ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

 

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

 

お……おう……これはなかなか興味深い本じゃね……

なんと言ってもハーバー・ボッシュ法のフリッツ・ハーバーの話が面白い。っていうかこのひとの人生映画化されてないの? ナチスとアインシュタイン絡めつつ、なんかいかにも映画化しやすそうな題材である気がするんだけれども、最後にイスラエルに約束の地を見つけつつ、しかしその途中で命を失ってしまう辺りとか、もうなんていうか「作ったんじゃありませんか?」って内容だよね。いやー、めちゃくちゃ面白い。

他の章も全体的に面白くて、例えばコレステロールの話は記憶にも新しいので「あーそういうことがあったんだ」と思いつつ、善玉悪玉みたいな印象が全然更新されてないことに落ち込む。正しい情報は面白くないのであんまり流通しないよね。「沈黙の春」とかもバックグラウンド知らずに「名著らしい」みたいな姿勢で読んだから、注釈とかできちんとフォローしなきゃ行けないやつだよなあ。

しかし「データが大事」が本当に何度も繰り返されるわけだけれども、科学が愚行に変わるときに問題だったのって、結局科学をいかに社会が用いるかという政治的プロセスの問題であるよなーと思った。だからといって、科学者が政治に関わるべきではない……という方向ではなくて、むしろ自分の影響力を自覚して、積極的に社会に関わる方法を身につけて行かなければならない、という話なんだろうと思いました。

 

バイヤーズクラブ いのち救う薬を求めて

 

うおーおもしろすぎるー……

C型肝炎に対する特効薬がクソ高くて変えない、しかしインドならジェネリックでクソ安い……という状況で、個人輸入のネットワークを作る人の話なんだけれども、こんなん即映画化じゃん、みたいな状況だよなー。っていうかまさに「ダラス・バイヤーズクラブ」から組織の名前をもらったってのはさすがに笑った。法の抜け穴を突くどころかグレー/ブラックに踏み込んで個人輸入のネットワークを作ってしまう側の理屈の圧倒的な正しさとか、それに対しての企業の振る舞いとか、まあ普通に今の時代で取り上げるに足るテーマになっているよなあ。

っていうかそんな「ザ・特効薬」みたいな薬が出る状況が「マジかよ……」だし、その特効薬に高い値段がついているのも「マジかよ……」という感じ。薬の開発に莫大な先行投資がかかっちゃうのはわかるけど、それって命の値段であるからなあ……こないだの抗生物質のドキュメンタリーでも取り上げられていたけど、新薬の開発ってやっぱり私企業に任せっきりでは制度的に欠陥があるよね……っていうかギリアド・サイエンシズってレムデシビル作ってたりもするのね。ほえー。

あとで知り合いの薬剤師に聞いたんだけれども、日本ではどーもそんなにデカくない負担でちゃんと処方してもらえるという話なので、そこら辺は日本の保険制度に感謝って感じではある。

プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル

 

「庵野秀明スペシャル」

「庵野秀明スペシャル」

  • メディア: Prime Video
 

なんか感想書いてると思ってすっかり抜けていたので。

酒を飲んでベロベロになりながら友人とみたんだけれども、あーそうかー、こういうクリエイティブが日本のトップで行われちゃってるんだなーというのはやっぱあるよなー。なんかこれ、ある種の神を下ろす儀式じゃないですか。ふつーに作ってもそりゃあ面白いエンタメができるんだろうけれども、そういうものはまあ別につくらんでもいっかーという人が、じゃあどうやったら奇跡を起こせるの? アニメという集団作業で? というのに無謀なチャレンジしている感じ。非科学的。だから本人も言ってたけれどもこれはプロフェッショナルでもなんでもなくて、異端中の異端だし、異端であるべきなんだろうなーと思う。私はピクサーで十分すぎる小市民なので。まあ最近のピクサーあんまり……という感じではあるのだけれども。

でもこういう作り方をしている作品が、まあ本当に収支取れてるかどうかは全然わからないけれども、とりあえず商業的にありになってる状況は幸せなのだろうなあ、とは思う。少なくともふつーの仕組みじゃこの映画は制作されないもんなあ……

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

 

ということでQ。

基本深い思い入れがないタイプなので映画館で見た時は「うーんわからんしわからんしわからんからどーでもいいやー」となったのだけれども、今回見直してもまあ全体的な印象は変わらないなあ。基本あんまり興味がないしどうでもいい。うーんたくさんてかずのはいっているえだなーって感じ。そもそもアニメの動きそのものに対する思い入れとかもないからなー。

シン・ゴジラでも思ったけど、続けてみると、やっぱ庵野秀明ってヘンテコな人なんだなーというのがすげー良くわかる。破で「わかりやすすぎ」っていったけど、ここまでわかりにくくしろとは誰も言っていないというか……でもそれをやっちゃってたんだなー。そうするとこないだ見た「仕事の流儀」がああなるのも納得。

