ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アジア無限回廊1: 九龍城塞落城前夜

 

アジア無限回廊1: 九龍城塞落城前夜 (ノンフィクション旅行記)

アジア無限回廊1: 九龍城塞落城前夜 (ノンフィクション旅行記)

 

いやー写真がいい。とても良い。自分多少写真もやるので、こんなのが旅先で取れたらいいなーアジアに行こうかなーってついつい考えてしまう。っていうか行きたい。行こう。

ということで先日九龍の写真集を読んだのに引き続き空気を掴みたいなーって読み始めたら、なんかもう圧倒的にノスタルジックな感覚に襲われてしまってダメだった。いやまあこの頃海外に実際行けたわけじゃないから想像するしかないんだけど、でもやっぱり、当時は日本が最先端で賃金の格差もあって貧しく危険なアジアの国を放浪しよう、みたいな感じがあったんだなあと。国と国の間には圧倒的な格差があって、カフェでぼられてひと月分の賃金を怒り任せに投げつけるみたいなエピソードがありえたんだなあと。いやあ、なんといいますか、今の時代からはちょっと信じられないよなあその感覚。しかし香港はどうなんだろう。明らかに中国とは物価が違うはずだけど……出稼ぎ的にやってきたエピソードも書かれていたしねえ。

でまあ、肝心の九龍城のエピソードですが、いやあやっぱり面白いですね。旅人として異界に迷い込むというか、余所者としての視線を向けられるエピソードが大変良い。当たり前の街並みだって、そういう眼差しを向けられると緊張するもんなあ。まして九龍城をや、って感じ。

トランザム7000

 

トランザム7000 [Blu-ray]

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バート・レイノルズ!! むせるような男の臭い!! すげえ!!

キャノンボールみたいな映画だなーと思ったらキャノンボールの監督だった。自動車レース映画って結構たくさん出てたのね。全然知らなかったぜ。

でまあ、中身もキャノンボールと似た感じがあって、まあ掴み所がないというか、その場で思いついたようなエピソードがダラダラ続いていく感じで、「おいそこにいたんかーい!」ってネタをそんなに繰り返すのはさすがに笑う。絶対これ後のこと考えずにその場のノリで脚本進めただろ。なんかとりあえず犬を助手席に乗せただろ。そもそもバート・レイノルズがトラックに全然乗らないのはビックリしたよ。っていうかトラックレースなのにそっちのドラマがほとんどなくて花嫁とドライブするのがメインって、うーん、やっぱりよくわからん話だぜ。

とか思いながらも筋立てはストレートで、キャノンボールみたいに散漫とした印象はなく、なんだかんだ愉快に見終えることができるのだった。まあ大体あの警官コンビのおかげだよね。あのふたりがコメディをちゃんとやってくれたおかげで、あーこうやって見ればいいんだなーというのが大変わかりやすかった。あとはもう少し依頼主の彫り込みがきちんとできれば良かったんだけどなー。

この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた

 

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた (河出文庫)

この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた (河出文庫)

 

うーん楽しい。SFって感じ。っていうかアニゴジ見終えた後だから感慨ひとしおって感じでございますね。「科学の進歩が善か悪か」については作者もかなり自覚的に口を噤んでおりますが、まあ普通に考えて知り合いが死ぬのを避けたいから科学を発展させようというのはまあ同意できちゃいそうだよねえ。個人的には別にモルヒネスイッチ押しまくって人類滅びてもそれはそれでいいんじゃね? とか思っちゃうタイプなのであんまりそこら辺の倫理には踏み込まない方が吉。まーそういう意味でアニゴジは正しい結末なんだと思いますよ色々。

まあそういう哲学的なアレは別として、この本は終始実践的に人類の復興に取り組んでいるわけでそれがまあ大変面白い。技術の結晶である最先端の生活はできないけど、農耕牧畜の最初に戻って車輪を再発明する必要はなくて、ワリと楽に応用の利くほどほどの技術から復興をはじめよう、とか目からウロコ。都市の廃品を再利用してドーナツ型に農耕するのが復興初期なんて考えたこともなかったよ。車の後ろ半分を切って動物に牽かせるとかもうそれだけでSFビジュアルが成立しちゃって最高ですね。とにかく農業は四圃輪栽式農法を確立せよ、とかもう実践的すぎて笑うしかない。そうかーハーバー・ボッシュ法はマジで偉大なんだなー。

手紙は憶えている

 

手紙は憶えている [Blu-ray]

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わーい警官殺され損じゃないですか!!

いやまあ冒頭の入り方とか指令役の立場から、「これ操られてるよねー」「主人公の正体は危ういよねー」とかぼんやり考えながらあのオチで「あー」となってしまった自分の間抜けさを呪いたい。ちょっと鋭かったら気付くこのネタでよくもまあきっちり作りますわ。認知症の老人のサスペンスは最も重要なギミックであると同時に最高の目くらましになってるワケよね。いやーこういう風にシンプルな筋書きをテクニックで適切な尺で成立させられてしまうと、あ、はい、どうもお見それいたしましたって感じ。年間のベストとかには絶対入らないけれど、でも普通に好きと言える映画であります。

っていうか認知症の爺さんのヨボヨボの歩き方がズルい。大金とグロックとか持ち歩いちゃうのがズルい。アクションなんて全く無いのに、画面のフォーカスが合わなくなって水越しの朧気な輪郭になっただけで、どんな映画よりもハラハラドキドキしちゃうんだもん。そんないちいち子供とコミュニケーション差し込まなくったっていいじゃない! ズルいよ!

