ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

世界を変えた書物展

上野の森美術館 - 展示のご案内 - 世界を変えた書物展

てっきり稀覯本の展示かと思ったら、もっとテーマを絞って科学史の重要本が並んでいるのだった。古書というマテリアルを用いることで、美術館で科学史を紹介するという発想が大変素晴らしくて、うおーなるほどーと感心しながら見入ってしまった。いやはや自分みたいな歴史と科学の上っ面をぼんやり追いかけている人間にとっては、大変面白い展示だった。

単純に進歩を追いかけるのかというとそうではなく、なぜその技術がその時期にその国で生まれたのか、みたいな世界史的な背景が裏に見えるのが大変面白い。展示は写本ではなくて活版印刷が中心になっていて、だからイスラム経由の知識がヴェネツィアあたりから出版されはじめるよなーという辺りは納得感があるし、ライデンとかが出てくるのはやっぱオランダの時代があったんだなーって感じ。国力の充実は文化の隆盛を呼ぶのだなあ……と脳内年表と組み合わせて展示を見終えたら、最後にちゃんと時代に合わせた出版点数の変遷が描かれた映像が流れて「これこれ! これが見たかったよ!」となったのだった。あーはいはいここらへんがナポレオンね、とか、プロイセンはやっぱ強いなーとか、そういう確認ができてめちゃくちゃ勉強になった。

科学史でニュートンとアインシュタインが偉大だったのがビジュアルでわかったのも収穫であった。体系を作るってのは様々な知識を包括してまとめ上げるってことなのだなーというのを実感。しかし「光」に関する研究ってのは別の分野に比べてちょっと特殊に思えるよなー。ゲーテも研究していた光。色々読んでもイマイチよくわからない光。

そしてなにより面白かったのはギャラリーで放送されていた解説映像で、80分オーバーの長尺だったにも関わらず私たっぷり一周してしまいましたわよ。デカルトが座標を現実空間に当てはめたことがいかに画期的だったか、みたいな目からウロコの指摘がボンボン出てきて大納得。科学の歴史を学ぶ醍醐味って、ひとつひとつの技術的進歩だけではなくて、自分が当たり前だと思っていた世界観がかつて当たり前ではなく、だから今の自分の世界観もひっくり返され得るのだ、ってところに気付くことにあるよねー。