ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ローマンという名の男 -信念の行方-

 

んー? なんだろうなーこれ。見ていてずーっと「事実に基づいた話であって欲しい」という感覚があったんだよなー変な話だけど。

いやそのこのローマンって男って結局記憶力特化でコミュニケーションに難があって、というある種の類型のあるキャラクターとして描かれているわけじゃないですか。そういう人物が、現実にいて、それでこういうドラマを辿ったなら、それはもうしゃーないよね、事実だからね、とは思うんですよ。でも、これ、そういう記述ないじゃないですか。だからある種のこういうコミュニケーションになんを抱えた男のステレオタイプを利用して描いちゃってて、それはある種の偏見の強化に思えてしまうわけですよ。自分も多分あんまりコミュニケーションが得意じゃないから。だからね、それを、こういう人権問題をテーマに扱った作品の中心に据えられると、ちょっと辛いなーと言う感情を抱いてしまう。

いや、別に面白いと思うんですよ。デンゼル・ワシントンの芝居もあって、ああうんこういう踏み外し方をしてしまうのもしょうがないよね、わかるわかる、とギリギリオッケーなラインになってるとは思うんですよ。それはなかなかすごいことだと思う。掛け値なしに思う。

でも、でもね、でもそういう人間が、映画の都合で道を踏み外して、その結果勧善懲悪の結末を迎えるのって、こう、しんどいなーとも感じるんですよ。生きづらさを抱えた人間が、ちょっと道を踏み外したら、こういう結末に行き着くのかと。その物語展開としての正しさを、コミュニケーション弱者の人生にフォーカスして語って、いったいなんの意味があんのかなーと。まあ、ここら辺はあれだ、『鑑定士と顔のない依頼人』でも感じたヤツですけどね。

バンクシー展 天才か反逆者か

banksyexhibition.jp

最近バンクシー熱が高く、このコロナのご時世にふつーにやっていたので行ってきた。

バンクシーもアンオフィシャルと声明出してたと思うんだけど、内容としてはまあそんなに一貫性とかメッセージ性はない。作品もシルクスクリーン? がメインなので、ぶっちゃけコレって現物見る意味ってどれだけあるのかなーという感じは正直する。

バンクシー作品って深さとか長くつきあえるかとかではなくて、ふつーに一発バシッとウィットの効いたメッセージドン! っていうものなので、作品が美術館の中で並べ立てられててもあんま意味ねーよなーという感じ。それこそアプリの作品ガイド見りゃオッケーじゃん、みたいな。まーさすがにそこら辺は承知の上でやってるんだろうけれども、さすがにラストに「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」が書いてあるのには笑うわ。

ずらずら並んでる作品を見て思ったのは、うーん、こういうウィットってどうしても社会のバックグランドのびみょーな機微に触れてないと理解しづらいよなーってこと。解説あればそりゃなるほど納得なんだけどさー。「あー? これレーガン暗殺未遂か」みたいなのがすぐにピンとくる教養がないと、色んなメッセージを見逃しちゃうよねえコレ。

 

ヒトラー

ヒトラー [DVD]

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  • 発売日: 2010/10/29
  • メディア: DVD
 

ヨアヒム・フェストって、あー、「最後の12日間」の原作を書いた人でもあるのね。納得。

深く掘ると言うよりも、ざらーっとヒトラーの生涯をなぞっていて、まあなんだかんだ知ってるエピソードがたくさんあるなーと感心。ウィトゲンシュタインとか脳内に蘇ったりねー。テロ事件とか、世界史で一応読んだ覚えがあるんだけれども、こうやって流れで説明されるとオーなるほどと納得度合いが違いますね。退廃美術展とかの下りに興味があるんだけれども、そこら辺はわりとざらっと流されていたのでそこは残念と言えば残念か。

それにしても「映像の世紀」って感じ。ここまで映像資料が残っているっていうのは、ヒトラーの宣伝に対する意識の高さだよなー。そしてまあ改めて画のクオリティが高い高い。ふつーにカッコいいもんなー。スポットライトで演説とかあの高コントラストのモノクロで見せられたら参ってしまいますよ。

しかし自分軍事系には全然詳しくないので、だいぶ損をしているよなあと思う。さすがにここまで映画を見ると、一応パリ陥落からスターリングラード、ノルマンディー上陸とかそこら辺の流れはなんとなく掴んでいるつもりだけれども、そこでヒトラーが果たした役割とかドイツの技術力は実際どーなのとかわからんもんなー。あとロンメルが突然アフリカで出てきたので、あーそうか世界大戦なんだと改めて思い出してビックリした。そこら辺もうちょっと詳しければさらに楽しめるんだけどなー。

ナビゲイター

 

ナビゲイター(字幕版)

ナビゲイター(字幕版)

  • 発売日: 2020/01/31
  • メディア: Prime Video
 

うーん、おおざっぱ。子供向けだし大雑把で別にいーじゃんというのもまあわからんでもないんだけど、うーん、なんかこういう映画で「子供なら楽しめるだろうな」っていうテキトーな予想を自分に許容したくない感じもある。

