ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

オン・ザ・ロック

ontherocks-movie.com

見終わって「あー、ソフィア・コッポラ」と納得。肩肘張らない小品って感じで好きですね。

色々細かく「良くできてんなー」と思うところはあるけれども、何よりビル・マーレイの必然性がちゃんとある作品って感じで、ちいち女性を口説くせりふの切れ味と納得感とか、この役者以外だったら成立しないんじゃないかなーとかまで思う。スピード違反の切符切られそうなところをあんなに上手く切り抜けられると「うーん達者だなあ……」という感じ。いやまあおしゃべりなママ友との描き方で心理描写をやってみたり、パーティーでの馴染めない感が大変わかりやすく描いたり、達者なシーンは随所にあるんだけれどもね……後半の見立ての店頭は、冒頭の意味深で印象に残るせりふと相まって、うーんちゃんとした映画だなあ、と感心してしまいます。あんまり達者すぎて、特にいうことないよなあ……

しかし心理描写に関係してんのか知らんけど全体的に画面が暗すぎてビックリした。あんなに暗いメキシコのリゾートとか観た記憶がないよなー。

 

やっぱオレ橋本忍の脚本好きだわ……いやあ、大変良くできてますねー。メインのアイディアは結構バレバレというか、「知らないうちに父親を殺してしまう」というわかりやすいスジなんだけれども、それを情報量のコントロールでほんと上手いこと悲劇に仕立て上げてるよなあ……「お菊が想い人とそっくり」という偶然性とふたつ重なって、普通なら「もう少し何とか……」となりそうなところなんだけれども、ここまで形式美みたいな物語を見せられるとまあ良いかってなるし、あと後者の偶然は話を回すための潤滑油でしかないからまーオッケーって感じか。いやー、こういうきちんと目先のサスペンスが行われているシナリオに、オレ弱いなあ……

ガッツリ時代劇で岡本喜八監督、という感じはそんなにしなかったけれども、いやまあしかしラストの過剰な桜田門外の変の描き方は「あーやっぱりこの監督ですね」となった。あんなにしつこくチャンバラシーンを描く必要は普通ないと思うんだけれども、広い土地に死屍累々と転がるサムライたちの姿を描くのが、やっぱり必要な作品だったんだろうなあとは思う。そしてラストの後ろ姿の素晴らしさよ……ラストにああいうビシッと決まった絵を持ってこられると、そりゃまあシビレますよねー。

知られざるマリリン・モンロー: 残されたテープ

https://www.netflix.com/title/81216491

 テープを元にがんばって構成したんだろうけれども、うーん、あんまり全体的にピンとこないなあ……まあバッサリバッサリ切られても、それはそれでリアリティがどーのこうの違和感が出て来るのかもしれないけれども、各テープの人物も立ち位置もわかりづらいので、どういうストーリーを描いているのかがちょっとわかりづらいよなあ……

マリリン・モンローの人となりをきちんと追いかける前半は面白くて、まあそりゃあ当時のハリウッドは女性搾取の構造が当然としてあったんだろうなあとか思いますよねー。父親に合ったらウィッグをつけて……みたいな話は冗談かもしれないけれども結構壮絶だな、と絶句してしまいます。

あとJFKとその家系の話なんかも、そういう生っぽい部分はあんまり聞いたことがなかったので、おー英雄色を好むってやつかー、いやそんな暢気なことは言ってられないよなー。公民権運動の象徴で映画でバンバン肖像が出てくる大統領のこういうプライベートが語られるのは、なんかアメリカってすごいなーと思わされますね。

ジミー・ホッファが出てきたりフーバーが出てきたり、あーはい知ってる知ってるってものが出てくるけれども、ロバート・ケネディに関してはあんまり知識がないのでそこら辺は1回なんか当たってみようかしら……

トロール・ハンター

 

お、フェイク・ドキュメンタリーの記事を読むと良く見るヤツがAmazonプライムに入ってんじゃん! と言うことで見たんだが、うーん、これは何がそんなに凄いのだろうか。まあフェイク・ドキュメンタリーとしての勘所はきっちり掴んであるけど、.RECを見たときの衝撃みたいなのはそんなにないかなあ……あれは自分が弱者・切り捨てられる側に回ったときにカメラを構え続けるジャーナリズム、みたいなのがものすげー上手く機能してて感心したんだよな。まあこのフェイク・ドキュメンタリーも、そういう意味ではインタビュイーが「いい加減終わりにしたくなった」という立ち位置でクルーを仲間に引き入れる辺りのドラマは確かに悪くはないか。