あー、どうでもいいけどクリント・イーストウッドの次の映画、監督主演で麻薬の運び屋やるんだっけ? そんなん面白いに決まってるよなー。楽しみ。

OneShot

store.steampowered.com

そりゃまあDDLCやってUNDERTALEやったらこれもやっとくでしょー、という感じでプレイしたのだった。でまあ、結論で言うとメタゲーとしての納得感はコレが一番高いなーって感心。結局メタをテーマにすると、その物語がなぜそのような構造で語られているかという点、っていうかぶっちゃけ「なんで作者ってそんな意地悪するの?」ってところがどうしても前面に出て来るわけだけれど、それをエンタメに落とし込んで納得のいく結論を出すのってなんだかんだ面倒くさいんだよねー。

OneShotはそこら辺の「物語が悲劇を生んでしまう構造」を、作者的な存在を作品内に織り込んで丸め込むことでうーむなるほどという納得感を持たせる感じがしていて良い。雰囲気ゲーみたいな作品のつくりって基本的には全然好きじゃないんだけれど、でもこの作品の雰囲気作りが目指すところってワリとシンプルで、うーん嫌いになれないなあってなってしまう。っていうかコレだけあざといルックでちゃんと心を揺さぶっちゃったら、うーんオレの負けだよなあ。

まーしかしビックリドッキリメタギミックは、なんていうかアイディア使ってみましたって感じでゲームとしての面白さとして機能してるかは微妙。オレなんかはゲームの外部でPCを意識させるのだったら、それってもうググって攻略確認する倫理を抑止する力なくね? とか無駄な考え事をしてしまうのでやっぱこういうゲーム向いていない。

カスパー・ハウザーの謎

 

カスパー・ハウザーの謎 HDリマスター [Blu-ray]

カスパー・ハウザーの謎 HDリマスター [Blu-ray]

 

うーん謎。いや謎ってタイトルがついているくらいだから謎でいいって映画なのだろう。じゃないと色々説明がつかない、というかその何かを説明したいという欲求自体が俎上に載せられている感じで、考えるな、感じろ。

いやまあ実際冒頭のクソしつこくてクソ長い牢屋のシーンとか、見ていて「えーこのシーンって一体なに意味があんの?」とか思いながらもカスパー・ハウザーに吸い込まれている。ジャンプショットで時間やらシチュエーションやらが飛んでるのにその中心を繋ぎ止めるカスパー・ハウザーの圧倒的な吸引力から逃れられない。うーんなんなんだこの感じは。こういう面白さってのもあるんだなーと妙な納得をさせられてしまう。

しかしまあ、人間性の回復ってテーマだけでこんなに色々考えさせられるとは思わなかったぜ。野生児……ではなくて、むしろ行動とか認知の機能を抑制されている感じの演じ方だよねえ。

それにしてもいちいち絵がカッコいいよねー。冒頭のボケボケな映像はさすがに今見るとアレだけど、70年代のフィルムだってことを見ていて忘れちゃうのがすげーなーと思った。ヴェルナー・ヘルツォークって全然見てないんだけど、あー、もう少しだけ見てみたいなあ。きっと相変わらず理解できないモノがやってくるのだろうけれども。

人生スイッチ

 

人生スイッチ(字幕版)

人生スイッチ(字幕版)

 

なんじゃこのジャケット。すげえな。全然見たくはならないけどまあキャッチーなジャケット作りづらい映画だろうしこれはこれでいいのか。本当か。まあこういうのに惹かれる人を相手にする映画なのだろう。

うーんなんだろうこの「映画作品」って感じ。アンソロジーなんだけれどもどの短編にも「映画を観た」って感じがすごくする。まずそれぞれにちょっとしたアイディアがあって、それ自体のクオリティも決して低くはないのだけれども、その描き方がいちいち気が利いていて上手いなあと唸らされる。例えばレッカー移動の回のどん底描写はベタに上手すぎて笑っちゃうし、愚息回のファーストカットだけで「あーヤバいこと起こったな」と思わせるのは本当に凄まじいし、パンク回のアクションの展開はこのシンプルな舞台でよくもまあこんなにアイディア入れるなあって感心してしまう。

まあそこら辺でもだいぶ「映画だなあ」って感じるのだけれども、輪を掛けて映画っぽくしているのは転換の描き方で、ストーリーへの意外性のもたらし方が本当に上手いんだよなあ。飛行機の「俺も俺も」展開とか、パンク回のUターンとか、愚息回の切れる転換点とか……意外性に納得感もありながら、それまでの世界が視点を変えただけでガラッと見え方が変わってしまう感じ。短編だからこそできる描き方なんだろうけど、どれもがだいぶ上手くて感心してしまう。結婚回のラストの展開なんて、アレに納得させられてしまうことに、ホント、ビックリしちゃうよなあ。