ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アメリカン・ギャングスター

 

アメリカン・ギャングスター [Blu-ray]

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いやまあ、面白いんですよ本当に。アメリカの当時の時代背景を置きつつ、ふたりの有名俳優がガップリ組んで、事実に基づいたギャングの話をやる。家族が大事とかディスカウントストアとかそういうストーリー上の伏線もめちゃくちゃちゃんと回収する。気付けば夢中になって長い尺が終わってしまっている感じ。別に文句はない。ないんだけど、うーん、なんでこんなにもー、なんとも言えない気分になっているんだろーか。

ラッセル・クロウの養育権の下りは最高に良くて、子供は何よりも大事っていうエンタメの建前を逸脱して、突然悪役でもない主人公が子供よりも仕事に殉じる決意を固めるのは最高なんだけど、はっきり印象に残ったのはそこくらいなんだよなあ。あのシーン、ストーリーのなかでどんな役割を果たしているのかがイマイチわかんないところもあって、ラッセル・クロウが極端に危険な目に遭ってる映画でもないわけじゃないですか。そういう意味の薄さがかえって作品の主張になっているようで好き。

一方デンゼル・ワシントンはどうもなー。中盤くらいまではとても好感の持てる芯の通った男だと思うのだけれども、あの結末は果たしてアリなんだろーか。なんか描き方でフォローされているけれども、突然別人になったような感じがかなりする。まあ最後のカットはしゃれっ気があって良いと思うけど……

トゥルー・ストーリー

 

トゥルー・ストーリー (字幕版)
 

そんなにピンとこない映画だなあ。

多分冒頭のテディベア一発で事件の真相を知りたいという欲求を喚起しなきゃならない構造なんだと思うけど、興味をそそる情報が足りなすぎて犯人に全く興味が湧かなかった。推理のヒントがだいぶ薄いのもあったけれども、真実はこうであって欲しいとか推理する気が全然起きなかったんだよなー。受け手の「この映画のストーリーはかくあるべきである」という期待を手玉にとって、虚実の狭間をウロウロしなきゃならないはずなのにねえ。ある種のどんでん返しのはずである犯人の独白も、「フーン」ってな感じで大層どうでもよかった。本当にどうでもよかった。

映画は丁寧に記者と犯人の関係を描いてて、それはまあ確かに奇妙に引きつけられる間柄ではあるけれども、そもそも記者の方に全然共感できなかったのもでかいかなー? 「自分もその立場だったらこういうことをしたかもしれない」という感情を持たせて始めて、記者と同じ観察者の立場から空白の物語を埋めていく作業をしたり、それと並列して自分を正当化する気持ちになったり、そういう創りになってるんじゃないかしら? ちがう?

犯人のウィンクが作者自身に跳ね返ってくるのも、あーはいはいそういう構造になってますよねーとは思うけれども、昨今話題になる真実をめぐる物語なのであれば、やはり視聴者自身も映画から物語を読み取っていることを問題としても良かったんじゃないかしらねえ、と思いました。

ソード・オブ・デスティニー

 

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うーんやっぱり武侠の世界は独特だなあ。カンフー映画はまあまあ観ていると思うんだけれども、武侠をまんま取り上げた作品ってそんなにで、時々触るとその世界観にちょっと面食らうよなー。あのメシ屋のエピソードで仲間が集結してしまうのが当たり前の世界なのか。

それにしても全体的にアクションに文句のある映画で、ストーリーもどーってことないんだからもうちょっとちゃんと殺陣をみせてくださいよー。っていうかなんであんなローキーなの? 戦闘の半分以上は夜のシーンなのに、あんなに全体的に暗くしてアクションを見づらくされると、もうテンション駄々下がり。役者の表情はもうちょっとはっきり見せてよ。剣の映画なんだからもっと照り返しのハイライトを鮮烈に見せてよ。

あと序盤の刀盗もうとするシーンでのスローモーションの乱発はホント素人なのかしら? 静のアクションを思考しているのはわかるけど、いちいちカット割りが説明臭すぎるし、そもそもああいうアクションを行うんだったらもっと極端に壷部屋みたいな舞台設計にしないとダメでしょう。チンタラチンタラ顔アップしてる場合じゃないと思いました。

決定的なのは表情の戦いだよなあ。それまで全くそんな気配もなかった雪までわざわざ降らせて、湖の氷上で軽功アクションの見せ場って最高のシチュエーションなのに、つるつるつるーって滑ってばっかりでぜーんぜん面白くないよ。普通、途中であった氷蹴りとかそういうのを期待しちゃうでしょ?

うーん、色々期待外れの映画になってしまったぜ……

スパイダーマン:ホームカミング

 

スパイダーマン:ホームカミング ブルーレイ & DVDセット [Blu-ray]

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すげーおもしろい。ホントにビックリするほど面白がってしまった。一体オレはこの映画のどこをこんなに面白がっているのだろう?

