ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

彼女の権利、彼らの決断

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Netflixの妊娠中絶に関するドキュメンタリー。

まあドキュメンタリーは基本的に反体制になりがちだし、こういった人権を擁護する内容であればその色は強くなって当然なんだけど、ここまではっきり民主党推しの内容になるとややビビる。どんだけ共和党は嫌われているのかって感じ。

女性の決定権と胎児の生命どっちを優先するの? という問いかけに、胎児がどこから命を持つのかという議論をしに来たのではない、という声明がとても印象に残った。そうだよねー人権というのはなにか科学的見地が定まって付与されるものではなくて、今の社会状況ではどこに線引きをするって便宜上のものでしかなくて、ある意味ではそこを追求してもしゃーない。問題はもう片方の女性の決定権を我々はどれだけ尊重すべきか、って話なわけだ。大変納得。

後半ではロー判決に対する最高裁の判断が重要になって、「三権分立って大事だよね」という感じなのだけれども、やっぱアメリカの司法制度ってそれでいいの? という感じはスゲーするよなあ。っていうかあんなに政権と司法組織の間にはバチバチの利害関係があるとは思わなかった。っていうかやっぱりアメリカの司法制度って知れば知るほどどーなのよって感じがしてくる。まあ日本の司法は知らないだけでもっとやばかったりするのかもしれないけど。ってか、日本の最高裁判所の罷免手続きとかがもう全然形骸化しているのはあれどういう仕組みなんだろうなあ。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

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まー面白いんだけど結構期待値が高かったのでまあこんなものだよなーという気持ちもある。タランティーノってこういう作家なんだよねーと思う。

映像としてはうーんおもしれーという感じで、ディカプリオとブラッド・ピットが同じ画面で組み合ってるだけでそりゃー見応えあるよね。ディカプリオはいかにもな役者の芝居を役者としてガンガンやって、ブラッド・ピットはナチュラルに暴力振るう。編集もカメラもカッコいいし、音楽もノリノリ。ラストもあーこれ『イングロリアス・バスターズ』とか『デスプルーフ』で見たヤツだ、という既視感はあるけれども、その既視感ってまあ快楽中枢に忠実なので別に全然嫌いにはなれない。

それでもやっぱり乗り切れないのはタランティーノにハーヴェイ・ワインスタインの事件があったからで、そんな彼がこの映画ではポリコレに関してのインタビューを受けていることが知識としてあり、あとやっぱり1969年という時代が今のアメリカとどう呼応するかみたいなところをどうしても期待してしまうからであります。えーこの状況でフツーにいつものオモシロ映画を作っていいの? いやまあ別にあらゆる作品がポリコレに盲従しろとかは全く思ってないんですけど、しかし現代でそういう要請に対しての態度が全く見えないのもむしろ不自然に思えるというか……まあヒッピー・ムーブメントとカルトがどんな社会的位置づけなのか全然理解してない自分が知識足りないって可能性はめちゃくちゃある。でもむしろそういうのが糞食らえと監督が思ってるような感じもする。

まーしかし巧みは巧みだよなー。どう考えてもクサい展開になってしまうディカプリオの奮起の芝居に子役を宛がうことで、クサさ二乗でむしろ謎の良さが出てしまう辺りとか、ちょっと普通の作家じゃ真似できないでしょアレ。

手遅れの過去

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あら素敵。あら気が利いている。こんな作品が知られずに埋もれてるんだなーってビックリさせられる作品でありますね。

まーともかく気合いが入ってる。長回し5本で1本の映画撮ってるわけですが、これってよく考えると長回し1本で1本とるよりも大変なことなんじゃないでしょうか。だって長回し的な趣向のあるシチュエーションを5つ用意するわけですよ。いやーたいへんだー。っつーか超望遠ズームだのクレーンだののテクニックでもお腹いっぱいなのに、ボクシングとフィルム交換で時間のサスペンスを創りつつ、ラストできちんと実時間の終わりを示してみせるとかマジで気が利きすぎでしょう。いやー、洒落た台詞のオンパレードだったもんなあ。全体の構成もそりゃあ洒落ちゃいますよねー。

さらにさらに素晴らしいのが時間軸をシャッフルした構成で、この絶妙な情報量のコントロールがマジで美味すぎる。エクスタシーを以前使ったときはセックスしていなかったという話がちゃんとラストで近親相姦回避の証拠になってるんだもんなー。いやー最高。ホントオシャレすぎでしょう。

まあラストの探偵の罪語りがちょっとつくりすぎかなーという感じもする。それまでの彼の行動に裏があったように見えてなかったからだよなーまあそれが探偵の所以なのだろうけど。まあタイトルも含めて最後には有無を言わせず納得させられる力はあった。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 美と知の迷宮

 

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ずらずらずらっとダ・ヴィンチの生涯をなぞった内容で、最初に見るのはあまりよくなかったかもなーというのが正直な感想です。当時のフィレンツェ辺りってそりゃまあ歴史に残る美の巨人達の交差点でありますが、しかし今の自分の知識量だとラファエロミケランジェロ辺りがせいぜいで、なんでミケランジェロとのオモシロエピソードが少ないのか意味がわからん。いやまあ弟子は弟子で面白いと思うんですけど、やっぱりドラマティックなところで言えばミケランジェロとヴェッキオ宮殿でガツーン! とやり合ったところなわけで、そこがヌルッとスルーされてラファエロ話に持っていかれるのは! なんか! よくわからん!

