ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

風化水脈

 

風化水脈 新装版: 新宿鮫8 (光文社文庫)

風化水脈 新装版: 新宿鮫8 (光文社文庫)

 

だいぶ時間が空いてしまったが相変わらずくっそ面白い新宿鮫。

今までも色々なアングルで鮫島まわりの犯罪を描いてきたこのシリーズですが、今回の趣向はズバリ歴史。土地の歴史は私も結構好きなのですが、そんな歴史の運命の因果が古井戸を通じて紡がれる本作の構成は、うーんはっきりいって最高ですね。

そしてそんな理にかないまくった構成をバッチリ生かし切るのが相変わらず良すぎるキャラクター群で、まあとにかくかつて登場した真壁さんがもうめちゃくちゃ良い。既に立っているキャラクターがある意味ヤクザ者のベタベターな運命の岐路を突きつけられて、果たしてこのシリーズの倫理観はこの人物にどのような結末をもたらすの? というちょっとメタな問いかけが全体にとんでもない緊張を生み出している。

そしてそして、既存のキャラクターだけではなく新規のゲストも大変よく描かれていて、警備員をやってる元警官老人なんて鮫島の鏡合わせもおいしい上に圧倒的に正しい役割で本当にうめーなーと感嘆するしかない。親睦を深めることが事件の謎を解くことと同時、自分の警官としての正しさを問いかけることになるなんて、いやーなんなの構造が優れすぎてるでしょ?

でも一番のキャラ立ちは小料理屋の女将さんで、最初の真壁との短いやり取りにはもう溜息しか出ませんよ。いやー、あのシーンすごすぎませんか? 巻が進むごとにうめえなあ、うめえなあ、としか言えなくなっている自分を発見する。