サム・ライミのスパイダーマンって見たけど全然内容は忘れていて、でもこんな感じじゃなかったよねえ。だいぶシリアスな感じ。当時はあんまりアメコミもピンとこなかったからかもしれないけど、マーベルは様々なクロスオーバーがあって、なんだか文脈の豊饒さをめっちゃ感じるなあ。

まあマーベルってDCに比べて圧倒的におちゃらけていて、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとかアントマンとかはだいぶコメディ臭が強いけれども、よく考えたらスパイダーマンもそっち寄りのキャラクターの方がしっくりくる感じは確かにする。だって基本的に蜘蛛に刺されてヒーローになっちゃっただけでしょ? ひょんなことからヒーローになったティーンエイジャーがなんで命を賭けて戦っちゃうかというところの説明が、今回の映画ではぱっつり省略されていて、いやしかしこれだけ色んなヒーローがいるんだからそういう薄い動機で正義の味方やっちゃうキャラがいても全然いいよねえ。

というかむしろ映画全体に、そういうキメキメではないユルユルの演出方針が徹底されていて、唯一ガッツリキメているあの瓦礫閉じ込められシーンがむしろだいぶ違和感ある感じ。脅しのシーンとか、記者会見のシーンとか、あの締まらない感じのやり取りが作品のトーンをバッチリつくってる。っていうか、好きな女の子の父親が悪役だったとかめちゃくちゃ都合のいいシナリオを、しかも単なる勧善懲悪ではなくほろ苦さを抱えたままのエンディングに着地させるには、全体としてこういうトーンが必要だったってことだよねえ。

まーしかしなんでこんなにオレがこの映画を気に入ってるかっつーと、あの夜庭走るドリーシーンで『フェリスはある朝突然に』を思い出してたらそれがマンマ出て大爆笑してしまったかもしれない。いやー、『デッドプール』とか『ゲーム・ウォーズ』とかでジョン・ヒューズを予習しておいて良かったよ。

ケムリクサ

 

ケムリクサ 1巻[上巻] [Blu-ray]

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アニメを完走。

最小限の人数で想像力を思いっきり掻き立てて世界の謎と雰囲気で引っ張っていくのはザ・インディーズって感じ。なんかSteamのドット絵のRPGでいかにもありそうな感じだよねー。ただ長い台詞をキャラのかわいさで保たせながらこんなにも見せられるのかーというのは結構驚き。ってかツインテのこがかわいいかわいい。しかしまあストーリー展開がたる過ぎて序盤はかなり見づらかったなーと言うのは正直なところ。ケムリクサじたいはビジュアル的にそんなに映えるわけでもなく、世界観も別におっと思うものは頻繁に出てこないんだから、もうちょっとビジュアル的に取っつきやすい要素を作ってあげても良かったんじゃないかなあ。あと序盤の主人公の行動の自己犠牲精神がいかにも作られたものって感じで辛くはあった。もう少し自然に立ててあげることはできなかったのだろーか。

ネタばらしは1話きっちり作ったのもあったしちゃんと各所の伏線も回収していて納得できるものではあったのでまあ満足。強いていえばもうちょいSF的に「うおーなるほど!」と思う展開があってもイイかなーとは思った。最後の展開は失われていく運命のものが失われていく様をまあ丁寧に描いていて、まーズルい題材ではあるものの、ちゃんとそこで生まれる感情を描ききってていいよなー。

テルマエ・ロマエⅡ

 

テルマエ・ロマエ?

テルマエ・ロマエ?

 

いやー、まさか前作での不満がこんなに完璧に解消されるとは思わなかった。なんでこんなに脚本ちゃんとしちゃったの? 良い意味ですごくビックリしたよ!

確かに前半の展開はやや苦しく、温泉ネタでは足りずに食い物ネタに逃げていたりしたところはある。あるんだけれども、そこからストーリー展開に比重を置いたときの工夫がちゃんとしてる。なんかふつーに兄弟伏線からの入れ替わりとか差し込まれてビビった。前作で最高に不満だった「なんで好色だけでそこまで毛嫌いするの?」という疑問にまできちんと答えてくれて、あ、はいそこまできっちりしてもらわなくてもと逆に恐縮してしまう感じ。いやはや本当にびっくり。映像的にも全く逃げずにコロッセオのスペクタクルに挑戦して、最後の別れのシーンも夕陽の長回しからの消失SFXでしょ? いやー、前作がちゃんとヒットしたのもあるけれども、映画としてかなり満足感がありますねコレ。

あと前作のシリアスストーリーが「温泉で傷を治して戦争に勝利」というちょっとリアリティがなさ過ぎるものだったのを、温泉こそが平和の象徴だと読み替えたのは大変良いですね。ラストの都合良さも、こういう展開だったら全然納得できますよねー。

あと余談だけれども古代ローマにも魔女って概念は一応存在したのね。なるほど納得。

テルマエ・ロマエ

 

テルマエ・ロマエ

テルマエ・ロマエ

 

おーすごい! これは正しいマンガの映画化!

なんといっても阿部寛が素晴らしすぎる。彼が日本人の中で古代ローマ人を演じているという意味不明な状況が成立している時点でもう超高度なギャグだよなー。原作のマンガでもちゃんと面白かった「古代ローマ人が現代日本にやってきてその高度な技術を勘違いするギャグ」が、阿部寛の顔芸によってなんかとんでもないくらい加速していてもう最高(ちょっと日本スゴイが鼻につきすぎな感じもしたけれど)。オペラ歌手演出のバカバカしさと良い、超素早いお話のテンポと良い、前半の展開は満点あげても良いくらいだと思いました。

が、後半になって映画としてのストーリーが鎌首をもたげてくると途端にテンションが落ちるんだよなー。序盤こそあの公衆浴場の作り込みで「おー」と感心したけれども、後半のスペクタクルにはちょっと映像が足りてないでしょう。場当たり的なストーリー展開も、まあ突然渦がミニチュアになったりなんかして笑っちゃったりはしたものの、基本的にはかなりどうでもいい。っつーかいくら自分が間男に寝取られたからって、女好きなだけであそこまで支配者を嫌うルシウスの行動原理がマジでわからん。結果がわかってしまうタイムトラベルものだからしょーがない側面はあるけどさあ、もうちょっと丁寧にやっても良いんじゃないかなあ。