ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

サウルの息子

 

サウルの息子 [Blu-ray]

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狭い舞台で狭い時間の狭い悲劇を狭い視界でやる感じのやりきれなさが最高にしんどい。

もちろんアウシュビッツのガス室って聞くとああ虐殺があったところね、という文字面上の知識はあるわけだけど、それをこういう長回しの肩越し視点で見せられると説得力が段違いで最高にしんどい。肩越しの三人称で被写界深度もクソ浅いのは実際に見ていてかなりストレスが溜まり、結構作品としてはリスキーなところだったと思うのだけど、まあでもチャレンジするだけの価値がある効果は発揮できてたんじゃないかしら。ボケてうっすらとしか認識できない死体の山は、もしかしたらピントが合って見えるよりも全然不気味に写ったんじゃないかと思う。

ストーリーもすげー独特で、主人公の動機が明かされるのが結構後で、途中までなんでそんな行動を取ってるのかワリと謎なんだよね。さらに言うなら主人公は散々大量の人々が葬儀もなく灰になってしまうのに加担している側で、だから冷静に考えると自分の息子のために奔走する彼の姿に共感とかはかなりしづらい作りになっている。リスクを冒しまくり周囲の人に迷惑をかけまくり、それでなにがしたいかって自分の息子の救うわけでもなく、ただ葬儀をしてやりたいという動機なワケでしょ? そういう意味でも、三人称の近視眼的な視点で長回しされる撮影スタイルが、大変合理的な映画だよなあこれ。