が映ってて、当然ながら資料的価値がめっちゃあるのが納得。

あと最初から興行の側面があったのもなるほどなーと思った。やっぱりイノベーションは商業的に成立しないと継続性が生まれないよねえ。エジソンと対立するのも宜なるかなって感じ。そういう時代だもんねえ。

しかしまあ色んな映画技法が既に使われていて、プリミティブだからこそ技法そのものの強さを思い知らされる感じもします。カメラ目線とオーバーアクションの問題は、映像を撮るという出来事の特殊性を改めて際立たせてくれますよねー。あとやっぱりドリーはグッとくるものがあるんだなあと思います。前後に視点が動くだけで、まあこんなにも感動があるんだなー。そこにフレームイン・アウトがあるだけで、心はこんなに動くんだなー。すごいなー。

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅

 

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅

ゴーギャン タヒチ、楽園への旅

  • 発売日: 2019/09/04
  • メディア: Prime Video
 

やっぱ印象派の画家はみんな生きづらかったんだなー。というか、むしろなんでそんな生きづらい人間ばっかり集まるのか。いやまあ生きづらい人間が生きづらい人間どうしで集まって歴史上に残る変革を起こしたわけだからそれはすげー大変な出来事が起こってるんだなーと思う。しかしすごいなフランス。こういう人間を許容するバッファが社会にあるというのはチョー大事だなあと思う。選択と集中じゃ絶対できないだろ。

そしてまあタヒチが全然楽園でなくてしんどい。取り上げられている出来事は、まあその、場所を変えたってなんだった美女は寝取られるよねーというきわめてありがちな出来事でしかなくて、タヒチなんて地の果てまで行ったところで結局ゴーギャンはゴーギャンで、うーん生きづらい。あんなに地域の人とかとコミュニケーションとって自然と戯れてエキゾチックな体験があって、それでも結局自分の生きづらさからは逃れられないんだなーいやー。

んで、ゴーギャンのタヒチの絵ってみててもあんまりピンとこなかったのだけれども、この映画観た後だとやっぱり色んなものを感じてしまいますね。いいことなのか何なのかは良くわかんないですけど。

あとタヒチ、行きたくなりますね……もちろん映像の力なのはあるのでしょうけれども、漁のシーンとかなんか生活の喜びに満ち満ち溢れちゃっててもう……

チャーチル ノルマンディーの決断

 

チャーチル ノルマンディーの決断 [DVD]

チャーチル ノルマンディーの決断 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TCエンタテインメント
  • 発売日: 2019/03/27
  • メディア: DVD
 

こないだゲイリー・オールドマンのチャーチルをみてなるほどなーって感じだったのでこれも見てみた。まーアレもなかなかシブくてしんどい話だなーとは思ったけど、こっちはさらにしんどいしんどい。人間チャーチルを人間くさく描いてる作品であって、自分も知っている偉人ではあるけれど、そりゃまあ確かにあの性格ならこういうふうに捉えられるのだろうなーと思った。っつーかこのタイピストってあのタイピストだよねーやっぱり。

話としてはもうクッソしつこくチャーチルのダメなところ? いやまあそう判断できるのは結果を知っている自分だから言えることだけど、まあとにかくそういうチャーチルの葛藤を延々描いている作品であって、大変辛い、のだけれどもそういう辛さが必要な作品なのだろうなあ。神に雨を祈りだしたところとか、あの突き抜けた情けなさ、というかなんというかは、ここまで積み重ねないと出ないのだろうしなあ。そういう、史実としての正解と、倫理的な葛藤の上で、延々綱引きをし続ける作品。

でもってラストシーンの浜辺、普段なら別にどーとも思わない一言なのかもしれないけれど、ドキュメンタリーでチャーチルの絵をみちゃってるからちょっとジーンときちゃいますよねアレやっぱり。こういう決断を強いられ続けた人間が日曜画家としてああいう素朴な絵を描いたんだなーと思うとねー。

エイリアン4

 

エイリアン4 (字幕版)

エイリアン4 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

そういえば感想を書くのが遅れてしまった。

冒頭でクローン技術で復活! というところから、もうなんというか色々大変。まー3であんなことになってしまったからしゃーないといえばしゃーなく、面倒くさいことはいわずにジャン=ピエール・ジュネが監督でグロさが格段アップしたエイリアンを楽しみましょーという感じ。エイリアンも窓越しで液体窒素をかけられて飼育・観察されるもんで、そこまで行ったら最早存在ではなくその振る舞いで恐怖を見せなきゃいけないよねー。CGでアクションするのはだから理にかなっていることなのか。確かにあの体つきで水中を泳がれるとまあコワイはコワイ。でも2みたいに「どこから襲ってくるのかわからない」ではなく、「追いつかれるところが見える」演出になるのだよなー。

でもまあ、一番怖いのはリプリーのクローン失敗とか、あるいは人間との合いの子で、まあ人間が人間でなくなってしまうのは怖いよって話ではあるよね。エイリアンはキモいけど、明るい光のみれば別に「そういう生き物かー」ってだけで、むしろ「我々が我々でなくなってしまう」ことを暗示する姿の方が恐怖を煽るのはわかる。

しかしフェミニズム的なテーマでいうとどうなのだろうなーという気持ちもある。色んなものがごちゃごちゃになって、結局物語としての構造が成立しなくなってしまうと、そこでお話もどーでも良くなってしまい、うーんやっぱり物語とステレオタイプの関係は難しいぜ……