しかしなんでコレ、こんなに引っかかる男女の役割分担について言及してあるんだろう? なんかピンポイントで相手の気持ちを刺しに行くところで、男女を絡めた言及の数が多い気がするなあ。そしてそれがなんつーか90年代を引っ張っているアニメーションの脚本って感じで、なんか今見ると面白いね。しかしこれ見た当時はそこまでそこまで気になっていなかったので、うーんやっぱりこっちの感覚が変わったのもあるんだろうなー。

よーし、やっと劇場に行けるぞ! そのうち感想が上がると思います。

足元の小宇宙~生命を見つめる 植物写真家

 

うえー、すげー……NHKスペシャルってこういうのも拾ってんだなー。いやあ、面白かった。こういう人をきちんと拾ってドキュメンタリーにするのはさすがだなー。

まず普通に植物の映像が面白くて、あーなるほどなんか写真の入門書で「マクロレンズがあれば写真の練習はできる」って言ってたのはこのことかーと思った。だって普通に道に生えてる草木を撮ってるよね。まあ街中でアレをやる勇気は全然ないんだけど。でもマクロレンズは欲しくなった。買おうかしら。っていうか撮影の小道具がガンガン画面に出て来るので、それを見るだけで「おーそうかーこういうセッティングなのかー」とためになるのだった。面白い。

あと結構奥様がよろしいですね。芸術家って何をするのかと思ったら野菜で動物作ってて「え?」と思ったけど、出来上がったヤツの写真を見たら納得のデキ。思わず頬が綻んでしまうような。途中家族持ちが学者から写真家になって「え?」というエピソードが語られたけれども、いやまあそりゃあビックリするよなあ。よくもまあそんな道に飛び込んだもんだ…

疑惑のカラヴァッジョ

 

「疑惑のカラヴァッジョ」

「疑惑のカラヴァッジョ」

  • メディア: Prime Video
 

盛り上げるだけ盛り上げといてラストでスコーンと外されると「え? え?」という気持ちになるな……来歴を確認するのが大事、みたいな話があったけど、まあこれを見りゃなるほどなーって思うよね。

カラヴァッジョというとまあさすがにオレでもなんとなく知っているけれど、「ホロフェルネスの首を斬るユディト」のこういうバージョンなんてあるのねー。やっぱり作家というのはひとつのモチーフに対して考察を深めるから、こういうバリエーションも作りたくなるのだろうなあ。

内容的には「後で隠れてしまう部分まで描かれていたのが真作の証拠」というのが一番説得力があったかなあ。しかしそれでも同じ場所に出入りしたとすると、途中までのものを別人がしあげたとかいいう可能性が排除できないのはナルホドって感じ。しかしそこまで言い出すとキリがないよねー。弟子に手伝わせる作品だってそれこそ山のようにあったわけでしょ。

前半の真贋の判断が専門家でも分断されている辺りが一番面白いんだけれども、後半のセールのターンになると途端に「どうなの?」って感じになるよなー。サザビーズとかに出さないってことは手数料をケチったっていうことなのだろーか。まあしかし現代のアート市場だから作品そのものよりも投機の対象ってかんじだろうし、そうなるとこういうセンセーショナルな題材とかが効いてくるのかしら。

AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは

www.netflix.com

OPで「2001年宇宙の旅!」と閃いた自分の直感は間違ってなかったのであった。

作り手側の意図も絡んでるんだろうけれども、黒人女性が表に出るのが「そうだよねー」という感じ。まあ差別に対する問題は被差別者が告発するのは当たり前と言えば当たり前なんだけれども、ハッカー文化のような社会から言えば端っこだったり、法律的にはグレーだったりするような所から生まれてきた技術が、メインストリームになっているのだなあ、そして企業と自由競争の原理でその思想が問われているのだなあというかんじがすごくする。そういう意味では周辺の声を拾い上げるためのメディアの役割が重要だよなーとは思う。「Facebookは自分に不利な選挙結果を操作できる」みたいな話があったけれども、同様のことがこの番組にも言えるわけでね。バイアスから利益を受けている側は、人工知能でバイアスを強化する方向に働く。だからこそメディアとしての責任の有り様を明確化して世の中を意図的に公正に持っていく取り組みが必要ってワケだ。

しっかし、AIのモノローグは寒いなあ……あんな安い演出で煽らなきゃならないような視聴者までリーチ仕様としてるドキュメンタリー? それにしてはちょっとピックアップする事象がわかりづらいよーな。

あとオカシオ・コルテスってこういう役回りでピックアップされるんだなー納得。やっぱりマジで若手のホープであるのね……