ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

オリンピックと商業主義

 

オリンピックと商業主義 (集英社新書)

オリンピックと商業主義 (集英社新書)

 

『オリンピック秘史』が理念とか政治とかそっち寄りの言及が多かったのに対して、この本はズバリ「商業主義」に的を絞って論を進めてそれはそれで大変面白い。日本人が書いてあるから理解しやすい例が多く、例えば東京オリンピックの「HITACHI」のエピソードなんかは言われて「あーあーなるほどあれねー」とすぐにその映像が思い浮かべられたりする。「商業主義」というテーマを絞りすぎることで目先の利害を強調しすぎる嫌いがあるんじゃないかという心配も杞憂で、わりと淡々と数字を追っている感じ。そこらへんはむしろ『オリンピック秘史』のほうが目的のために数字を強調しすぎって感じもした。

何より驚きなのはロサンゼルスオリンピックの商業化の下りで、収入と支出の数字を並べて「収入が多かったのではない、支出を切り詰めたのだ」というのがもう大変な驚きである。オリンピックの準備でスタジアムがどれだけ金を食うかというのがはっきり示されていて、まあそうだよねそんなインフラ整備は金かかって当たり前だよねだったらもうちょい計画的にちゃんと作れよーと2020に思いを馳せてしまうよね。あと商業化がデンバーの住民投票とモントリオールの財政赤字という大変わかりやすいアウトラインがひいてあるのも良い。もうそれだけで納得感がだいぶある。

さてさて、この本が書かれたのは2020東京オリンピックが決まる前で、選手よりも商業主義を優先する例としてテレビ中継のための競技時間の変更が取り上げられているわけだけれども、サマータイムがどうこう言っているのをみると大変味わい深いですねコレ。ってかよく考えたら、選手がベストのパフォーマンスを発揮するために日本国民が生活時間を変えさせられるって、むしろそっちの方がだいぶやばい感じもするな……