というのもまあ、この映画の体験で工夫があるのは、終始「宇宙船の中の体験」であって、どこかの星にたどり着いて……とか、様々な宇宙人とドキドキのコミュニケーションがあって……とかいう、広がりがあるものではないのよねー。あくまで箱庭の出来事で、クリーチャーも捉えられていて、知的生命体は自分に危害を加えないという安心感もあって……

いやもちろん船の中の造形は「うわーこんなの夢に出てきそう……」って感じの良さはあるし、あと目の前にあるスクリーンの映像だけであんなに移動している感を出せるのってすげーなーとは思うんだけれども、さすがにちょっとね……

宇宙人とナビゲイターとしての立場を生かした交流も全然ないし、ラストの時間遡行のパートも「えー?」って感じだし、うーん、さすがに見ていて辛かったですはい。

 

フェミニストからのメッセージ

www.netflix.com

うーん、これは自分にはちょっと良くない。立場が明確でなおかつ前提知識のあるフェミニストに対して共感を煽っていく感じの作り。例えばあの中絶ができなくなりそうなときに女性議員が引き延ばし工作をしたあの映像とかが途中で出て来るのだけれども、その背景も何も説明しないまま、ただ印象的に感情を高ぶらせるための道具として使われていて、オレが今見るべきものではないなーと思う。まあもちろんそういうのが必要な人は必要なんだろうけれども、こうやって分断はより強化されていくんだろうなーとかまで思ってしまった。

ドキュメンタリーとしてのとっかかりはまあまあよくわかる。当時の写真と現在の彼女を対面させて振り返るのは大変よいと思う。ってかこういうつくりだから、そもそもノスタルジックな想いも乗せて、しかしこれからも運動がんばっていこうぜ! と感情を煽るだけ煽る展開にならざるを得ないのかなー。ヒラリーの若い頃やらトランプへの反感やらの端々が出て来ると、うーんこれちょっとだいぶ感情を掻き立ててる編集だよなーとちょっと嫌になってしまった。自分はもう少し客観的に、過去からの流れを追いかけたかったんだなー。

ピーターラビット

 

ピーターラビット™  (吹替版)

ピーターラビット™  (吹替版)

  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: Prime Video
 

ウワサには聞いていたけど変な映画ー。このリアリティで作品を成立させてしまうのには正直ビックリする。超不思議。

いや、これがガチで可愛らしいアニメキャラクターとかだったり、あるいは超リアルな表現だったりしたら、成立していなかったのかなー。だってこの話、正直動物が人間と会話できるかどうかに全てがかかってるわけじゃないですか。会話が可能になった途端、相手と意志疎通の可能性が生まれ、すると相手に人格とか権利とかを認めるだけの心情的な正当化がグイッと進むわけで。じゃなかったらこんなん「自然他にもあるじゃん。人間の土地は人間の土地だよ」で済む話で。

だからまあ、ラストでピーターがヒロインにコミュニケーションとってきた時は「それで解決していーんかい!!」となる、はず、なのだけれども、まあそれまでのあれやこれやのやり取りで、そんなの今更突っ込んでもしょーもないなーという感じになってしまっているのが、うん、びっくり。なんか知らんけどまーこういうのもアリかなーと思ってしまう。イギリスの風土がそうさせるのか。違うか。

しかし最近、レゴ・ザ・ムービーとかは明確にそうだし、あとは広く見ればマーベルの小粋な作品のいくつかもそうなんだけれども、こういうリアリティのコントロールで作品の可能性を広げるヤツをたくさん見てる気がするなー。もしかしたら世の中のエンタメ的にも増えてきてるんじゃないのかしら……

オレの獲物はビンラディン

 

オレの獲物はビンラディン(字幕版)

オレの獲物はビンラディン(字幕版)

  • 発売日: 2018/03/27
  • メディア: Prime Video
 

うーんこの題材だったらもっとセンス良くできるような感じがするし、実際そういうイケてる映画を撮ろうとがんばっているようにも思うんだけれども、いまいち乗り切れないよねー。ニコラス・ケイジはまあがんばっていてよいのだと思うのだけれども……パキスタンでドラッグと透析なしで現実と虚構があやふやでビンラディンを妄想で追い詰める、なんてもうめちゃくちゃ素敵な映像体験に仕上げられる枠組みだと思うんだけど……うーん。事実のパワーに負けちゃってる感じは、正直、ある。大体キリストはあの程度でいいのだろーか。もっとマンガっぽく誇張した表現にならないとアカンのでは?

いやまあニコラス・ケイジを持って来てコレかよ、というのはある。アダプテーションとかああいうぶっ飛び映画の印象のある役者があるんだから、もっともっとぶっ飛ばして欲しかったよなー。今のくらいだと、まあふつーにどこにでも居る変人が周囲に迷惑かけながら生きているのをわりとしんどく見るだけになってしまいそうで……

いやまあブッ飛んだからといってどんなテーマがこの枠組みから出てくるのかはしょーじきよくわからんけど。