あと弟子とかの話も同性愛含みの話がだいぶ仄めかされているけれどもそこんところどーなのよ。いや別にどうでもいいっちゃいいんだけど。天才天才言ってて周囲の人物は再現して描いているけど肝心のダ・ヴィンチがナレーションベースだからいまいちピンとこないのよねー。

しかし当時の美術家が技術者研究者と分離されて当然、みたいな語られ方してたけどそれってホントなんですかね? むしろ現代の職業分離の状態が異常で、当時はリベラルアーツで教養一緒くたでよろしくーって時代だったんじゃねーのかと勝手に思っていたんですが。ジョットだって建築やったわけじゃないですかアレってフツーにそこら辺のジャンル分けが無意味だったってことの証左だったんじゃないですかね?

ザ・マミー/呪われた砂漠の王女

 

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いやーくそつまんねー。こんなに屈託なくつまんねーと言える映画もなかなか珍しい。この映画、良かったところってなんかあった? あー、辛うじてアレか、世界史的にめちゃくちゃがんばってイギリスに繋げるロジックとかが良かった。いや別に良くはない。全体的にもうちょっとがんばって欲しいよね……

まーともかく全体的にどうでも良い。トム・クルーズがなんで戦ってるのかわからん。もう生き返って失っちゃってるんだし、別に元に戻らないとなにが起こるのかさっぱりわからんし、善とか悪とか偉そうに言ってるけどどうでも良いし、いやーほんとお話になってないよなー。

まあモンスターって結構皆悲劇的なところを追うものだと思うんだけど、現代社会をテーマにするとモンスターって別に悪とかにはなれなくて、むしろ苦しみを強制的にせおわされた弱者だよねー。むしろ大英帝国の研究組織の方がよっぽどヤバみが強いもんなあ。

っつーか、最初のトム・クルーズの意味不明な銃撃もそうだけれども、いきなり中東の街に泥棒に飛び込んで支援要請で街に爆弾落とすような先進国の方々に善とか悪とか一方的に語られてもちゃんちゃらおかしいですわね。

Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密

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なるほどヴィーガン、これがヴィーガン、なのか? と思ったらどうやらこういう思考の人たちはエンバイロメンタル・ヴィーガニズムと呼ばれるらしいことがわかる。まあそれだけでも大収穫でございますね。動物を殺した下りでも思ったけど、オレには「動物がかわいそうだから食肉しない」ってのはもう全く意味不明。人間が生活するにはどこかで線引きが必要で、人権のない動物に過剰に感情移入してしまうのは脳の機能をハックされているだけのように感じますね。だから純粋に「環境への影響が大きすぎるから」という視点から食肉を拒否する、という考え方は大変納得がいくし、あなたの選択もきちんと尊重しましょうって気持ちになれる。

とはいえ自分はそもそも「賢い消費者になろう」みたいな方向性で問題を解決するのって無理だろーと思います。食習慣みたいなものの変革が必要なときにみんなが啓蒙されて自ら新しいステップに進もう! とかちょっとリアリティがなさ過ぎるし、あなたひとりが変わったところでそれこそ週7日が6日に変わるほどの変化もないわけじゃないですか。っていうか民主政治の欠陥にチャレンジしていくことこそが本来採るべき道だよなー。あとどう考えてもアメリカの訴訟制度はまずいと思う。

しかしまあ、まさか途中でヴィーガンの宣伝を始めるとは思わなかったなー。最初のゴア一発で行動が変わってしまった辺りから「あーそういう人ね」と思って見なきゃいけなかったのかもしれないけれども。まあぶっちゃけ序盤で「あーはいはいこれロビー団体が利益誘導してるヤツね」って感じで見始めたんだけれども、思いの他圧力が過激で正直背筋が凍りました。ブラジルで活動家が殺された辺りから、「自覚がないならカメラを下ろした方がいい」とか言われる辺りまでの展開はホントヤベーもん見ちゃったなって感じ。多分、この映画に描かれていないものを読むべきドキュメンタリーだろうなーと思いました。

クロコダイル・ダンディ

 

クロコダイル・ダンディ [DVD]

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テレビでよくやってた気もするけどそういう作品って雑に流しちゃうからなあ。改めて見るとなんだちゃんとしてる映画だなーと思って感心したりしなかったり。

この作品は異文化の話で、前半後半で構造が対象になっているのがなかなかちゃんとしてるよなあ。もっとも後半の展開は今見るとポリコレ的に結構ヒヤヒヤな表現が山盛りで、これテレビで放送できないのかもなーとか思うけど。さすがにゲイの金玉握って逃げ出すのを酒場みんなでゲラゲラ笑う描写はちょっとないよねー今の感覚だと。

しかし思いのほかダンディが歳を取っててびっくりする。ってか振り返るとそんなアクションをする作品でもなかったんだなー。ちょっとナイフをちらつかせたりするくらいだもんなー。肝心なところで木の枝に頭ぶつけちゃうくらいだもんなー。

あとラストシーンはアレ「これぞNY!」って感じのシーンを持って来たということで良いのでしょうか? なんかモッサリとってつけたラストで展開も無理やりだけれども、頭上歩くというスペシャルが炸裂しちゃうとなんかまあそんなのどーでもいいやと思うくらいにはダンディのキャラ付けがしっかりしてるから、まああれはあれでいいのかしら。