ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

マジカル・ガール

 

マジカル・ガール [Blu-ray]

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まあとにかく空白がエキサイティングな映画である。圧倒的な興味を集めるトカゲの部屋が全く語られない。普通なら映画の飛躍を可能にするその空白をどうやって説得力持って埋めるかっていうのに注力するはずなのに、この映画は全く逆。余命の短い少女のせめてものの望みを叶えたい、というまあなんというか凄まじく吸引力のある大変ズルい目的のために、あらゆる要素が逆算で動かされていく。金が必要とされ、だから犯罪が要請され、だからトカゲ部屋がそこになければならない。かくしてトカゲ部屋は非現実的な時間で非現実的な金額が動き非現実的なバルバラに怪我を負わせることが可能になる。なんじゃこのアクロバティックな脚本は。

ところがそこに新たな空白が加わることでさらに物語は展開する。バルバラとダミアンの過去である。ふたりの過去は冒頭の印象的なマジックで暗示されるだけで、ほとんどなにも語られない。ダミアンがなぜあのタイミングで発砲しなければならなかったのか、物語においてもっとも重要なポイントさえ空白の向こう側にある。しかし彼女には復讐の動機があり、逆算で守護天使が必要とされ、その結果物語の始点であり支点であったはずのマジカル・ガールは消えねばならなかった。

うーん、こんな危うい脚本が成立することがちょっと信じられないなあ。とにかくすごい作品だった。参った。