あ、あとこのまるっきりウソのスケールを現実と地続きにしてあるのも、よく考えたらすごいことか。クローバー・フィールドとか先行作品はあるけれども、この地味な題材で地に足ついた感じで異界を描く……というのはなかなか難しいことなのかもしれない。

っていうかなー、やっぱり北欧スゴイよなー。臭い一発でトロールのリアリティを担保しちゃうのとか、永遠に続くフィヨルドが「いかにもありそう」に感じられてしまうとことか、宗教的なバックグラウンドが強いのとか、土着に立脚してるもんなあ…『ボーダー 二つの世界』でも思ったけど、やっぱりこういう題材は、土地と合わさると効果を発揮するもんなんだなあ。

シャーロック・ホームズの殺しのドレス

 

お、『殺しのドレス』じゃんまだ見てないんだよね……と再生はじめたら全然違った。いきなりクラシックな映像で「デ・パルマはっちゃけてんなー」と思ったらデ・パルマじゃなかった。全然違った。

シャーロック・ホームズは原作もほとんど読んだことがないけれども、これは原作を元にはしていないのね。ともあれ「3つのオルゴールの音楽に暗号が仕込まれている」というメインプロットはそこそこ魅力的だし、それを巡ってやり合う敵味方という構図はまあ悪くない。ホームズ・ワトソンのキャラの魅力もなかなか良くて、なんだかんだ楽しく見られたのだった。

まーただやっぱり軽い娯楽作というか、ちゃんとした推理とかサスペンスとかを求めるとアレで、結構行き当たりばったりのストーリーになっちゃってるのはなんともなあ……という感じ。最後に見つけるところの展開もかなり無理やり感が強くて、さすがにアレだけ引っ張っておいてあの解決はねえなあ……とは思ってしまう。

ナイトホークス

 

ナイトホークス(字幕版)

ナイトホークス(字幕版)

  • シルヴェスター・スタローン
Amazon

あ、敵の役はレプリカントの人か。どっかで見た顔だよなーと思ってたんだけど調べてようやく納得した。

テロリストと警官が対決する話なんだけれども、ジリジリ段取りした割にはそんなに盛り上がるわけでもなくて、うーん……という感じ。っていうかテロリストなのに自身がロープウェイに立て籠もるって、どう考えても自分の命を失うこと前提の話なはずで、そう考えると仲間のテロリストを解放させている時点で目的は果たされている……と考えた方が自然だよなあ。脱出だって、あんなサックリ狙撃されてしまう計画を計画とは呼べんしなあ。っつーか、録画した音声をなんのために使うのかと思ったら、全く意味不明で笑ってしまった。

なんでヘリでわざわざ正面に向かったの? とか、ロープで吊り上げてまで何をしたかったの? とか、まあツッコミどころが全般的に満載だよなあ。序盤にアレだけ丁寧にやったのも、あんまり生きてなくてどうも……

ただ、地下鉄の追いかけっこのシーンはなかなか良かった。地下鉄構内での銃撃未遂のやり取りもそうだけれども、なにより特に地下空間に入ったところの工事中の背景がいいよなー。見慣れたアクションをレアな背景で行うのは大事だなあと思いました。

五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後

 

「虹色のトロツキー」を読んだりして満州づいている。合間に「ゴールデンカムイ」も挟まったから、何かずいぶん思い入れが深い。

世界中を飛び回って卒業生に話を聞くという立て付けなんだが、満州の状況だけではなく、それを取り巻く各国の社会のバックグラウンドが露わになり、あーなるほどこれは確かに良い切り口だなあと思う。満州だけの取材ではこういう形にならないもんなあ。

まあ色々面白い点はあるんだけれども、一番印象に残るのは中国のエピソードで、中国国内で思想に対する圧力が2010年とかでもこのくらいのレベルでかかっていたというのは、想像以上にビビる。あのパートの緊張感、ホントに半端ないしなあ……

そしてその印象深いエピソードが、ラストのあとがきで回収されるのも本当に圧巻。自分の人生を描いた本の出版の是非に対するアンサーが「漢詩」で為されるとか、うおおおおお本物のインテリというのはこういうものか……とその思想と教養に思わず泣いてしまったよ。すごい。

できればもう少し、大学の生活も詳しく見たかったなーという気はするけれども、そこら辺は巻末の資料を当たってみようかしら。「虹色のトロツキー」の印象が強すぎて、その生活がもっと知りたい! という気持ちがめちゃくちゃ強い。